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V系シーンに“メンヘラ”ブーム広がる  ユーモアと冷静な視点を持つバンド、甘い暴力の魅力

リアルサウンド

18/10/18(木) 8:00

 雑誌『ROCK AND READ 079』に、「ヴィジュアル系は今『メンヘラ』が完全なるトレンドとなっている」(『ROCK AND READ』079/2018年9月18日発行)とあったが、近年、ヴィジュアル系には、「メンヘラ」「病み」といったワードをストレートに曲名や歌詞に使うバンドが多い。中でも、甘い暴力というバンドは、バンギャルのちょっと複雑な心情や、バンドマンとファンの依存関係など、扱いにくいテーマを取り上げながらも、表現にユーモアが感じられ、また、ヴィジュアル系を俯瞰で捉えた視点もあり、興味深い。本稿では、「メンヘラ」ブームの中でも気鋭のバンド・甘い暴力を紹介する。

(関連:ゴールデンボンバー、V系の“様式美”詰め込んだ「暴れ曲」が示すもの シーンの動向から考察

■近年の“メンヘラ”ブーム

 元来、ヴィジュアル系には、美しいものや、激しい音楽が好きという嗜好を持つ者を惹きつけるだけでなく、重く痛々しい歌詞が、傷つきやすく繊細なリスナーの内面に深く寄り添うという面もある。寂しがりやで構って欲しい心を素直に表せない、不器用なリスナーたちの受け皿になっているのだ。

 2010年代のヴィジュアル系シーンでは、そのような、いわゆる“病んでいる”面を、包み隠さず表現した作品が目立つ。代表的なものが、R指定の「アイアムメンヘラ」(2012年)、「青春はリストカット」(2013年)、「病ンデル彼女」(2014年)だろう。このあまりにもストレートな曲名と歌詞は、多くのバンギャルたちの共感を得た。以降、the Raid.の「病んでる君に贈る歌」(2016年)や、0.1gの誤算「溺愛ヤンデレボーイ」(2017年)、「有害メンヘラドール」(2016年)、そして甘い暴力の「ガチメンヘラ」(2017年)など、“メンヘラ”“病み”といったストレートな言葉を使うバンドが増えた。

■“メンヘラ”をユーモラスに表現する甘い暴力
 甘い暴力は、ex.少年記のメンバーを中心に、2016年に結成され、関西を拠点に活動を続けている。彼らの特徴は、“病み”や“メンヘラ”をテーマとしてはいるが、深刻になりすぎず、かといってネタまではいかないギリギリのラインで、ユーモラスに昇華している点だ。

心配されたい 構ってもらいたい
ちやほやされたい
嫌だ嫌だ あいつの本気の病んでるアピール
「ファッションメンヘラ」(2017年)

 例えば、この歌詞は、まさに「病んでいる」心を歌った曲ではあるが、そこに、〈嫌だ嫌だあいつの~〉というツッコミの視点もあるため、思わずクスッと笑えてしまう。この曲には、“病んでいる”者の心情と、それを嫌悪する者の両方の視点があるのだ。その、嫌悪する者の視点は、言い換えれば、ヴィジュアル系を俯瞰する視点とも言えるだろう。

 また、バンド名も示唆に富んでいる。“甘い暴力”というと、舘ひろしがいたロカビリーバンド・クールスの同名曲を思い浮かべる人もいるだろう。クールスの「甘い暴力」が、何も持たない若い男が、彼女への恋心を歌った曲だとすれば、ヴィジュアル系バンドの甘い暴力は、バンドマンとバンギャルの関係を“甘い暴力”と揶揄しているように感じる。ライブでは、ヒモのバンドマンとそれに貢ぐバンギャルの寸劇を披露して、フロアを笑わせることもあるし、「君、依存、タトゥー」(2017年)で描かれる、悪い男だと分かっていながらも、その関係に依存する女子の姿は、バンドマンとバンギャルの複雑な関係を彷彿とさせる。

 おそらく、彼らは、ヴィジュアル系が、一般的にどのようなイメージを持たれているのかということに意識的なバンドだ。特に、“病み”や“メンヘラ”は、ヴィジュアル系ファンからは強く共感されるが、反面、ヴィジュアル系に馴染みのない人からは敬遠されがちなテーマである。だからこそ、重くなりすぎないよう、ユーモアをまじえながらバンギャルやバンドマンの生態を暴いているのだろう。そして、そういったヴィジュアル系の特性を隠すのではなく、オープンにすることで、彼らの存在を認め、受け入れている。その包容力も、甘い暴力というバンドの特徴だ。

 ヴィジュアル系を冷静に俯瞰する視点と、シリアスなテーマをユーモラスに表現するひょうきんさ。これを合わせ持っているところが、甘い暴力の大きな魅力なのだ。(小川あかね)

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