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MYTH & ROIDが語る、「shadowgraph」に取り入れた理論 「7年周期で音楽が変わる」

リアルサウンド

19/2/27(水) 19:00

 『オーバーロード』シリーズや『Re:ゼロから始める異世界生活』、『幼女戦記』など、数々のTVアニメ作品のテーマ曲を担当してきた、Tom-H@ckとKIHOWによる音楽プロジェクト、MYTH & ROID。彼らが通算8枚目となる最新シングル『shadowgraph』を完成させた。表題曲は、TVアニメ『ブギーポップは笑わない』(AT-X、TOKYO MX、テレビ愛知、KBS京都、サンテレビ、BS11)のオープニングテーマ。同時にカップリング曲として劇場版『幼女戦記』の主題歌「Remembrance」も収められ、2曲ともにヘヴィでアグレッシブなギターサウンドだけには頼らない、今のMYTH & ROIDならではの豊かな表現力を伝える楽曲になっている。新作の制作風景と、彼らが目指す音楽について聞いた。(杉山仁)

(関連:MYTH & ROIDが考える、アニメオープニングとグルーヴの融合「わざと金物を極端に少なくした」

■ギターはいらないと思ったんですよ。クビです(笑)。

――「shadowgraph」はリリース前の段階でも、140万回以上再生されていますね。おそらくこれは、MYTH & ROIDの楽曲ではこれまでで最速ペースですか?

KIHOW:そうなんですよ。

Tom-H@ck:これは今回、動画を観てくれる人たちが公式のところに集まって来てくれている、というのもひとつの理由としてあるみたいで。ただ、なぜそうなっているのかは分からないんですよ。最近僕らの楽曲で海外で2000万回以上再生されていたような(オフィシャルではない)動画が消えていたりするので、それで公式の方に流れてきてくれているのかな、というのが現状での僕の分析で――。もちろん、曲を色々な方が気に入ってくれたからこそ、というところが大きいんだとは思いますけどね。

――MYTH & ROIDの場合、海外からの人気も実感していそうです。

KIHOW:MVのコメントも海外の方のものがとても多いですね。英語圏もそうですし、その他の地域も多いです。

Tom-H@ck:今ちょうど、アニメ業界も音楽業界全体も、日本を通り越して外に行かなければいけない時期に来ていると思っていて。そもそもアニメは、昔から海外展開に価値を見出すための道が出来ている分野だとも思うので、MYTH & ROIDは現代的な形でそこに乗ることができたのかな、と思っています。海外でライブをしていても、ビックリするぐらい認知度があって、「海外の人たちの方が僕らのことを知ってくれているんじゃないか?」と思うくらいなんですよ。そういう、「僕たちが知りえないところでMYTH & ROIDの曲を聴いてくれる人が増えている」ということと、日本で活動していて、実体験として感じられる反響の両方が、今すごい速度でガーッと来ているような気がしています。

――今回の「shadowgraph」は1998年に刊行がはじまった人気ライトノベル作品を原作にしたTVアニメ『ブギーポップは笑わない』のOPテーマになっていますが、みなさんはこれまでにこのシリーズに触れたことはあったんでしょうか?

KIHOW:私は今回のお話をいただいて初めて触れました。

Tom-H@ck:僕の場合、世代的には知っておかないといけない世代だとは思うんですけど、実は僕も今回が初めてでした。

――実際に触れてみて、どんな魅力を感じましたか? 『ブギーポップは笑わない』は、98年当時の社会が抱えていた漠然とした不安のようなものも反映された作品でした。

Tom-H@ck:そうですよね。描こうと思ってもなかなか描けるようなタイプの作品ではないな、と思いました。シュールであるとか、ニヒルであるとか、色々な表現の仕方があると思いますけど、そういう作品が日本でも海外でも人気だというのはすごいことで。その後のライトノベルに大きな影響を与えた作品としても知られているみたいですけど、僕たちにとっては逆にとても新鮮でした。独特の世界観を持った、不思議な作品ですよね。

