Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

ぴあ

いま、最高の一本に出会える

年末企画:小田慶子の「2018年 年間ベストドラマTOP10」 牽引する人々の世代交代が進む

リアルサウンド

18/12/29(土) 12:00

 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2018年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに分け、国内ドラマの場合は地上波および配信で発表された作品から10タイトルを選出。第14回の選者は、雑誌で日本のドラマ、映画を中心にインタビュー記事などを担当するライター/編集者の小田慶子。(編集部)

1.『おっさんずラブ』(テレビ朝日)
2.『アンナチュラル』(TBS)
3.『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ)
4.『義母と娘のブルース』(TBS)
5.『dele』(テレビ朝日)
6.『平成細雪』(NHK BSプレミアム)
7.『昭和元禄落語心中』(NHK)
8.『トドメの接吻』(日本テレビ)
9.『女子的生活』(NHK)
10 『生田家の朝』(日本テレビ)

■総評

 主演キャストで光っていたのは『おっさんずラブ』でブレイクを果たした田中圭を始め、『アンナチュラル』と『高嶺の花』(日本テレビ)の石原さとみ、『コンフィデンスマンJP』の長澤まさみ、『義母と娘のブルース』の綾瀬はるか、『大恋愛~僕を忘れる君と』(TBS)の戸田恵梨香。いずれも15年以上テレビドラマの世界で体を張ってきた30代前半の俳優であり、この1年は彼ら/彼女らが自身のキャラクターが反映されたハマり役を得て、生き生きと芝居をしているのを観るのが楽しかった。特に『おっさんずラブ』、『アンナチュラル』に顕著だったが、俳優が単純に与えられた役をこなすのではなく、作り手の一員であることを強く意識し、内容にも意見を述べて積極的に関わっていく姿が印象的だった。

 制作サイドでは女性プロデューサーの活躍が目立った。『おっさんずラブ』『アンナチュラル』『あなたには帰る家がある』(TBS)は、女性のプロデューサーが海外ドラマで言うところの“ショーランナー”(題材選定からスタッフ選び、キャスティングまでを現場で指揮する立場の人)として制作した作品。女性が決定権を持って描き出す女性像は、やはり女性から見て違和感がない。現実社会では“MeToo”運動が起こり、ポリティカリー・コレクトを考えたとき、なかなか男性の作り手ではどこまでがOKでどこからがアウトか判別しにくく、タイトルやセリフなどが炎上するケースもある中、女性プロデューサーたちは、恋愛や結婚の描き方ひとつとっても女性が安心して共感できるドラマを作り出した。単純に男女比率を見ても、テレビの歴史上、これほど多くの女性プロデュサー(ディレクターも)がクレジットされた時代はかつてなく、例えば映画業界と比較しても女性登用が進んでいるという印象。その意味では、ドラマの未来は明るいかもしれない。

 一方、脚本家では『半分、青い。』(NHK)で朝ドラに挑戦した北川悦吏子、『高嶺の花』の野島伸司、『anone』(日本テレビ)の坂元裕二というビッグネームがオリジナル作を発表。ただ、いずれもドラマの内容が若い世代の支持を得たとは言えず、それより下のロスジェネ世代である野木亜紀子、古沢良太の方がドラマ作家として固定ファンを集めていた。

 2018年はキャスト、スタッフともに牽引する人の世代交代がいっそう進んだという印象。2019年も「面白いドラマを作ろう」というクリエイティビティを最優先した上でキャスティングをした本気のドラマが見たい。

■1位『おっさんずラブ』

参考:私たちは今“メジャーBL”の破壊力にやられている! 腐女子を解放する『おっさんずラブ』の革命

 2016年の単発版の完成度が高く、かつ同性愛を描くラインとしてはギリギリのおふざけ感だったので、実は連続ドラマ版のスタート時は半信半疑。主人公の春田(田中圭)が同性を好きになったその先をどう描くのか? 下手したらただのBL(ボーイズラブ)になっちゃうぞ、難しいぞコレと心配しながら見ていた。ところが毎回、綱渡りをするように絶妙のバランスで男5人+女2人の恋が展開していき、誰かが誰かを性別や年齢という属性で否定することもなく、結果的に老若男女全方位に優しいラブファンタジーができあがった。しかも毎回、爆笑できるという奇跡的な作品に。春田の上司である黒澤部長(吉田鋼太郎)と後輩の牧(林遣都)のキャットファイト(ここでは「おっさん」「ガキ」という年齢でのディスりがあった)、春田が牧と武川主任(眞島秀和)の手つなぎを見てしまうなど、シチュエーションのひとつひとつが面白く、それを演技経験豊富なキャストがふくらませて伸び伸びと演じているから盛り上がる。脚本の構成上「あれっ?」と思ったのは、第6話まで黒澤が春田を好きということは職場では伏せられており、それが黒澤の葛藤にもなっていたのに、最終話であっさり職員全員がそのことを把握し理解を示していたという点だけ。その違和感すらも純愛を地で行く感動のプロポーズの前に消し飛んでいった。キャストとスタッフがこの世界観に本気で入れ込み、この物語を愛して作り上げたからこそ、理屈抜きで感情を持っていかれるパワーに満ちていた。

