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『イノセンス 冤罪弁護士』“冤罪”を生むのは誰なのか? 坂口健太郎の孤独な戦いの行方

リアルサウンド

19/3/23(土) 6:00

 ドラマ『イノセンス 冤罪弁護士』(日本テレビ系)が本日3月23日に最終回を迎える。

参考:『イノセンス』坂口健太郎が語る“役”への思い入れ 「今までいただいた役は全部好き」

 有罪率99%を超える日本の刑事裁判。保駿堂法律事務所に所属する若手弁護士・黒川拓(坂口健太郎)は3年で5件もの逆転無罪を勝ち取ってきた“冤罪弁護士”だ。お金がないという理由で事務所の物置に住み着き、法廷以外ではスーツを着用しない一風変わった拓と、同僚で同じく弁護士の和倉楓(川口春奈)は、東央大学准教授・秋保恭一郎(藤木直人)や仲間たちの助力を得ながら冤罪を証明していく。

 取調べの可視化や裁判員裁判の導入により刑事事件に対する関心が高まっている昨今、刑事弁護をテーマにしたドラマは増えている。その中でも『イノセンス』は、電磁気学や気象学、海洋学などの科学的な根拠に基づいて、立証困難とされてきた冤罪の証明に特化している点で異色のドラマと言っていい。

 見込み捜査や自白の強要など警察・検察の違法な捜査に対して、拓や秋保は科学の力を用いながらより客観的な手法で真実に到達しようとする。その過程で生じるさまざまな障壁や当事者・被害者遺族との対立、心の葛藤が丹念に描かれているのが特徴だ。

 第8話で式根大充(片岡鶴太郎)の再審請求が棄却されたことで、拓と秋保のチームワークにも見えない亀裂が生じていた。第9話では、秋保の妹・彩花(伊藤梨沙子)が殺された11年前の事件につながる手がかりが発見される。都内で起きた女子大生殺人事件の被害者の遺体に11年前と同じ形状の刺し傷があったのだ。

 拓は容疑者とされた富士田順平(坂本真)の弁護を引き受けるが、時を同じくして、茨城の山中から新たな遺体が発見される。富士田の関与に疑問を抱いた拓は、寒い山中でもレモンが栽培されることにヒントを得て、「斜面温暖帯」現象から死亡推定日の誤差を予想。しかし秋保は、これ以上拓に協力することはできないと告げる。拓の父である黒川真・最高検察庁次長検事(草刈正雄)から、新たに設立される検察の専門機関への参加を打診されていたのだ。

 「お前は死体の冷たさを知らない」という秋保の言葉は象徴的だ。親友である浅間大輔(鈴之助)の冤罪を晴らすため「死後再審」を考えている拓に対して、終わった事件の真相を追うよりも浅間が犯人だと思ったほうが苦しまずに済むと語る秋保。過去の事件を蒸し返すことは被害者や周囲の人びとに深刻な影響を及ぼし、一度は癒えた心の傷を無理やり開いてしまうことになる。第8話でも過去の事件を取材する報道ディレクター有馬聡子(市川実日子)に、式根の娘・松ケ下玲子(星野真里)が「中途半端な正義感で人の人生を振り回すな」と責める場面があった。

 一方で、拓自身も11年前の事件の冤罪を証明したいと思いながら、仮に浅間が真犯人だったらと考え悩んでいた。その折、聡子から楓に真犯人につながる情報があったと連絡が入る。拓に伝えようと急ぐ楓は、ナイフを手にした男が拓に走り寄るのを目にして、とっさに体を投げ出す。

 『イノセンス』は楓の目線で展開する物語だ。整理整頓をせず、事務所の物置で寝泊まりし、服装にも無頓着。そんな拓につきあわされる楓は、机を散らかされる、弁当を取られる、実家に無理やり連れて行かれる、海に入った拓を止めに入ってびしょ濡れになるなど、これでもかとばかり災難に見舞われる。

 振りまわされっぱなしの楓であるが、行動をともにすることで拓の思いを知り、ときに温かく励ますなど、拓と登場人物たちをつなぐ役割を果たすようになる。冤罪事件の弁護は世間を敵にまわす孤独な戦いだ。楓が拓を献身的に支えるのは、楓自身がセクハラを受けて大手法律事務所を辞めたという過去も影響しているのではないだろうか。

 そんな2人をめぐる保駿堂法律事務所のメンバーも個性派ぞろい。パラリーガルでシングルマザーの城崎穂香(趣里)や、最初は楓に拓を監視するように命じながらも、亡き兄の思いを継いで拓の身を案じる所長の別府(杉本哲太)、最年長で拓の後見人代わりの湯布院(志賀廣太郎)など、拓の思いを受け止め力になろうとする様子が微笑ましい。

 また『イノセンス』には、真実をめぐる父と子の物語という側面もある。最高検察庁の次長検事という要職にあり、「本当のことを知りたいという動機で成り立つ弁護活動はない」と話す真は、腹心の指宿(小市慢太郎)を指名し拓の主張を徹底してつぶそうとする。親友の浅間が愛用していた同じコートを着て大がかりな科学実験を行う拓が、弁護士であるにもかかわらず金欠で、実家を離れて事務所に居候するのは、高額な費用がかかる検証作業のためという事情もあるだろう。

 最終話では、11年前の事件と富士田の事件に共通する人物が浮上する。殺された女子大生・花巻京香と富士田のSNS上の共通の友人「KooZ」が、11年前に殺された彩花、そして自殺した浅間の両方のブログにコメントを残していたのだ。

 そんな中、楓を刺した神津一成(武田真治)が自首する。神津は拓に11年前と今回の事件の犯人が自分であると伝える。冤罪を晴らすため、親友の思いを背負って法廷に立つ拓。最終話では、「開かずの扉」と言われる再審請求は認められるのか、また最愛の妹をなくした秋保との関係の行方がポイントになるだろう。罪を犯すのも裁くのも人間なら、冤罪を生むのははたして誰なのか? 『イノセンス』が扱うテーマは友情や家族の絆を包含しながら、真実発見をないがしろにしてきた刑事司法やメディアのあり方に対する問題提起も含んでいる。(文=石河コウヘイ)

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