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有村架純に続くブレイクなるか? 『忘れ雪』出演の”あまちゃん女優”大野いとの可能性

リアルサウンド

15/8/14(金) 7:00

 放映から2年も経って、まだ『あまちゃん』の話をするのもどこか憚られるものがあるが、出演した若手役者が軒並みブレイクしていることを考えると、ひとつのジャンルとして成立してしまったことは否定できない。

 この「あまちゃん女優」というジャンルの中では、最近何かと話題の能年玲奈はもちろんのこと、橋本愛と有村架純が多く語られるが、2015年になると東京編で登場した女優が順々にブレイクし始めるのである。

 『問題のあるレストラン』(2015年)で好演を見せ、バラエティでもその存在感を発揮する松岡茉優、夏ドラマ『デスノート』のニア役でさらなる注目を期待される優希美青。

 そして、まだ今ひとつブレイクと呼べるほど弾け切れていないが、この先少なからず「あまちゃん女優」の一人として語られるであろう逸材がいる。それが大野いとだ。

 個人的には、ようやく注目されるようになったか、と少し親目線(年齢的には近所のお兄さんみたいな目線か)で見てしまうわけだが、そんな嬉しさも反面、ついに見つかってしまったか、という口惜しさも少なからずある。

 14歳のときにスカウトされ、『Seventeen』(集英社)のモデルとしてデビューした彼女は、翌年には人気漫画『高校デビュー』の映画版の主演に抜擢され、華々しくスクリーンデビューを果たす。と、理想的なシンデレラストーリーのように思わせておいて、その年に発表された「スポーツ報知蛇いちご賞」の〝最低〟新人賞を獲得してしまうのである。その理由は極めて明確である。彼女は、誰がどう見ても台詞読みが下手すぎたのだ。起伏のない、俗に言う「棒読み」というものである。

 それでも公開当時、女子中高生しかいない劇場でこの映画を観た筆者が驚愕したのは、ヒロインの棒読みでもなければ、上映中に劇場中から鳴り止まない携帯電話の着信音でもない。まったくの新人女優が、演技において最も難しいとされる喜劇を、しかもこんな軽調なスラップスティックコメディを全身で演じきっていたのだ。とにかく大げさな表情の作り込みと動作、「この映画は私のものだ!」と言わんばかりに放たれる勢いに、天才的なコメディエンヌの誕生を予感させられるものの、やはりどうしても彼女が喋ると少々我に還ってしまう。

 とはいえ、映画デビューから数年の間に7本の映画に出演と、コンスタントに続いていくのは、少なからず彼女の演技ポテンシャルが認められているからに違いない。だからと言って、一向に台詞回しは上手くはならないのだが、ここまで来るとさすがに観慣れてくるし、何より演じるキャラクターの幅広さがそれをカバーしているのだ。

 2作目の映画となった三池崇史の『愛と誠』(2012年)では、オリジナル版(『続・愛と誠』)で多岐川裕美が演じたスケバン・高原由紀を演じ、劇中で藤圭子の「夢は夜ひらく」を歌う。デビュー作とは一転して、終始無表情のミステリアスな役を演じ、イメージを一新したと思いきや、続く福山桜子の『愛を歌うより俺に溺れろ!』(2012年)では男装バンドを率いる女子高の王子を演じ、再び少女漫画映画のヒロインに戻る。

 そうして映画やテレビドラマ、感動作から喜劇、サスペンスと、彼女の演技は間違いなく成長しているのだけれど、やはり台詞が気にかかって仕方がない。

 そんな折、今年の初夏に公開されたSABUの『天の茶助』は画期的であった。後天的に声を失い、最後まで台詞が回ってこないヒロインという、一見すると非常に難しい役を演じなくてはならない上、相手が当代きっての演技派、松山ケンイチときたら、こんなにも都合の悪い話があるだろうか。しかし彼女は、表情と所作だけで理想的なヒロイン・新城ユリを演じきってしまったのだ。たしかに少しばかり瞬きが多い気がするし、繊細な喜劇演技はまだまだ改良の余地が残る印象を受ける。

 それでも、劇中で車に跳ね飛ばされる直前、天使役の松山ケンイチと路上で衝突してゆっくり立ち上がる一連の動きだけで、この映画における理想的なヒロイン像を超越して、正真正銘の天使のようにスクリーン上に君臨した。

20150814-ito-2.jpg『忘れ雪』場面写真

 そんな彼女の出演映画はこの後も続く。まずは秋に公開するハン・サンヒの『忘れ雪』。子供の頃に結婚を約束した相手を想い続ける女性を演じ、台詞量は多いものの、ペットと戯れて見せる笑顔など、自然体の彼女の表情を見ることができる。ハン・サンヒ監督といえば、『初雪の恋 ヴァージン・スノー』でブレイク途上だった宮崎あおいをヒロインに迎えている女優選びの名人。劇中での大野いとの台詞の中に、彼女の出演作を想起させる台詞が出てくることから、そこで彼女を見つけ出して抜擢したと考えると、なかなか面白い。

 また来年にはアジア圏の名監督に愛される音楽家・半野喜弘の初監督作のヒロインも待機しており、日本を飛び出してアジア圏でも注目されるチャンスを秘めている。

 大野いとが、「あまちゃん女優」という冠を払いのけ、ひとりの女優「大野いと」として語られる日が近付いているのだ。

◼️久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■公開情報
『忘れ雪』
2015年秋公開予定
公式サイト

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