 また、テレビ雑誌の仕事をしている身としては、特集を組むと部数が増えるほどの影響力があるドラマというのがここ数年(下手すれば10年以上)なかったので、久しぶりに「雑誌が売れる!」という感覚を味わいながら、楽しく取材をさせてもらった。ドラマとしてウェルメイドだっただけでなく、ブームを巻き起こし、経済を動かしてくれたということへの感謝も込めて1位に推す。

■2位『アンナチュラル』

 石原さとみ演じるミコトが職場で天丼を食べるところから始まり、同じく天丼を食べる場面で終わる。法医解剖医という職業が生きることとイコールになっているヒロイン像がかっこいい。そのミコトがさまざまな遺体の死因を探っていく中、婚約者を殺された男性が犯人に刃物を振り下ろすなど、暴力が振るわれる瞬間をはっきりと写し撮る演出も攻めていた。アメリカのサスペンスドラマのように、シビアな現実を可視化しながら、そこから逃げずに立ち向かうプロフェッショナルな女性を描き、しかも映像がスタイリッシュという作品が誕生して、うれしい。脚本の野木亜紀子は今年、本作と『獣になれない私たち』(日本テレビ)、『フェイクニュース』(NHK)というオリジナルの3作が放送され、そのいずれにもヒロインが男性から“裏切られる”という要素が入っていた(本作では窪田正孝演じるアルバイトが裏切る)。今の日本のように男女格差が大きい社会で生きるということは、直接的または間接的に、女は男に裏切られているということになるのかもしれない。

■3位『コンフィデンスマンJP』

 日本では珍しいコンゲーム(信用詐欺)ものということで注目されたが、楽しみ方としてはアニメ『ルパン三世』のようにハチャメチャなキャラクターの魅力を味わうのが正解。長澤まさみが怪演したダー子は詐欺の天才で自信過剰なルパン的存在。すぐ「(詐欺から)足を洗う」と言い出す“ボクちゃん”(東出昌大)が五右衛門なら、小日向文世が演じたリチャードは次元のポジション!? 第4話の「映画マニア編」など撮影も大掛かりで、予算と時間をかけて作られたドラマの贅沢感を味わせてくれた。脚本家・古沢良太の作品と考えると、恋愛機能不全世代を描いた名作『デート~恋とはどんなものかしら~』(フジテレビ)のような“今”ならではのテーマを求めてしまうが、純粋なコメディとしてこれはこれでアリ。気になったのは、最終話のチーム結成秘話を含め、画商や来日女優、卓球選手など、中国人だからという安易な理屈で納得させるパターンが多かったこと。映画版は香港が舞台になるそうだが、だいじょうぶ?

■4位『義母と娘のブルース』

 回が進むにつれ視聴率がアップした今年最大級のヒット作。前半で笑わせ後半で泣かせるという構成は『おっさんずラブ』にも通じ、これからのヒットの法則になるか? “義母”亜希子を演じた綾瀬はるかがとにかくすばらしく、その夫役の竹野内豊、“娘”みゆき役の上白石萌歌(子役の横溝菜帆も)、佐藤健という共演者と共に、優しい気持ちになれるアンサンブルを奏でていた。ヒットドラマにはその時代の社会的背景が描かれているものだが、本作では女性の晩婚・非婚化から、養子縁組が難しく親になる力がある人に子育ての機会が回ってこない現状、シングルマザーにとって子育てと仕事の両立が難しいこと、さらには商店街の個人商店の経営難まで、現代日本の“どげんかせんといかん”問題が盛り込まれ、それを手練れの脚本家である森下佳子が深刻にならない温度で絶妙に描いていた。ただ、女性が夫の死後ひとりで苦労して子供を育て再婚しないという大筋だけ見ると、まるで吉永小百合主演映画のようで、“貞女二夫に見えず”(佐藤健を振るとは!)という物語の方が、まだ日本では受け容れられやすいのかなぁとも。

■5位『dele』

 スマートフォンなどのデジタルデータを持ち主が死んだ後に削除するという職業はまだ一般的ではないし、同じ制作陣の『BORDER 贖罪』(テレビ朝日)のように主人公が闇落ちするようなスリルもなかったからか、人気が“跳ねた”感触はなかったが、山田孝之と菅田将暉のコンビはドラマファン垂涎。ヒゲ面ではない“きれいな山田孝之”が早口でややオタクなプログラマー・圭司を演じ、菅田が心優しい青年・祐太郎の役。シャープな演技を見せる2人のやり取りを存分に堪能できた。33歳と25歳という年齢差があるがゆえに、最終話、既得権益を守る大人たちを倒そうとする若き祐太郎と、もはや世の中の不条理を受け入れかけていたが祐太郎に触発されて立ち上がる圭司という関係性に変化し、そこが最高にエキサイティングだった。山田が車椅子に座ったままやってのけたアクションも他では見たことのないもので新鮮だった。

