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RIP SLYMEの魅力を改めて考えるーー変幻自在な音楽性と突き抜けた明るさ

リアルサウンド

18/11/13(火) 8:00

 ここ最近RIP SLYMEばかり聴いていた。10月31日に公式HPを閉鎖し、SUのInstagramにて活動休止が明言されたからだ。やっぱり彼らをしばらく観られなくなってしまうのは寂しい。作品を聴き直すと、ファンが期待するRIP SLYME像に応えながらも、型にはまることなく楽曲を生み出し続けてきたことがわかる。常にフレッシュで変幻自在なグループなのだ。

(関連:RIP SLYME楽曲MV

 シングル『STEPPER’S DELIGHT』でデビューしたRIP SLYME。お揃いのつなぎを着て戯れながら軽快にラップを繰り広げていく表題曲のMVは、若さならではの自信に満ち溢れた”無敵感”があった。低音でユーモラスなSU、高音でメロディアスなPES、ルーズでハスキーなILMARI、タイトでリズミカルなRYO-Zからなるハイグレードなラップ。そして、DJ FUMIYAによるドラムンベース、ジャズ、ラテンなど多彩なダンスミュージックを融合させたトラック。自由で遊び心があって、4MCならではの賑やかさがあって、でもスタイリッシュで。KGDRのようなハードコアともスチャダラパーのようなユルい雰囲気とも違う。どれにも当てはまらない彼らの存在は新鮮だった。

 1stアルバム『FIVE』に収録された「マタ逢ウ日マデ」には、<頭文字すら知らないお相手/別れて Peace あれ>や<どうせ置き去りにされてつらいんだね>というフレーズがある。そんな同曲は、“自分たちは上にのぼっていく”という彼らなりのメッセージに聴こえる。そんな痛快さもかっこいいのだ。

 その後「楽園ベイべー」、「ONE」、「FUNKASTIC」が大ヒット。これらの曲を収録した2ndアルバム『TOKYO CLASSIC』は、日本のヒップホップ初のミリオンセールスを記録する。“ヒップホップ”というジャンルを日本に浸透させたのだ。とは言っても、本作は決して大衆に媚びていない実験的なアルバムだ。シンガーソングライター・森広隆(「奇跡の森」を共作)、Dragon Ashの降谷建志(「花火」にベースで参加)、西海岸のファンクバンド・Breakestra(「~Introduction~CHICKEN」「FUNKASTIC (Breakestra Version)」に参加)といった様々なアーティストとタッグを組み、なおかつメンバー全員が楽曲制作を行っている。ヒップホップの概念にとらわれず自由奔放に実験を試みた同作は、今聴いても色褪せていない。

 3rdアルバム『TIME TO GO』では『TOKYO CLASSIC』から一新。「ONE」などで聴かせていたフォーキーな要素を排除し、電子音中心のスムースで洗練されたトラックを聴かせている。また、『MASTERPIECE』では、レイドバックした電子音とオーガニックな生音を多用した高密度な楽曲を収録した。この2作では『TOKYO CLASSIC』へのカウンターかのような攻めた音作りがされている。一方、徐々に変化する日常への不安を描いた「STRANGE」や、葛藤を抱えながらも突き進もうとする「TIME TO GO」など内省的なリリックが目立つ。サウンドにもどこか物悲しさが漂っていた。そんなシリアスな一面は、当時のRIPSLYMEの魅力でもある。軽快なラップのなかで時折見せる不安や寂しさに、心揺さぶられるものがあったのだ。

 病気療養で一時活動から離れていたDJ FUMIYA復帰後の5thアルバム『EPOCH』では、スティールパンを使用したトロピカルなサウンドを加味し心地の良い柔らかいアルバムに。『EPOCH』以降、彼らの音楽性は成熟を迎える。8thアルバム『STAR』ではシンセやエレクトロを導入し、フロア感を演出。本作の主軸となる「センス・オブ・ワンダー」のリリックでは、主観的視点から徐々に俯瞰的視点へと移していくという新たな手法をとった。それから約2年後にリリースした9thアルバム『GOLDEN TIME』では、音数を削りクラシックでシンプルな音作りがされている。また、ラップにこだわらず歌に比重を置いている点もこのアルバムの特徴だろう。

 10枚目となるアルバム『10』は彼ら史上最も自然体なアルバムだ。〈笑って歌えれば何とかなるって思えりゃコッチのもんだ〉というラインが印象的な「ピース」や、〈誰もいない 何もしない/成り行き任せのままでいたい〉という「青空」など。本作には「何事も考えすぎなくていいのかも」と思わせてくれるような説得力があった。かつてのシリアスさとは異なる力の抜け加減や軽やかさは、年を重ねて経験を積んだからこそ生まれたものなのだろう。

 型にはまることなく変化していくRIP SLYME。一方で、彼らの”陽”な存在感は変わることがなかった。突き抜けた明るさと遊び心。それは、日常のなかでさまざまな問題やストレスと戦うリスナーたちに向けて投げかけられる「もっとリラックスしてもいいんじゃん?」という優しいメッセージのようにも思える。そんな彼らの音楽やライブによって元気をもらっていた人も多いのではないだろうか。

 来年で結成25周年を迎えるRIP SLYME。その長いキャリアの間には様々な葛藤や困難もあったことだろう。彼らの先輩であるRHYMESTERや、同時期にメジャー進出したKICK THE CAN CREWも活動休止をしていた時期がある。そして、両者とも長い時間を経て見事な復活を果たし、現在も精力的に活動している。何年でも何十年後でもいい。彼らのように、いつかRIP SLYMEも最高の形で復活してくれることを願ってる。(北村奈都樹)

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