――徐々に作品の世界観が明らかになっていく構成も独特ですし――。

Tom-H@ck:セリフのひとつひとつも不思議な魅力を持っていて。

KIHOW:魅力を言葉にするのがとても難しい作品ですよね。自分たちの「shadowgraph」にしても、音だからこそ表現できたのかな、と思います。

Tom-H@ck:『ブギーポップは笑わない』は、「形あるもの自体が、本当に形あるものなのか」というような、哲学的な問いかけがある作品で、(取材用の紙資料を指して)「ここにある紙は本当に紙なのか?」、そもそも「物体としてあるものは、ないものなんじゃないか」というようなことを、「shadowgraph」の歌詞でも言っていて。つまり、曲の中でも、「これが答えだよ」ということは一切言っていない、むしろ「よく分からない」と言っている楽曲になっているんです。その「よく分からない」を芸術作品に落とし込んで、アニメのOPテーマとして映えると同時に、僕たちの曲としても訴えかけるような曲に仕上げていきました。

――前回のシングル曲「VORACITY」ともかなり異なる雰囲気になっていますよね。

Tom-H@ck:特にボーカルとかも、ね?

KIHOW;そうですね。まったく違う方法で歌っていきました。

――では、具体的にはどんな風に「shadowgraph」を制作していったのか、色々と思い返してもらえますか?

Tom-H@ck:よく言っていることではあるんですけど、原作がある場合、僕はその文字情報からこぼれていくものがあって、それを表現するのが仕事だと思っているんです。原作を読んで自分の頭の中で映像化するとき、その瞬間に見えているものは文字だけではないとても有機的なものなので、その「匂い」や「雰囲気」のようなものを、僕たちの方で補ってあげる、という感覚で曲を作っていて。それは今回の「shadowgraph」もそうで、作品の魅力である「よく分からないもの」を表現しつつ、それとは相反する大衆性も意識して、曲の方向性、つまりメロディや雰囲気や、ボーカルの声質を考えました。

――ひとつポイントとして、今回はギターを使っていないんですよね。

Tom-H@ck:そうですね。ギターはいらないと思ったんですよ。クビです(笑)。

KIHOW:自分で言ってる(笑)。

Tom-H@ck:KIHOWの歌が入ると、余計なものがいらなくなるんですよ。ギターはそもそも音域を埋める効果がある楽器だと思うんですけど、曲を構築していって、「じゃあここにギターを入れようか」となった時点で、もうギターがなくても曲が完成していたんですよね。それが一番の理由です。自分でも不思議なんですけど、ボーカルに引きずられて、最近は「ギターはいらないな」と思うことが増えてきたというか。たとえば「VORACITY」にしても、ギターを入れてはいましたけど、いわゆるギターっぽい音としては使っていなかったんですよ。その前の「HYDRA」は海外向けにJ-POPを意識した楽曲でしたけど、「VORACITY」と「shadowgraph」は海外らしさを取り入れた曲で、KIHOWの声で海外っぽい楽曲を仕上げると、なぜかギターがいらなくなるという現象が起きている……。

――なるほど。KIHOWさんの声との兼ね合いが大きな理由だった、と。KIHOWさんは、今回の楽曲を最初に聴いたときはどうでしたか?

KIHOW:MYTH & ROIDの場合、最初にもらうデモの段階では、みなさんが聴いている完成形のようなアレンジは一切されていないんですよ。自分自身、レコーディング中のディレクションがあって、「何でだろう?」と思っていたことが、後になって「そういうことか」と分かることも多くて。今回の曲も、初めに上がってきた段階では、単純に(激しいサウンドが印象的だった)前回の「VORACITY」よりは、「HYDRA」に近いタイプの曲調になるのかな、と思っていました。もちろん、「HYDRA」と同じではないと思うんですけど。

――MYTH & ROIDのラウドでヘヴィなタイプの楽曲とは違うという意味では共通しているものの、「HYDRA」が静けさと激しさの対比が印象的な曲だったのに対して、今回の「shadowgraph」はよりじわじわとダークさが感じられるような楽曲だという印象です。

KIHOW:そうですね。静かに、でも気持ちを入れていく楽曲で。歌うときって「感情をぶつける」のが楽しいことのひとつなんですけど、今回の「shadowgraph」は、我慢しなければいけない曲なんだなと思いました。そうして作りあげていく楽曲なんだな、と。それを楽しむようなレコーディングでした。感情がないわけではないですけど、「感情をあまり出さない」というタイプの感情を強く出す、という感覚で。「自分の中にこういう人間がいる」ということを想定して歌っていくような感覚だったかな、と思いますね。何か特定の登場人物の気持ちに寄り添ったわけではなくて、私の中にもうひとりの人間がいるような感覚で歌っていきました。

――Tom-H@ckさんからはボーカルに関して何かディレクションがあったんですか?

