Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

ぴあ

白石麻衣、女優としての着実な歩み 『絶対零度』憎悪と愛情を両立させた高度な演技

リアルサウンド

18/8/28(火) 6:00

 乃木坂46の白石麻衣が、2018年に入り、立て続けにドラマ出演を果たしている。4月より放送された『やれたかも委員会』(MBS・TBS)、5月放送の『世にも奇妙な物語’18春の特別編』(フジテレビ系)の『フォロワー』、そして今回『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』(フジテレビ系)への出演だ。

参考:佐藤二朗×白石麻衣が語る、“くだらないこと”に没頭する幸せ ドラマ『やれたかも委員会』対談

 彼女のこれまでの経歴を振り返ると、映画『劇場版BAD BOYS J -最後に守るもの-』(2013年)に始まり、ドラマ『初森ベマーズ』(テレビ東京系/2015年)、ドラマ『キャバすか学園』(日本テレビ系/2017年)、映画『あさひなぐ』(2017年)といった“乃木坂46”としての白石、アイドルの部分を前面に打ち出した脚本、配役の作品が多くあった。キスシーンが話題となった映画『闇金ウシジマくん Part3』(2016年)は、アイドルの枠を飛び出した初めの一歩であったと言えるが、それが二歩、三歩と次へ繋がっていったのは、今年に入ってからだ。

 白石は、乃木坂46初の専属モデルとして、2013年から5年間、雑誌『Ray』で専属モデルとして数々の表紙を飾り、昨年発売した2ndソロ写真集『パスポート』(講談社)は、先日8月20日、白石の誕生日に21度目の重版、累計発行部数32万部を突破し、前人未到の記録を更新中。『日経エンタテインメント!』の「タレントパワーランキング2018 音楽編」では、「ミュージシャン急上昇 TOP20」で1位を獲得し、2018年上半期CM女王(エム・データ)にも輝いている。乃木坂46の白石麻衣としてだけでなく、個人としての白石麻衣へ。立て続けのドラマ出演も、注目度の高さの証だ。

 白石が演じる役は、決まってクールな役柄が多い。乃木坂46メンバーがメインキャストを務めた映画『あさひなぐ』では、強く美しい薙刀部のエース・宮路真春、『やれたかも委員会』では月綾子を演じた。クールな役柄は容姿端麗な白石のルックスを活かした配役であるが、月綾子はそこに色気とシュールな笑いが要求された、ある種これまでの配役にはなかった演技が求められた。『世にも奇妙な物語』のストーリーの1つ、『フォロワー』は白石にとって初の主演作品。嘘の写真投稿でSNSのフォロワー数ナンバーワンを目指す『フォロワー』は、ホラーサスペンスであり、終盤はサイコホラーへと変貌していく物語であった。恐怖からの絶叫、焦りからの疾走、そして恐怖の果てに行き着くのが狂気。車に轢かれてまでも自身のフォロワーを気にする常軌を逸した白石の表情は、観るものにゾッとする恐怖を与えた。

 月9初出演となる今回の『絶対零度』で白石が演じるのは、結婚式で復讐を果たそうとする美人花嫁。劇中で何度も“美人”と謳われることからも、これまでの『やれたかも委員会』『フォロワー』と地続きのイメージではあるが、演じる砂田繭美に求められるのは複雑な心情の変化。元恋人をドナー提供のために殺された繭美は、その医者の人生最高の日に最も苦しい思いをさせるべく、大切な人である息子・神谷統一郎(入江甚儀)を銃殺することを計画する。

 ハイライトとなるのは、繭美が復讐に燃える結婚式のシーンだ。教会には「アベマリア」が流れ、出席者が祝福する中、扉が開きウェディングドレスを身にまとった繭美が現れる。ゆっくりとバージンロードを歩く繭美に笑顔はなく、統一郎を見つめたその表情には憎しみの執念が溢れている。幸せの象徴でもある結婚式という場で、1人憎悪を剥き出しにし、ブーケに隠した拳銃を構える姿は、『フォロワー』に見た白石の演技を彷彿とさせる。捜査のため、繭美と仲良くなった小田切(本田翼)が本当に統一郎を殺せるのか懐疑的であったように、繭美は引き金を引く直前で恐怖心に襲われる。

 泣き出しそうになる恐怖は絶叫に変わり、勢いで引き金を引くも、銃は空砲を放つ。虚ろな表情を浮かべる繭美。彼女の計画を全て知っていた上で、結婚式に臨んでいた統一郎は、彼女の思いを受け止め毒物を飲む込む。困惑する繭美は、小田切に支えられ井沢(沢村一樹)から全ての真相を聞き、「なんで、彼は私を問い詰めなかったの?」と涙を見せる。「彼を助けて! お願い。なんでもします。罪も償います。だから、お願い、彼を助けて……」というセリフは、彼女の中で憎悪から自身の奥に隠れていた愛情へと変わっていったことを表す重要なシーン。感情の移り変わりが激しい今回の結婚式でのシーンは、白石にとって最も高度な演技だったと言えるだろう。

 絵に描いたようなお嬢様というキャラ設定は、小田切とのランチシーンで見せる柔和な笑顔から見て取れるが、演じる白石と本田はモデル時代から、公私共に仲が良く、『絶対零度』の公式Twitterでも、白石の誕生日を祝う2人のショットが公開されている。結婚式でのシーンもそうだが、気心の知れた本田との共演だったからこそ発揮された、白石の迫真の演技だったのかもしれない。

 「白石麻衣は、もう、どこへでも行ける。」とは、秋元康が白石の写真集『パスポート』の帯に宛てた言葉だが、その意味を改めて強く実感する『絶対零度』への出演だった。(渡辺彰浩)

Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play