■6位『平成細雪』

 真の意味で大人の鑑賞に耐えうる作品。美意識にあふれた谷崎潤一郎の『細雪』(中央公論社)が成立するギリギリの時代、バブル崩壊直後の平成4年を舞台にし、船場の豪商の娘として生まれた四姉妹の物語を華麗な衣装で彩った。長女役の中山美穂にはやはりこういったお姫様のような役が似合うし、次女役の高岡早紀も他のドラマでは悪女要素が強かった中、ここではお嬢様の鷹揚さとかわいらしさだけで勝負。三女の伊藤歩、四女役の中村ゆりも光っていて、女優を活かしたという点では今年ベスト。男性キャストも絶妙な配役で、「おじさんじゃない」とディスられる三女のお見合い相手として松尾スズキが登場した瞬間には爆笑してしまった。『京都人の密やかな楽しみ』(NHK BSプレミアム)で関西独自のカルチャーを描き出した源孝志監督らしい文化の香りと、脚本・蓬莱竜太の緩急自在な心理描写に拍手。

■7位『昭和元禄落語心中』

 『デイジー・ラック』『透明なゆりかご』など、漫画原作を実写でうまく昇華してきたNHKドラマ10が、2018年の最後に本気度120%のすごい作品をぶっこんできた。八雲(菊比古)役の岡田将生、助六役の山崎育三郎、与太郎役の竜星涼が難しい古典落語に挑戦し、3人とも攻めに攻めた芝居を披露。特に岡田は老年期のパートが長く、老けメイクをしてこれまでのイメージを覆す熱演だった。人気キャストがこれまでの殻を破ってギラギラした顔を見せてくれるのは、なんとも楽しいもの。長編の原作コミックからそのエッセンスを抽出した羽原大介の脚本、BL(ボーイズラブ)要素の強い菊比古と助六の関係を美麗な映像で彩ったタナダユキの演出にもうなった。落語の魅力を伝えた本作から、“落語の神様”古今亭志ん生が登場する2019年大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』(NHK)へとつながり、“おあと”もよろしいようで。

■8位『トドメの接吻』

 もし、「キス」「タイムリープ」「復讐」で三題噺を書けと言われても、こんなに上手くは作れない。いかにも漫画原作がありそうなストーリーをドラマオリジナルで見せた快作。主人公は山崎賢人演じるホストの旺太郎。門脇麦演じる宰子が“サイコ”なストーカーのように登場し、彼の唇を奪って絶命させるが実は……というどんでん返しが見事。キスすると1週間前の時間軸に戻れるというゲームリセットのような設定を巧みに使った脚本・いずみ吉紘の手腕が光る。ティーン向けのドラマで『花より男子』シリーズ(TBS)のような王道ラブコメはやり尽くされた感があるので、こういったダークなラブストーリーも定期的に制作し若い視聴者を呼び込んでほしい。山崎はこのクズ男役で新境地を開いた感あり。7月クールの『グッド・ドクター』(フジテレビ)では正反対の役柄を演じ、2018年は飛躍の年だったのでは。

■9位『女子的生活』

 今年は『隣の家族は青く見える』(フジテレビ)、『おっさんずラブ』、『弟の夫』(NHK)とLGBTを描くドラマが多く放送され、「そろそろ同性間の恋愛や結婚をタブー扱いするのやめようよ」ぐらいのスタンスで周知が始まったと思いきや、先陣を切った本作のぶっ飛ばし方は半端なかった。主人公は男として生まれたが女として生きるみき(志尊淳)。その設定を理解するかしないかのうちに、みきがビッチな女と関係したり、実家のある田舎に帰って女の姿で親兄弟と対面したりと、飛ばす飛ばす! そのドライブ感によって、LGBTのT(トランスジェンダー)1文字だけでは捉えきれない複雑でリアルなセクシャリティを描き、興味本位の視線や安易な同情を拒んでいた。しかし、この役を真摯に体現した志尊が、その直後に朝ドラ『半分、青い。』で「僕ってゲイだから」と安易にLGBTをカテゴライズするような役を演じていたのを見たときは、複雑な気持ちになってしまった。

■10位『生田家の朝』

 12月に情報番組『ZIP!』内で放送された“朝ドラ”。プロデュースと主題歌が福山雅治で、脚本はバカリズム。「日本テレビで朝ドラを作ろう!」という企画が持ち上がった段階では、北島三郎のマネージャーの苦労話など、NHKの朝ドラに近い実録的な感動物語も検討されていたが、この路線にして大正解。郊外の一軒家に暮らすごく普通の4人家族の朝のやりとりという内容に落ち着いた。コント作家であるバカリズムらしさを活かし、かつNHKとは異なる新しい朝ドラを提案するならこのスタイルしかない。子持ち家庭あるあるのネタ選びがうまいし、10分未満という短さも今の視聴者のニーズにぴったり。今回はテストケースだと思うが、アメリカのシットコムのように1話完結型の朝ドラをぜひレギュラー放送してほしい。

※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記

(小田慶子)

アプリで読む