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エントランスの上に設置されたQueblickの看板。

店長たちに聞くライブハウスの魅力 第7回 福岡・Queblick

ナタリー

19/2/18(月) 17:00

全国のライブハウスの店長の話を通して、それぞれの店の特長や“ライブハウスへ行くこと”の魅力を伝える本連載。7回目となる今回は福岡のQueblickを訪問した。

1970年代の“めんたいロック”の時代から現在に至るまで、地方都市でありながら多数の著名アーティストを輩出している福岡。ロックが文化として根付いているこの街では、老舗も含めて多くのライブハウスが営業している。2013年にオープンしたQueblickはその中では比較的新しいライブハウスだが、地元の音楽ファンからの支持は厚く、ロックバンドを中心としたライブがほぼ毎日行われている。

Queblickの店長を務めているのは、メロディックハードコアバンド・SHIMAのボーカリストとしても活躍しているEGACCHO。今回は彼にインタビューを行い、この店のこれまでの歩みや、福岡のロックシーンの現状などについて話を聞いた。

「ライブハウス業務はバンドマンにうってつけ」と言われて

「うちのオーナーは九州でライブの企画・運営をするPROJECT FAMIRYっていうイベンターをやっているんですが、昔から『いつかライブハウスを運営したい』っていう夢があって、それでこの店を作ったんです。それまで僕とオーナーはバンドとイベンターっていう間柄で、現場でよく顔を合わせていたんですけど、店がオープンするときにオーナーから『バンドしながらでも業務できるし、ライブハウスで働くのはうってつけじゃない?』って声をかけられて、僕はここで働くことになったんです」

「ちなみにPROJECT FAMIRYは『TRIANGLE』っていうイベントシリーズをやっていて、今は野外イベントとして開催されてるんですけど、昔は九州各地を複数のバンドで回る合同ツアーをやっていたんです。その頃はマキシマム ザ ホルモンとかG-FREAK FACTORYとか、いろいろな人たちが出演してました。僕も大学生の頃に組んでたバンドで地元の1公演だけ出たことがあって、全公演に出演するのがずっと夢で。その後にSHIMAを結成して、2012年に初めて全カ所回ることができたんです。僕らのような九州の若いバンドにとって『TRIANGLE』は、まず目指す場所だったんですよね」

「それでこの店がオープンしたんですけど、最初は誰が店長かっていうのを決めなかったんですよ。社員4人が全員店長、みたいな感じでスタートして。でもやっぱり、だんだん統率を取るのが難しくなってきたんですよね(笑)。何かするときに意見もまとまらないし、責任も分割されてる感じだったので、やっぱり店長っていう立場の人間が1人いたほうがいいねってことで、僕の意思とオーナーの判断で僕が店長になりました」

ライブを観ることの素晴らしさを若い方々に知ってもらうために

「自分自身がほかの街でライブをして回ってる印象では、福岡はバンドが多いし、その意味では盛り上がってる部分はあると思います。でもつながりが浅くて、まだまだみんながひとつになれてない気がするんですよね。今の20代前半の子らって、昔のバンドと比べてイベントを打つことに興味がなくなってきてると思います。僕らが大学生くらいの頃は『なんぼ借金して、なんぼライブするかが勝負や』みたいなことにガッツを向けてるバンドが多かったけど、今はYouTubeやSNSで自分たちの曲を広めることもできるし、『ライブハウスでライブの力をじっくり磨いたりしなくても、楽曲が売れたらなんぼでも盛り上げられる』みたいな考え方の子も多くなってきたのかなと。借金することが正解というわけでもないですけど、そういう流れに負けないようなバンドを育てていくことが、ライブハウスで働く意味だと思うんです」

「僕の頃とは時代が変わったとはいえ、音楽を生で聴いて感じる興奮とか、そういう部分は今後も変わらないと思うので、YouTubeで映像を観るだけでなく実際にライブを観ることの素晴らしさを若い方々にも知っていただきたいんです。そのためにQueblickでは2017年まで、夏に「高校生バンド大会」を開催してたんですけど、チケットを売る行為が校則で禁止されたり、軽音部はあるけど学校外での活動は禁止されてたりして、バンドが集まらないので去年からやめちゃいました。けどたまに、電話やメールで『ライブをやりたいんですけど』っていう問い合わせをしてきた人に当日会ったら、『あのとき高校生バンド大会に出てた者です』って言われることがあるんですよ。それはライブハウスをやっててよかったなと思う瞬間ですよね」

「『地元のバンドがイベントをしなくなってきた』って言いましたけど、だからこそ地元でがんばってるバンドを観ると、すごく印象に残るんです。全国でツアーを回って福岡に帰ってきて、『成長したな』って思えるバンドもいれば、『まったく変わってねえやん』ってバンドもいるんですけど、そういうバンドたちに対して、自分がどれだけ力になれるのかを考えるのは楽しいです。福岡で活動しているバンドでは、個人的にはBermuda△(バミューダトライアングル)に注目しています。“大人の事情POP”を掲げて、サラリーマンとかになりきって日常を歌うバンドなんですよ。ライブも『昔は妻が優しかった』みたいなことを言いながら進めていくんですけど、題材が面白いなって。あとはthe shirafuっていうバンドもいいですね。正統派なギターロックなんですけど、ボーカルの声がすごくよくて」