Tom-H@ck:最近は何も言わなくてもいい形で落とし込んでくれるので、僕からはあまり言わなくなりました。求めていることを言わなくても分かってくれる感覚があって。

KIHOW:確かに、今回のレコーディングでは、「こういう風にしてほしい」ということをあまり言われなかったと思います。それもあって、レコーディングはスムーズに進みました。最初に話したように、今回の「shadowgraph」は「言葉にしにくい楽曲」で、それが逆に「歌だと表現しやすかった」のかもしれないです。真っ暗で希望すら見えない中で「ずっと何かを探している」という人の不安や迷いを表現するために、自分の気持ちをそういうところに持って行って歌っていきました。

■80年代『となりのトトロ』と2000年代R&Bの掛け合わせ

――歌っていくときに、歌詞で特に意識した箇所はありましたか?

KIHOW:冒頭からいきなり「自分の中にある意味が見えるか?〈Can you see the meaning inside yourself…?〉」という歌詞が出てきますよね。その言葉で説得力のある歌い方をしてしまうと、その言葉自体に「はっきりとした答え」があるように聞こえてしまうと思って。それで、自分の中で何が起こっているかわからないという感情が伝わるような声の使い方を意識していきました。

――なるほど、〈Can you see the meaning inside yourself…?〉という歌詞自体に、余計な意味が生まれてしまう、と。曲の一番最後に「私は誰?」とかすかに聴こえてゾクッとする箇所とも見事に繋がっているような気がしますね。ロールシャッハテストじゃないですが、聴いた人によって、受け取れるものが変わっていくような雰囲気があると言いますか。

Tom-H@ck:この曲は「色即是空」のように「世の中の形あるものは実は仮のもので、無である(=形は変わっていく/不変のものはない)」ということを言っている曲で、でも同時に、「空即是色」のように「でもそれが世の中の不変の要素である」ということも言っているんです。つまり、「あるものはあるわけではない」。でも、「ないものから“ある”が生まれる」ということで。感じ方も人それぞれ違うし、あるものはないし、何を言っているのかも分からない……。その雰囲気を表現するむずかしさがありました。だから、KIHOWちゃんが「誰かを想像していた。でも、その人が誰なのかは分からない」ということも含めた全部が、『ブギーポップは笑わない』のシュールさを表現しているというか。……と同時に、商業音楽や芸術作品って、人に見せてこそ初めて価値が出てくるものだと思うので、色々な人に聴いてもらいたいという思いがあって。そういう意味でも、今回は2000年代前後にR&Bで流行った、同じストリングスのフレーズをループさせてキャッチーに聴かせていくような方法を取り入れました。あの時代、R&Bがかなり流行っていましたよね。

――いわゆる、ネオソウルのムーブメントがありました。

Tom-H@ck:まさにそれです。僕の中で「7年周期で音楽が変わる」という理論があって、7年前の音楽が一番古く感じられる、と思っていて。でも、7の倍にあたる14年前の音楽は、ビンテージになって逆に新鮮に感じられる。それがちょうど2000年代の前半頃なんですよ。そしてそのさらに倍のだいたい28年前――。たとえば今だと80年代後半の雰囲気というのも、逆に新鮮に感じられると思っていて。これはたとえば、今だと星野源さんが人気を経ていることにも繋がります。「shadowgraph」を作るときもこの理論を応用していて、ストリングスのループはそこから着想したものでした。でも、ただ昔と同じようにストリングスをループさせるだけだと意味がないし、2019年にやるんだったら新しいことをしようと思って、今回はストリングスをチェロだけにしています。チェロ一本だけでキャッチーに聴かせて、メロディと対向にしている曲なら、「あまりないな」と思ったんです。

――確かに、今回の楽曲はチェロの存在感もかなり大きいですね。それがKIHOWさんの歌とお互いに存在感を出し合うような雰囲気で。

Tom-H@ck:チェロの音自体も、エンジニアさんと一緒にこだわって録りました。弦楽器や和楽器のような音ってレコーディングしてCDに収めると、音が細くなってしまうことが多いんですよ。ストリングスのスタジオミュージシャンの方でも、現場でいい演奏をしても、それがなかなか作品にはいい形で収められない、ということをよく言っていて。だから、今回は絶対そうはならないようにしようと、チェロが活きる隙間をちゃんと用意して、エンジニアさんとも話し合いながら、ソロのチェロを太い音で録音してもらいました。

