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秋山黄色は公演中にさえ“進化”するーーユアネスと眩暈SIREN迎えたスリーマンライブレポ

リアルサウンド

19/2/28(木) 14:00

 2019年2月15日、『秋山黄色1st mini Album『Hello my shoes』 release LIVE “What color are you? vol. 2”』が、TSUTAYA O-Crest(東京・渋谷)で開催された。

(関連:『秋山黄色1st mini Album『Hello my shoes』 release LIVE “What color are you? vol. 2”』写真はこちら

 秋山黄色は、作詞・作曲・編曲だけでなく、映像やイラスト制作まで手がけるソロアーティスト。YouTubeでのMVやSpotifyなどのプレイリストで注目され、SNSを中心に話題になっている。Spotify「Early Noise Artist 2019」にも選出され、先日には『VIVA LA ROCK 2019』への出演が決まるなど、今年大注目の新人だ。

 今回はユアネス、眩暈SIRENを迎えてのスリーマンライブ。何となく特別な感じがする、そんな気持ちがにじみ出るように、会場は少しソワソワとした雰囲気で開演の時を待っていた。

 トップバッターはユアネス。福岡で結成された4人組ロックバンドであり、2017年には『RO JACK for ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017』で優勝した経験がある実力派だ。メンバーがステージに現れると、会場には男女2人のポエトリーリーディング「変化に気づかない」が流れ始める。会話の最後、男性から女性に「本当、変わんないね」と言うと、それに呼応するように〈『変わんないね』なんてあなたもでしょう〉と歌い出される「凩」からライブが幕を開けた。黒川侑司(Vo/Gt)は安定感あるボーカルで、物語性を大切にするように丁寧に歌う。歌詞がしっかりと耳に届き、会場は一気にユアネスの世界に誘われていった。続く「あの子が横に座る」では、バンドの演奏力の高さに驚かされる。古閑翔平(Gt)が雫の落ちるようなリフを奏で、小野貴寛(Dr)の細やかなドラムと、田中雄大(Ba)の安定した演奏が、黒川の柔らかな歌声を絶妙なバランスで支える。

 黒川はMCで、「(同じく福岡出身の)眩暈SIRENも前からずっと知っとって、対バンできることが嬉しい。音楽を続けていないとみんなにも会えなかった」と、音楽が繋いだ出会いへの喜びを素直に語っていたのが印象的だった。ラストの「pop」のサビ〈僕は弱くて 臆病者で 誰にもなれない 僕のまま もう逃げも隠れもしないよ〉では観客も自然と拳を上げ、会場全体が一体となって船をこぐような、そんな推進力が生まれていた。黒川はライブの途中、「ライブハウスは空気もこもるし、音も大きいし、倒れそうなら言ってくださいね」と声をかけていた。ユアネスというバンドはきっと優しくて真面目だ。そして一つ一つの“音”や“言葉”に対して丁寧に、かつ研究的に向き合っていることが伝わるライブだった。

 続いて登場したのは、眩暈SIREN。彼らはMVなどでもはっきりと顔を出していない。京寺(Vo)とNARA(Dr)はパーカーのフードを被って登場。照明も暗く、ミステリアスな空気を醸し出していた。

 「自分の汚さを どうすれば許せる」と、絞り出すような声を皮切りに演奏されたのは「ジェンガ」。ジェンガのように不安定な心のうちをあぶり出され、はっとする。この曲ではデスボイスを響かせていたウエノルカ(Piano/Vo)は、続く「明滅する」では軽快で澄み切ったピアノを披露。京寺は強い意志を感じさせる低音ボイスと、美しい裏声を巧みに行き来し、ボーカルとしての表現力を発揮。オオサワ レイ(Gt)はハットを目深にかぶり、森田 康介(Ba)は長い髪を前にたらし、楽器を唸らせる。演奏力の高さは抜群で、その姿は“職人”のようだった。最後の「故に枯れる」では、京寺がステージから身を乗り出し、客席に差し伸べた手は救いを求めるようでいて、私たちを救い上げてくれる希望のようにも見えた。「これからもここに立てることを願う。這いつくばって血反吐を吐いても良い」そう誓って彼らはステージを去った。

 そしてラスト、秋山黄色の登場である。こちらもMVなどではっきりと姿が明かされていないアーティストだ。いざ登場した秋山黄色は、髪も“黄色”。つまり綺麗な金髪で、前髪は表情が見えないほど伸ばされていた。1曲目は、「スライムライフ」。実は『Hello my shoes』には未収録であり、ライブへの本気度が伺い知れる。想像以上に歌声は力強く、ギタープレイは豪快。曲が終わり、「どうも」と話しだすかと思いきや、そのまま「やさぐれカイドー」のイントロへ。このイントロは何度聴いても心を鷲掴みにされる。「Drown in Twinkle」では声の機微がより詳細に感じられた。彼の声は儚く壊れそうなのに力強く、裏声はオペラのように美しい。

 「普段あんまり曲の説明しないんですけど」と前置きし、「幸せになるのに不幸なことを見て見ぬ振りできない。そういう曲です」と紹介して演奏したのは「クラッカー・シャドー」。MCで自身のことを「陰」と語っていた彼を表した曲と言えるだろう。このあたりから、独特の波乗りのようなギタープレイを繰り返していることに気づく。力みがない、音に身体を乗せるような演奏で、本人も時折心地よい表情をうかべる。MCでは「ボクシングやテニスには毎回勝ち負けがあるけど、音楽は好きなことを、好きなように、毎回同じようにしていたら、周りだけ変わっていくという最高の趣味だと思う」と語った。彼はきっと音楽的勘が抜群に良い。そして音楽を心底愛し、自分が心地良いと感じる音を好きなように奏でているのだろう。

 続いて「人間は究極一人だけど、それでも(他人に)近づきたいという気持ちを書いた」という「ドロシー」へ。〈悲しみを分かち合いたい 分かち合いたいのは 僕一人の我儘だろうか〉と歌うその姿は祈りを捧げているようだった。

 「後2曲なんですけど、今まで体験した事ないくらいの数分間にするので、最後までよろしくお願いします」と宣言し「とうこうのはて」へ。ダウンピッキングのベースに誘われるように、ここにきて階段をひとつ上った感覚がした。演奏も歌も冴え渡り、プレイも激しさを増す。客席にも手拍子が広がる。ラストの「猿上がりシティーポップ」はいわゆるフェス向きの曲であり、会場全体が完全に音にのめり込んでいた。最初にステージに出てきた時とは、音も佇まいも違う。ライブの最中にさえ進化する。今の彼の成長スピードは計り知れない。

 終演後、アンコールを求める声はやまず、再びステージに登場したが、「体力が残っていません(笑)。いつかアンコールをやる日が来るかもしれないので、それまでにたくさん会いに来てください」という異例の対応を見せ、会場を和ませていた。末恐ろしいほどのセンスに脱帽する一方で、ステージにティッシュとゴミ箱を設置したり、ライブ中に「一瞬休憩してからやるんで」と押し黙ったりと、彼の家に招かれたかのような親近感も抱くライブだった。このギャップは大きな魅力の一つであり、今後多くの人に愛されていくことを確信せざるを得なかった。彼はきっと今この瞬間も進化し、ファンを増やしていることだろう。(深海アオミ)

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