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乃木坂46、選抜ライブに感じた変化の中で受け継がれる伝統 新たな地平へ向かうグループの姿を見た

リアルサウンド

19/5/31(金) 16:00

「乃木坂46は今、変化が大きい時期だというのは皆さんも感じていると思うんですけど、変化って終わりがないものだと思うんです。それを悲しく思う方もいらっしゃると思うんですけど、このグループの人たちは意外と変化にも耐えうる人たちなんじゃないかと思います。だから、あんまり不安はないです。そして、もちろん私たちの中には変わらない大切なものもずっとあるので、それは引き続きずっと大切にしていきたいと思っています」

参考:乃木坂46、グループ転換期の中で胎動する新しい表現の型 横アリ公演からアンダーの未来を占う

 これは23rdシングル『Sing Out!』でセンターを務める齋藤飛鳥が、5月26日に横浜アリーナで開催された『乃木坂46 23rdシングル「Sing Out!」発売記念 -選抜ライブ-』の本編ラストナンバーを歌う前に話した言葉だ。これこそが今回の横浜アリーナ3DAYS公演を表す象徴的な発言であり、その直後に披露されたピアノ伴奏のみによる「君の名は希望」とあわせて非常に大きな意味を持つのではないだろうか。

 乃木坂46は恒例のバースデーライブ(※2月21日から24日に京セラドーム大阪で開催された『乃木坂46 7th YEAR BIRTHDAY LIVE』)に続いて、今年二度目となるライブを5月24日から26日の3日間、横浜アリーナで開催した。しかも乃木坂46史上初となるシングル発売を記念した単独ライブで、初日をアンダーライブ、2日目を4期生単独ライブ、そして最終日を選抜メンバーによるライブという非常に画期的なものだ。アンダーライブでは2期生の伊藤かりんラストライブ、4期生ライブはこれが初めての単独公演、選抜ライブは1期生の斉藤優里ラストライブという注目すべきポイントはあったものの、それ以上に「ニューシングル発売記念と銘打っているとはいえ、このタイミングにどんな内容のライブを見せてくれるのか?」が気になったファンは少なくなかったことだろう。

 さて、初日と2日目に関しては別記事で紹介されているので、本稿では3日目の選抜ライブに関して触れていきたいと思う。

 ライブのオープニングを飾ったのは、最新シングル「Sing Out!」。発売記念ライブと銘打っている以上、この曲から始まるのは当然だろう。イントロのリズムパートを通常より延ばし、逆光でメンバーのシルエットがスクリーンに映し出される。この神々しいオープニングシーンの時点で、これが単なる企画ライブではなく“ガチ”なものだと理解できたはずだ。ゴスペルをベースにした大きなノリを持つ楽曲に相反し、乃木坂46の面々は細かな動きを取り入れたダンスで観る者を魅了。その華麗なパフォーマンスに一気に引き込まれ、気づけば曲に合わせてハンドクラップをしていた……なんてファンも多いのではないだろうか。

 2曲目に生田絵梨花センターの「何度目の青空か?」、3曲目に齋藤飛鳥&白石麻衣のWセンター曲「インフルエンサー」とヒットシングルを連発する構成は、まさにパワーゲームそのもの。以降も「おいでシャンプー」や「裸足でSummer」と新旧の代表曲を繰り出し、さまざまな演出を含むステージとあわせてその本気度が伝わってきた。

 MCでも触れられていたが、乃木坂46が横浜アリーナで単独ライブを行うのは2014年2月の2ndバースデーライブ以来のこと。当時は約5時間におよぶ当時で最長のライブが敢行されたが、今やあの当時を知る1期生、2期生の数も減っており、そのライブを客席から観ていたという向井葉月のような3期生や、近年の乃木坂46に憧れて加入した4期生がメンバーの半数近くを占める。そういった現実にこの5年の重みを実感すると同時に、乃木坂46というグループ自体とその環境がここ数年で大きな変貌を遂げたことにも気づかされる。それは生駒里奈や西野七瀬といった過去のシングル曲でセンターを務めた人気メンバーが卒業し、齋藤飛鳥や3期生が新たなセンターとしてステージに立っている目の前の光景からも伝わったはずだ。

 そういった変化はメンバーの卒業/加入のみならず、音楽面からも伝わってきたのではないだろうか。この日の選抜ライブはまさにそういった事象を生で体感できた、貴重な機会でもあった。

 今回の選抜ライブでは4月発売の4thアルバム『今が思い出になるまで』、そして5月29日発売の23rdシングル『Sing Out!』に収録された新曲群がたっぷり披露された。コミカルさを伴う楽曲を演技派の生田、久保史緒里、桜井玲香が堂々とパフォーマンスする「ぼっち党」、変拍子を用いたクセの強い「頬杖をついては眠れない」、生田&松村沙友理が高低差の激しい歌声で特徴的なハーモニーを響かせる「曖昧」など、とにかくどの曲も強烈なフックが用意された個性派ばかり。そんな中に王道アイドルポップソング「Am I Loving?」や、3期生5人が歌う初期乃木坂ナンバーを現代的にアップデートさせたような「平行線」などが混在し、最初に挙げた齋藤飛鳥の発言とリンクする。グループの現状のみならず、音楽面でも変化・進化と伝統の保守にトライしていることが垣間見えた気がした。

