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ぴあ

実は隠れた名脇役 『半分、青い。』の“電話”は永野芽郁と佐藤健を繋ぐ重要な役割?

リアルサウンド

18/8/29(水) 6:00

 最近の“朝ドラ”ことNHKの連続テレビ小説は、明治から昭和初期を生きた女性の半生を描くことが多かった。そのため、主人公は戦争から何かしらの影響を受けることはほぼ確実で、「ぜいたくは敵だ」とされていた時代背景も伴い、電気を使ったテクノロジーとはほぼ無縁な物語が展開されている。

 一方現在放送中の『半分、青い。』は、1971年生まれの楡野鈴愛(永野芽郁)が主人公。70年代はカラーテレビの普及が加速し、80年代はレコードからCDへの転換、そして90年代にはインターネットが家庭に参入し始めるなど、鈴愛が人生を歩むとともに、電化製品の普及や進化が進んでいくゆえ、セットにある小道具の時代の移り変わりも本作の隠れた魅力の1つとなっている。

 そんな時代を突っ走る本作のなかで、最も活躍しているテクノロジーと言っても過言ではないのが“電話”だ。日本で最初に電話が開通したのは1890年のこと。それからの一般家庭への普及はかなり時間がかかったもので、日本の半分以上の家庭にある状態になったのは1975年に入ってからだったという。つまり、鈴愛が怒涛の人生を歩むとともに、電話も数々の形態を経てぐんぐんと成長していく。

 もはや当たり前過ぎて説明するまでもないが、どんなに遠く離れていても、相手の呼吸を感じられるのが電話の最大のメリット。面と向かったときのような温もりは感じられないものの、通話は顔と顔を合わせないからこそ本音を打ち明けることができることもある。そんな魔法の力を持つ電話は、鈴愛と律(佐藤健)の関係を繋ぐツールとして活躍してきた。

 第123話でも回想として一瞬登場したが、鈴愛をはじめとした梟会は、子供の頃に川と川を挟んだ大きな糸電話を作ったことがある。川を挟んで、「鈴愛~」「律~」と名前を呼び合う2人を見て、ブッチャー(大竹悠義)は「なんやそれ、愛の告白?」とツッコんでいたが、2人の電話を介した関係は思い返してみればここから始まっていたように思う。

 これでもかというくらい一緒にいる鈴愛と律。それでも、何度か離れ離れになる瞬間はあった。学生時代で言うと、律の大学受験期。鈴愛は律から、受験勉強に専念するために「前みたいに遊べなくなる」と第20話で告げられる。そう言われたものの鈴愛は、律の家に相変わらず押しかけていたので、距離感はあまり変わらなかったのだが、会う機会があったのにも関わらず、第23話で律は鈴愛に志望校変更を打ち明ける際、電話で告げることを選択する。

 その理由は、鈴愛がショックを受けるかも知れないという律のちょっとした気遣いだった。狭い梟町全体の期待を背負った気になっていた律は、東大から京大へ志望校を変えることに高いハードルを感じていたのだろう。どちらも名門とはいえ、最初に掲げた目標を変更するのは、エベレストくらい高いプライドを持つ律にとっては少ししんどいこと。親しいからこそ失望させたくないという律の優しさと臆病さが、あの電話のシーンには表れていた気がする。(ドアノブ、トースターなんでもカバーを付けたがる昭和あるあるに沿って、鈴愛の家の電話に花柄のカバーがついているのは芸が細かい)

 「これは景気づけの電話だ」。鈴愛だけでなく、律の将来に大きすぎる期待をかける母の和子さん(原田知世)にも、志望校変更を伝えなければならなかった律。あまり感情を顔に出さない律とはいえ、さすがに母の期待を裏切るのは怖かったのだろう。それまでは鈴愛が一方的に律を頼りにしていたように見えたものだが、ここぞというときに鈴愛の声が聞きたくなるというのは、やはり律も鈴愛に寄りかかっているようにも見える。

 それから高校を卒業し2人は別々の環境で生活を始めるものの、電話は律を呼び出す“あの笛”の役割も担い、鈴愛と律の関係はまだまだ続いていく。秋風ハウス時代の第52話では、清(古畑星夏)との再会の喜びを伝えるために律が鈴愛に電話をかける。しかし鈴愛は律の話そっちのけで、正人(中村倫也)をデートに誘うと宣言し、切った。今ではLINEやメールがあるからこそ当たり前になった小さな報告までをも、鈴愛と律は電話でわざわざ交わし合う。たとえそれが噛み合っていなかろうと、律と鈴愛の共依存ともとれる関係を繋いでいたのは、やはり電話の力が大きいのだろうと思う。

 しかし、鈴愛と律には一度大きな別れが訪れる。鈴愛が清に嫉妬心から、「律はわたしのものや」と言ったことで、律はもう幼なじみのままではいられないと別れを告げたのだ。それから5年後、2人には一度プロポーズ事件という大きな出来事が降り掛かったものの、今までのような距離には戻れず、次に律と連絡を取ったのは、携帯電話が薄くなった頃だった。

 漫画家としてスランプに陥り、締め切りの朝を迎えた第79話の鈴愛。髪はボサボサ、目の下にはクマ、描きかけの原稿を前に呆然としていた鈴愛の携帯に着信音が鳴る。律のタイミングは鈴愛からのSOSを受け取ったのか、それともやはり第78話で鈴愛が大阪の律の家を訪れたのがバレていたのか……。真相は分からぬが、この電話がきっかけで鈴愛と律の止まっていた時計は、ゆっくりと歯車を回し始める。

 涼次(間宮祥太朗)と離婚し、梟町に戻った鈴愛は、和子さんのために帰ってきていた律と再会を果たす。幸か不幸か。iPhone3Gが発表された2008年には、ほとんどの人が携帯電話を持っている時代。鈴愛の律への依存は、テクノロジーの進化とともに加速し、妻がいるのにも関わらず、抗議から依頼まで、すぐに電話をかけてしまうようになった。固定電話からも携帯電話からも律を呼び出す鈴愛には、少々驚かされてしまうが、その手軽さが鈴愛を暴走させるのは、分からなくもない。

 ただ、鈴愛の律依存を加速させる忌まわしき機器と化してしまうことはあれど、糸電話のように2人の電話を使ったアイデアは誰かを笑顔にさせることもある。スピーカーフォンを搭載したお悩み相談犬“岐阜犬”だ。「離れている場所にいる誰かと誰かを繋ぎたい」そのスピリットは、鈴愛と律たちが糸電話の大実験を行った頃から変わっていないのが微笑ましい。仙吉カフェの看板犬“岐阜犬”は、病気で家にこもっている和子さんが“中の人”を務めた。症状が落ち着いて元気な時に、人の悩みを聞いて優しく答える。家にこもりっぱなしの和子さんにとって、体力の使う仕事ではあったものの、毎日の楽しみになったことだろう。

 また、“岐阜犬”は、これまで面と向かって言えなかった律が、和子さんへ涙ながらに感謝の気持ちを伝えた名シーンを生み出したきっかけともなった。鈴愛と律の間にある電話は、少々ネガティブな役割に回ってしまうことはあれど、2人が生み出した電話を使った発明品は、鈴愛と律の周りの人に幸せを提供してきた。

 「高度成長期の終わりから現代までを七転び八起きで駆け抜け、やがて一大発明をなしとげる」というあらすじで始まった『半分、青い。』。鈴愛と律の間に電話が存在していたのは偶然にしろ、40年近くの付き合いのある2人が生み出すアイデアと絆は、誰かのために役に立つのなにかを生み出すかもしれない。(阿部桜子)

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