「最初は『いいブッキングを組んでいれば、おのずと人が来るはず』って思ってたんですけど、それはライブハウスとして最低限のやるべきことで、そこから先に進むにはいろいろ模索していかなきゃダメなんですよね。それでQueblickでは九州で活動しているバンドに声をかけて、無料のオムニバスCDを作ってるんです。もう12枚作ったんですが、今まで参加してもらった人たちの中には、ポルカドットスティングレイ、神はサイコロを振らない、ユアネスみたいなバンドもいたりして。最近このCDがメルカリとかで転売されてるんですよ。胸糞悪いですよね。だって無料で配ったものなんですよ?」

年間55本のアニバーサリーライブを企画して気付いたこと

「Queblickでやったライブで今までで一番印象に残ってるのは、HEY-SMITHのアウトストアライブかな。CDに入場券が入ってて、それを持ってきたらライブが観れるという企画だったんですけど、CDを買った人のうち何人が来るかまったく読めなくて。当日、キャパを上回る人数が押し寄せちゃって、もう人の上に人を乗っけないとドアが締まらない状況になっちゃったんです。あれは大変でしたね……」

「2018年はオープン5周年にちなんで、1年かけて55本のアニバーサリーイベントを開催したんですよ。途中でTHE NINTH APOLLOが5DAYSのライブをやってくれたりしてなんとか55本達成したんですけど、『ライブを企画するのってこんな大変だったのか』って改めて感じましたね。でもそれをやったことで、出てくれてるバンドに対しての愛がかなり深まりました。自分もバンドをやってるからバンドマンの気持ちはわかってるつもりでいたんですけど、その55本のライブを通して『やっぱりライブハウス業務はちゃんとやらなきゃダメだな』って気付かされて。以前の僕はライブハウスの仕事をしていても『あくまで俺はバンドマンやから』って、自分のバンドのことばかり考えてたところがあったんです。でも出演するバンドマンの立場だったらそんな店は嫌ですよね」

「とは言え、やっぱり僕の夢はバンドで飯を食っていくことです。だから今は『バンド活動をしながらでも、こんなにいいライブハウスができるよ』っていうのを若い世代に背中で見せたいと思ってます。例えばマキシマム ザ ホルモンのナヲさんは妊娠して出産してもバンドを続けられるってことを体現してますよね。バンドと別の仕事をしていることを隠す人もいるけど、働きながらバンドをするのをカッコ悪いとはまったく思わないし、むしろ自分のことをすべて見せたうえでカッコいい音を出すバンドが一番カッコいいんじゃないかな」

日常とかけ離れた体験ができるのは、ライブハウスの何よりの魅力

「Queblickのトイレは絶対にキレイにしたいと思ってて、オープン当時からトイレ掃除を徹底してるんです。あと、元気でしっかりした挨拶をみんなで心がけてます。ライブハウスって一般的に、怖い、汚い、臭い、スタッフが無愛想、みたいなイメージがあると思うんですけど、『観たいバンドが出てるのに、あそこは汚いしスタッフの態度も悪いから行きたくない』なんてことになったら、出てくれるバンドにとってもよくないじゃないですか。『今日誰が出るのか知らないけど、スタッフが楽しいから会いに行きたい』って思ってもらえるくらいの店にしたいです。ライブハウス業務って好きじゃなきゃ務まらない仕事だから、やりたくないならそもそも働いてるはずがないのに、だったらつまんなそうにしてんじゃねえよって話ですよね」

「Queblickにはオリジナルのカクテルとかはないんですけど、ドリンクにはこだわってます。ビールは発泡酒でなく生ビールだし、コーラやジンジャーエールも瓶のものを出してますし。カクテルもなるべく丁寧に作りなさいって指導してます。500円ももらうからにはそれなりのクオリティのものを差し上げないとダメだと思うので」

「普段生活していて、ライブハウスくらい大きな音で音楽を聴くことってないですよね。そんな日常とはかけ離れた体験を、自分が好きな音楽で味わえるというのは、ライブハウスの何よりの魅力だと思います。高校生の頃、40人くらいいるクラスでライブハウスに行ったことがあるのは僕1人だけだったんですよ。僕は当時SOBUTが好きで、いつも隣のクラスの奴と2人でライブを観に行ってたんですけど、『みんな音楽を聴くのは好きなのに、なんでライブハウスに行かないんだろう』ってすごく不思議だったんですよね。ライブハウスってめっちゃ最高な場所なので、まだ行ったことがない人も体験してみればきっとハマると思います。ぜひ遊びに来てみてください」

店舗情報

住所:〒810-0041 福岡市中央区大名2-6-39 ランディックビル大名B1F
アクセス:地下鉄赤坂駅5番出口から徒歩1分 / 天神バスセンターから徒歩10分
営業時間:公演により異なる
定休日:なし
ロッカー:なし ※クロークあり
駐車場:なし
再入場:公演により異なる
キャパシティ:200人
ドリンク代:500円
フリーWi-Fi:なし
貸切:可
※情報は2019年2月18日時点のもの。

取材・文 / 橋本尚平 撮影 / 濱本英介

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