 また、ライブ中盤には7月からスタートする『乃木坂46 真夏の全国ツアー2019』を先取りするような“夏曲コーナー”も用意。メンバーが夏らしい服装で、手にひまわりの花やラムネ、うちわなどを手に「走れ!Bicycle」や「ガールズルール」などを披露するという企画性の強いコーナーだったが、こういったエンターテインメント性を忘れないところも非常に乃木坂46らしい。この日は日中30℃を超えたこともあり、ひと足先に夏の全国ツアーを体感した気分になれたのではないだろうか。これを体験してしまったら、7月からのツアーもフルで観たくなる……ツアーの序章としても納得の内容だ。

 さらに、ユニットコーナーの最後には松村が「ここからは私のコーナーです!」と宣言し、佐々木琴子と寺田蘭世、そして2日前のアンダーライブで乃木坂46として最後のステージを終えたばかりの伊藤かりんの3名をステージに呼び入れる……そう、さゆりんご軍団のオンステージの時間だ。4人は「白米様」に加え、アルバム『今が思い出になるまで』収録の新曲「さゆりんご募集中」を披露。伊藤の卒業によりこの4人での披露が危ぶまれていた「さゆりんご募集中」だったが、この日ようやくそれが実現することとなった。当日は伊藤の誕生日ということもあり、サプライズで伊藤にちなんだ将棋の香車駒を象ったケーキも用意。松村は伊藤へ感謝の気持ちを伝える手紙も用意し、松村らしいメンバー愛がたっぷり凝縮されたひと時となった。

 ライブ後半戦はアルバム『今が思い出になるまで』のリードトラック「ありがちな恋愛」を筆頭に、「命は美しい」や「シンクロニシティ」といったダンスで見せる楽曲、「スカイダイビング」や「ロマンスのスタート」というライブのアゲ曲を連発。その後、冒頭の齋藤飛鳥のMCへと続き、本編最後にメンバーの歌声やハーモニーを最大限にフィーチャーした「君の名は希望」で締めくくった。

 アンコールでは『乃木坂工事中』(テレビ東京系)のシングルヒット祈願企画の一環として、メンバーから振り付けレクチャーを受けた観客が「Sing Out!」を一緒に踊る一幕も。この日、「Sing Out!」のパフォーマンスを二度体験して感じたことだが、この曲はCDやMVからも存分に魅力は伝わるものの、真の魅力はライブ会場でメンバーと一緒に体を動かし歌うことで理解できるのではないか……だとしたら、この曲は7月からの全国ツアーで一気に“バケる“のかもしれない。その答えが出るのはツアーファイナルの明治神宮野球場3DAYS公演(8月30日から9月1日)まで持ち越しになりそうだが、ライブでどんどん成長していく曲であることは間違いなさそうだ。

 その後、卒業を控えた斉藤優里をフィーチャーした「13日の金曜日」や「ダンケシェーン」で会場の熱気を再沸騰させると、斉藤がメンバーやスタッフ、ファンに向けた感謝の気持ちが綴られた手紙を読み上げる。途中、涙ぐむ場面もあったものの、6月に発売が決まった初の写真集に触れ「夢は口に出していれば叶うということが肯定された気がします」と、彼女らしいポジティブな言葉で会場を温かな空気で包み込んだ。

 「乃木坂の詩」で2時間半近いライブは終了したかと思いきや、ファンの声援にダブルアンコールという形で応え、メンバーがステージに再登場。「ハウス!」でさらにハッピーな空間を作り上げ、横浜アリーナ3DAYS最終公演を完遂した。

 グループの顔といえるメンバーや初期メンバーの卒業が相次ぎ、乃木坂46は間違いなく変化のタイミングの渦中にいる。しかし、現在のセンターである齋藤飛鳥の揺るぎない言葉を前にした今、その変化に対して筆者は不安を感じることはない。むしろ、3期生や4期生が「守るべきもの」「変わらないもの」を携えつつ、ここからの乃木坂46をどんな地平に導いてくれるのか、それだけが楽しみでならない。

 すべての内容が異なりつつもそのすべてが乃木坂46と断言できる3公演は、その新章に向けた第一歩としては上出来だった。と同時に、本当に意味での真価が問われるのは次の全国ツアーであることも明確になった。ツアーを終え、2019年が終わる頃には乃木坂46がどこまで成長しているのか、これからの活動に注目していきたい。(西廣智一)

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