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SHERBETSはなぜ“宝物”なのか 結成20周年記念オールタイムベスト盤から麦倉正樹が考える

リアルサウンド

18/10/15(月) 18:00

 浅井健一率いるSHERBETSが、結成20周年を記念したオールタイムベスト盤『The Very Best of SHERBETS 「8色目の虹」』をリリースする。CD3枚組+DVDで構成される初回生産限定盤と、CD1枚の通常盤の2フォーマットでリリースされる本作。初回盤の3CDは、初期・中期・後期に分けて、メンバー選出による、それぞれの時代の名曲が収められている。そこで本稿では、そのベスト盤のラインナップを眺めながら、改めてその歴史をひもときつつ、SHERBETSというバンドが辿ってきた道のりと、なぜSHERBETSが“宝物”と称されているのかについて、考えてみたい。

(関連:浅井健一が語る、曲作りのスタンス「心に力が入ると駄目、素直が一番いいよ」

 BLANKEY JET CITYの浅井健一が、自身のソロプロジェクトとして立ち上げた“SHERBET”を母体として、1998年、浅井健一(Vo/Gt)、福士久美子(Key/Cho)、仲田憲市(Ba)、外村公敏(Dr)の4人で、正式にスタートした“SHERBETS”。SHERBET名義ですでに発表されていた名曲「水」をはじめ、当初はBLANKEY JET CITYの言わば“オルタナティブ”として、浅井の持つ詩情や繊細さにフォーカスを当てたプロジェクトと目されていたSHERBETSだったが、2000年にBLANKEY JET CITYが解散して以降は、浅井のメインプロジェクトとしてアグレッシブに活性化。とりわけ2001年には、「SANLIN BUGGY」、「カミソリソング」、「Black Jenny」という、いずれもロック色の強いシングルを立て続けにリリースするなど、ロックバンド=SHERBETSの名を改めてシーンに知らしめることになった。今回の初回盤ベストの「DISC1」は、この時期の楽曲が中心となっている。

 しかし2002年、浅井は渡辺圭一(Ba)、池畑潤二(Dr)と3ピースバンド、JUDEを結成。それに伴い、SHERBETSは、しばしのあいだ“冬眠”状態に入るのだった。そして、2005年、再び活動を始めたSHERBETSは、それから約3年のあいだに、4thアルバム『Natural』をはじめ、3枚のアルバムをコンスタントにリリース。それらはいずれも、すでに確立しつつあったSHERBETSの世界観を、より深化させる方向のアルバムになっていたように思う。というのも、この時期、浅井はSHERBETSと並行して3ピースのロックバンドであるJUDEを、そして2006年からは、パーマネントなメンバーを置かない自身のソロ名義での活動をスタートさせており、それら多彩なアウトプットを持つ状況のなかで、ソロで音楽制作も行っている福士久美子をはじめ、実はいわゆる“王道ロックバンド”とは異なるルーツとプレイヤビリティを持ったSHERBETSのメンバーが生み出す音楽の独自性ーー換言するならば、「この4人でしか生み出せない音楽」を、深く探るような時期だったのではないだろうか。今回の初回盤ベストの「DISC2」には、主にこの時期の楽曲が収められている。

 そんなSHERBETSに、ある変化が起こったのは、2011年のことだった。ファンクラブの会報誌で突如SHERBETSの解散を発表、その1カ月後にそれを撤回するという事件が起こったのだ。今では笑い話のように語られているこの騒動だが、それは不定期ながらも続いてきたSHERBETSというバンドが、いかに奇跡的な存在であるか(SHERBETSは、現在に至るまで、どのタイミングにおいても、“続けること”を目的としたことは、一度もないバンドなのだ)を、メンバーはもちろん、リスナーにとっても改めて感じさせるような出来事だった。一度は解散の方向へと傾きかけたSHERBETS。それを救ったのは、紛れもないその“音楽”だった。かくして2011年にリリースされた7thアルバム『FREE』以降、SHERBETSは、「その世界観を掘り下げる」と言うよりも、さらなる可能性を求めて、これまでとは異なるタイプの新しい音楽を、積極的に生み出すようになった。その時期から、現時点においての最新作である10thアルバム『CRASHED SEDAN DRIVE』までの楽曲をセレクトした「DISC3」。その冒頭に置かれた新曲「愛が起きてる」は、そんな彼らの“今”を、いみじくも表した一曲となっている。結成当初はあまり感じられなかったニューウェイブ的なアプローチや大胆なダンスビートの導入などーーそう、近年彼らは、またしてもさらなる活性化の時期を迎えているのだ。

 日本のロックシーンに燦然と輝く、もはや“伝説のバンド”と言っていいだろう、BLANKEY JET CITY。しかし気がつけば、浅井自身にとってSHERBETSは、その活動時期よりも遥かに長い月日を共にしているバンドということになる。結成から20年となった今もまだ、終わりなき可能性と、広がり続ける世界……そして何よりも、浅井健一、福士久美子、仲田憲市、外村公敏という、この4人で見たい景色が、きっとそこにはあるのだろう。それは、とても素敵なことのように思える。無論、リスナーにとっても。それにしても、今回のベスト盤に冠せられた“8色目の虹”とは、いかにもSHERBETS的なタイトルだ。一般的に7色とされている虹だけど、もしそれが仮に8色だとするならば、それは何色になるのだろう? その色が具体的に何を指すかは問題ではない。大事なのは、それを想像することによって生まれる“詩情”なのだ。 “アイスクリーム”でも“ソルベ”でもない“シャーベット”という不思議な語感を持った言葉が放つ、ひんやりとした美しさのようなもの。“オーロラ”、“シベリア”……彼らが好むのは、いつだってそういう言葉であり、SHERBETSの作品を頻繁に彩ってきた水色のパステルカラーもまた、同じように豊かな詩情を喚起させるものなのだろう(浅井自身の手によるイラストも)。

 そう、「8色目の虹って、どんな色なんだろう?」ーーその想像力こそが、SHERBETSというバンドを駆動するエネルギーであり、この20年間、変わることなくリスナーを惹きつけている理由なのだ。「見たことがない色を見たいから」、「それをあなたと見たいから」……言葉にすると少々陳腐かもしれないけれど、SHERBETSというバンドは、そんな純粋な思いを満たしてくれる、数少ないバンドのひとつなのだと、今回のベスト盤を聴いて改めて思った。浅井がSHERBETSを“宝物”と称するのも、恐らくそういった理由からなのだろう。〈思い出は 雪だから/透き通った水へ帰ってゆくだけ/伝えなくちゃ/すなおなその気持ちを〉。今は、その20周年を率直に祝福したいと思う。

■麦倉正樹
ライター/インタビュアー/編集者。「smart」「サイゾー」「AERA」「CINRA.NET」ほかで、映画、音楽、その他に関するインタビュー/コラム/対談記事を執筆。

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