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THE PINBALLS、ライブから伝わる“ロックバンドとしての哲学” 全国ツアー最終公演を振り返る

リアルサウンド

18/8/31(金) 12:00

 本物のロックってなんだろう。生まれた時からヒップホップやハウスがある世代にとって、それでもロックンロールに発見されてしまった少年たちが、それ以外、なんの武器も持てずに鳴らすもの、少なくとも2010年代以降のロックはそうした必然がある気がする。

 結成12年目にして、昨年末にメジャーデビューしたTHE PINBALLS。今回、メジャー1stシングル『Primal Three』を提げた全国ツアー『-Leep with Lightning your-』の後半戦「〜Final Series〜」のファイナルである渋谷TSUTAYA O-WESTを見たのだが、いわゆる下積みや不遇の時代を感じさせず、ただ今日を生き、今を鳴らす喜びや、バンド活動以外に興味がなさそうな佇まいに圧倒された。いや、むしろこんなに楽しげに演奏されたら、やっぱりシンプルな4ピースのロックンロールは不滅だな、バンドって存在自体が奇跡だなと素直に思わされた。

 これまでで最も大きなキャパシティとなるO-WESTは、ライブ2日前にソールドアウト。喜びを爆発させ、前のめり気味でステージに登場した4人は痛快に疾走する「片目のウィリー」でライブをスタート。強力なエイトビーター石原天(Dr)のシンプルなビートをここまでイメージ豊かに届けられるのは、古川貴之(Vo)の歌の力が大きいように感じる。古川は言いたいことやメッセージではなく、物語で聴き手を自由に旅をさせる表現者であることは筆者のようなTHE PINBALLS初心者でも理解できる。バンドアンサンブルあっての物語の疾駆ではあるけれど、ボーカルが何を歌うのかは、プレーヤーの演奏に凄まじく影響する。彼らはTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTやBLANKEY JET CITY、またThe WhoやThe Rolling Stonesからの影響を公言している。今回、その本質を見た思いがした。短めの尺に個別の物語を凝縮した楽曲ではハードボイルドな世界に浸っていた古川だが、MCで見せる対極的な笑顔からは人の良さが溢れ出ており、そのギャップもいい。

 爽やかさと切なさを併せ持つ「20世紀のメロディ」もあれば、AORフレーバーなバックビートの「299792458」もある。森下拓貴(Ba)のダウンピッキングが曲の重さを際立たせる「カルタゴ滅ぶべし」。その間奏で聴ける中尾智裕(Gt)のホワイトブルースに根ざしたフレーズ、素の歪み。人間の感情がダイレクトにプレイに直結し、ただアンプリファイされているだけというシンプルさ。4人の肉声を聴くようなアンサンブル、それがいわば「本物のロック」という手垢のついた表現を否応無く導き出してしまうのかもしれない。もちろんポジティブな意味で、だ。

 ハードボイルドな演奏を繰り出しながら、曲が終わるごとに感謝を述べ、満面の笑顔を浮かべる古川を見ていると、そこだけスタイリッシュに振る舞うことがむしろかっこ悪く捉えられる今の世代感が明確に見て取れる。誰かに対する攻撃ではなく、ロックで見たことのない世界やグルーヴを体感してほしい、究極のところを言えばそれ以外にTHE PINBALLSの理想はないのかもしれない。そしてそこがこのバンドがオーセンティックなロックンロールやガレージロックを鳴らしていながらも、新しい存在感を放つ理由だろう。

 再び疾走する「ひとりぼっちのジョージ」、カウパンクなノリの「重さのない虹」を経て、最新シングルから〈細胞と細胞と細胞が脳〉という意味不明な歌詞だが、聴くほどにイメージがわくサビが刺さる「Lightning strikes」で、フロアの熱はさらに上昇。同シングルから重低音が響く、悪夢的な匂いのある「Voo Doo」やシアトリカルな「劇場支配人のテーマ」と、流れもいい。シンプルな構成ながら、曲のレンジが広いことにライブ終盤になって気づいたのだが、考えてみればすでに5作のミニアルバムと1作のフルアルバムなどを世に出してきた彼らには100曲近いレパートリーがある。オーセンティックな編成ながら同じような曲がないセットリストにフロアが狂喜するのも当然だし、THE PINBALLSのライブの体感時間が早く感じられるのは、そうした事実が起因しているのだろう。

 個人的には「carnival come」での歌メロの裏を縫うような中尾のリフは、ソロ以上にこのギタリストのセンスが際立っていた。中性的なルックスも相まって、ちょっとジョニー・サンダースがジョニーよりシュアなギターを弾いているような印象を受けた。素晴らしいセンスだ。本編ラストは「蝙蝠と聖レオンハルト」。言葉数で畳み掛けつつ、少しセリフ回し的なボーカルにアレックス・ターナー(Arctic Monkeys)にも似た、ストーリーテラーとしてのボーカルの強みを見せ、エンディングではステージを横切りつつ、バスドラに飛び乗りジャンプ。興奮抑えきれずという自然なアクションが痛快だった。

 アンコールも含め凝縮しきった90分は体感としては30分程度。激しいライブをするバンドだが、曲の世界観で未知の空間を擬似体験させるところが、今後さらにグラデーションのあるリスナーを獲得する強みになっていくのではないだろうか。

(写真=白石達也)

■石角友香
フリーの音楽ライター、編集者。ぴあ関西版・音楽担当を経てフリーに。現在は「Qetic」「SPiCE」「Skream!」「PMC」などで執筆。音楽以外にカルチャー系やライフスタイル系の取材・執筆も行う。

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