KIHOW:ボーカルRECの直前にチェロの録音があったので、私が歌うときには録ったばかりのチェロの音が素敵な形で入っている状態で。正直、初めて聴いたときは、心の中で「これはやばい」と思っていました(笑)。ただ、「shadowgraph」の場合、じゃあチェロに対抗して思いきり歌えばいいかというとそうではないので、自分の出来ることをやっていこう、と。「自分の歌が食われてしまうのでは」と思うくらい、素敵な演奏でした。

――2000年頃のR&Bを参照してストリングをループさせたのは、『ブギーポップ』シリーズのライトノベルの刊行が98年にスタートし、2000年に一度『ブギーポップは笑わない Boogiepop Phantom』としてアニメ化されたこととも関係しているんですか?

Tom-H@ck:それを意識したかしていないかというと、少しは意識した部分はあったと思いますね。でも、実はそれほど意識していたものでもなくて。逆に、僕の原作に対する意識が浅かったからこそ入った要素があったんですよ。イントロの部分のマリンバみたいなシンセの音がありますよね? あれってみんな好きな音で、何かと言うと……『となりのトトロ』なんですよ。

――ああ!!

Tom-H@ck:そして『となりのトトロ』は、30年ほど前の作品で、さっき話にも出た「80年代の後半」なんですよね。今回『ブギーポップは笑わない』の原作を読んだときに、僕の知識が浅かったことによって、自分としては80年代末ぐらいの感じを受けたんです。僕が生まれたのは85年ですけど、その当時にあった『となりのトトロ』的なシンセ音を、2000年代のR&Bと掛け合わせていきました。なおかつ、そのシンセ音自体も昔YAMAHAから発売されていたFMシンセで鳴らしていて。いわゆるFM音源のソフトではなくて、実際のハードを使って、80年代後半の音を実際に入れているんです。

――なるほど。それがTom-H@ckさんの音楽の周期の話にも通じる「今新鮮な音」を表現することと、今回新たに蘇った『ブギーポップは笑わない』という作品の成り立ちの両方に繋がっている、と。

Tom-H@ck:ビンテージ感がちょうど蘇ってきた、という意味でも色んなものが繋がっていますよね。

■世の中が求めていた部分に今回の僕たちがハマった

――一方で、カップリング曲として収録されている劇場版『幼女戦記』の主題歌「Remembrance」はどんな風に制作していったんですか?

Tom-H@ck:この曲は制作サイドから「こういう曲を作ってほしい」という明確なオーダーがあった形でした。普段はKIHOWの声を何本か重ねたりもしますけど、この曲は声も一本だけにしていて、生々しい歌が聴こえるものになっていますね。

KIHOW:「shadowgraph」と同じような雰囲気もありつつも、でも、また違うような雰囲気の曲ですよね。私が歌っているときに思い浮かべている「人」がまた違う、という感覚です。これまでの楽曲もすべてそうですけど、私の場合、その曲ごとに自分の裏をかいていこうという気持ちがあって。今回のカップリングも、かなり楽しいレコーディングになりました。人が戦って、亡くなって――という『幼女戦記』の光景を思い浮かべながら、むしろ戦争だけでなくて、より普遍的な「追悼」や「記憶」という、タイトルにもなっている要素をメインに捉えて歌っていきました。

――KIHOWさんが加入する前にMayuさんがボーカルを担当していたTV版『幼女戦記』のテーマ曲「JINGO JUNGLE」とも、随分違った曲調になっていますよね。

Tom-H@ck:そうですね。今回のシングルは2曲ともMYTH & ROIDの中では静かな作風の曲になっているのが珍しいポイントで。いわゆるガンガン攻める曲や、ミディアムテンポの曲でなくても勝負できるというのは、これまでの流れがあったからこそ「それが出来るようになった」ということなんだと思います。それが出来るアーティストって「いいな」と思うんですよ。ただ、この変化は自然に出てきたことで、タイアップ作品がそういうものを求めていた。つまりある意味、世の中がそういうものを求めていた部分があって、そこにちょうど今回の僕たちがハマった、ということなのかもしれないですね。

――なるほど。「これまでの流れがあったからこそできるようになった」という感覚について、詳しく教えてもらうことはできますか?

