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『まんぷく』菅田将暉、安藤サクラから“人徳”を学ぶ 人との交流において光る秀逸な演技

リアルサウンド

18/12/29(土) 6:00

 第二子の幸が生まれたときのこと。福子(安藤サクラ)たち家族はもちろん、東(菅田将暉)もまた同じくらいに感動していた。「こんな経験初めてです」。そして、すぐさま東京へ戻り、萬平(長谷川博己)に幸の誕生を伝えに行った。思えば、東は『まんぷく』(NHK総合)に登場して以降、福子たちと幾度となく喜怒哀楽を共有してきた。福子たちに幸せな出来事が起これば、東もまた心から喜び、腹立たしいことが起これば、同じように憤ってきたのだ。それは、まるで彼も立花家や幸田家の一員であるかのようだった。

参考:菅田将暉、ギャップの演技で本領発揮! 弁護士・東の成長も『まんぷく』の見どころに?

 どうして、東はかくも福子たちに寄り添ってきたのだろうか。

 ダネイホンのおかげで東の妹は救われたという。この事実も大きな理由の一つであることは間違いない。だからこそ、萬平を自由にしたいという思いは強かった。ただ、その思いをさらに強くしていたのは、彼なりの“不条理なことへの憤り”もあるのかもしれない。萬平たちに次々と降りかかってくる困難も“不条理なこと”の一つである。あるいは、ダネイホンが出てくるまで、妹が栄養失調で苦しむことになったことも、一つの“不条理”なことと言えよう。戦後という激変期の中で、日本人は多かれ少なかれ、様々な“不条理”にさいなまれてきた。それは、東京帝大を出た弁護士であろうと例外ではないのだ。

 その点、実は東京財務局の増岡(菅原大吉)たちも同じなのだろう。しばしば萬平たちに多くの難題を突き付けてきたわけであるが、作中では増岡の本音が零れ出るシーンもあった。進駐軍の言いなりになることをぼやく部下に対して、「俺だってこんなクソみたいな仕事はしたくないさ!」と言ったり、進駐軍との電話での会話で「そもそも彼(萬平)を逮捕したのが間違いだったんだ!」と怒鳴ったりしていた。彼らもまた、“不条理”に押しつぶされそうとしていたのかもしれない。

 そして、東が福子たちに寄り添おうとするもう一つの動機は、福子たちの“人徳”にあるのだろう。今週の第73話で、福子たちの周りにはいい人ばかりがいる理由として、「それはお二人の“人徳”ですよ」と話していた。例えば、ハナちゃん(呉城久美)が福子たちに援助をしてくれたのも確かにその通りである。東の言う“人徳”はきっと他の人々にも当てはまる。久しぶりに登場した恵(橋本マナミ)や牧(浜野謙太)、野呂(藤山扇治郎)も同じである。恵や牧が今週の放送において、「味方」と言ってくれたのも、それは福子たちが持つ“人徳”があってこそ。そういう意味において、東自身もまた二人の“人徳”に魅せられた人間なのだ。今週の最後の放送で、東は「たくさんのことを学ばせていただきました」と礼を言っていた。その感謝の気持ちは、ひょっとすると“人徳”が人と人を結びつけることを学べたことなのかもしれない。

 初めて登場したときはどこかおとなし気な印象があったものの、東の弁護士としての意地は凄まじいものであった。例えば、財務局の増岡と電話でやりあうときの彼は、実に堂々としていた。「訴えを取り下げないなら裁判で争います。こっちは何年かかってもいいんだ!」と怒鳴る増岡に対して、「こっちもです!」と語気を強めて言い返す。放送の中で、人のために汗を流して、寄り添おうとする東の姿勢がよく光っていた。今年の良作ドラマの一つである『dele』(テレビ朝日系)では、菅田将暉が演じる人物はそれぞれ異なる境遇にある人間と出会い、ときにひたむきに向き合ってきた。様々な事情がある人物に向き合う芝居は菅田の大きな武器の一つであるようだ。『まんぷく』と『dele』とではシチュエーションや演出、菅田のキャラクターなどを含めて大分異なるものの、人との交流で生まれる温かみを伝える点において、菅田の芝居は秀逸である。

 さて、早くも10月の放送が始まって以降、すでに折り返し地点に到達した『まんぷく』。翌年からは新たなキャラクターが続々登場し、さらに『まんぷく』ワールドを盛り上げていく。平成最後の朝ドラを1月からも楽しんでいきたい。(文=國重駿平)

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