KIHOW:これは私には話せないです(笑)。(Tom-H@ckさんに)どうぞ。

Tom-H@ck:それこそ、「自動的」(=「ぼくは自動的なんだよ。名を不気味な泡(ブギーポップ)という」/『ブギーポップは笑わない』の台詞)ですよ(笑)。僕の場合、若い頃ってやっぱり視野が狭くて、ひとつのこだわりがあったらそこにガッと行ってしまうところがあって。でも、年齢を重ねていくと、そういう風には生きなくなるじゃないですか? アーティスト活動もまさにそうで……。そういう意味で「自動的」だと思うんですよ。歩んできた結果、狙っていない扉が開いた、というか。僕の場合、それをアーティスト活動や音楽に教えてもらっているような気がしていて。そういう意味での「自動的」なんです。昔はこういうものは作れなかったし、色んなものが積み重なって、色んな扉が開いていったからこそ、自然に大きな扉が開いてきた、という種類のものなのかな、と思いますね。

――実は今回、収録曲を聴かせてもらって、今回はその部分について聞かせてもらいたいな、と思っていたんです。いわゆる激しい曲を入れなくてもシングルとして成立するというのは、グループとしての可能性がどんどん広がっているということでもあるのかな、と。

Tom-H@ck:そうですね。(KIHOWさんに)……僕ら、何をしたいんだろうね?

KIHOW:どこに進んでいくんでしょうね(笑)。

Tom-H@ck:もちろん、言いたいことや表現したいことはたくさんありますけど、その半分ぐらいは「未知であってほしい」とも思うんですよ。狙いは半分、でももう半分は流れる船のように流されていくようなものでいいかな、と。ただ、反骨精神のようなものは変わらず持っていて、中でも僕の中で一番大きいのは「こうと決めたら絶対にこう」という日本人らしい気質に対しての反骨精神なんです。それを音楽に置き換えると、たとえば違うジャンル間での偏見がものすごくある、ということもそうで。

KIHOW:それはすごくありますよね。

Tom-H@ck:僕の場合、仕事上J-POPのアーティストにも楽曲提供しているし、アイドルにもMYTH & ROIDのような音楽にも、映画にもかかわってきて。そうやって色々な仕事をしてきたこともあったからこそ思うのは、実は「その違いなんてほとんどない」ということなんです。だからこそ、「何で毛嫌いしてしまうんだろう」「何でそこまで自分を守る必要があるんだよ」って思う。

――自分の好きなものをアイデンティティに組み込んでしまった結果、それ以外のものを冷静に楽しめない状況になるという人は、実際結構いますよね。

Tom-H@ck:だからこそ、MYTH & ROIDの場合、TVアニメのタイアップが多いために、人から見ると「アニソン」という枠に入るんだろうと思いますけど、そういう僕らがJ-POPや洋楽を好きな人たちにもちゃんと聴いていただいて、よりボーダーレスな環境を構築していける存在になっていきたいし、その状況を変えていけるようにしたい。しかも、決して大ナタを振るうのではなくて、徐々に徐々にその考えが浸透していって、気づけばみんながそう感じるようになれば、それが一番いいんじゃないかな、と。もちろん、これは僕たちだけでできることではなくて、色々な人たちの力で初めて実現することだと思いますけど、僕たちはちょうどそんな風に聴いてもらえつつある実感があって。アニソンが好きな人にも、そうじゃない人にも「いい音楽だね」と聴いてもらえる存在になれればいいですよね。

KIHOW:私もそう思います。

――ここ何年かで、ようやくその垣根がなくなりつつあるのも感じるところですし。そうなってくると、MYTH & ROIDの次のアルバムもますます楽しみになります。

Tom-H@ck:はい。これまでにも言ってきたように、構想はすでに1年ほど前から練っていて、どんな作品にするかという方向性も決まっています。だから……そろそろなんじゃないですか(笑)。ひとつ言えるのは、より規模を大きくしたい、ということですね。国内に向けても、海外に向けてもみんなが楽しいと思ってもらえるような、ワールドワイドで発信できるようなエンターテインメントとして次のアルバムを作りたい、と思っていますね。(杉山仁)

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