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『いだてん』阿部サダヲの魅力が全開! 第一部とガラリと変化した第二部の猛スピード展開

リアルサウンド

19/7/1(月) 12:30

 『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(NHK総合)の第二部となる第25回「時代は変る」が、6月30日に放送された。第二部の主人公は、東京にオリンピックを呼ぶ男・田畑政治(阿部サダヲ)。そそっかしくて落ち着きのない男だ。第一部の主人公・金栗四三(中村勘九郎)が陸を駆ける「いだてん」なら、政治は「口が“いだてん”」。だが、政治の水泳にかける情熱は、四三のマラソン愛に決して引けをとらない。そんな政治の人柄が、猛スピードな展開からひしひしと伝わる回となった。

参考:『いだてん』秀逸な「タイトルバック」はいかに生まれたか 映像作家・上田大樹に聞く

 関東大震災の翌年、大正13(1924)年の春、東京帝国大学を卒業した政治が朝日新聞社の入社試験を受ける。朝日新聞社社長・村山龍平(山路和弘)と政治部長・緒方竹虎(リリー・フランキー)の目の前で、政治は長々と水泳について語り続けていた。早口でまくし立てる政治を見て呆気にとられる2人。彼らは「好きなスポーツは何か」と聞いただけなのだ。阿部は公式サイトのインタビューで、政治について「考えるより先に言葉が出てしまっているような人」と答えている。水泳への溢れんばかりの情熱が、政治の語りたい欲求を優先してしまったのだろう。緒方は政治を記者に向いていないと判断。政治は頭に口が追いついておらず、字も汚い。だが社長には気に入られ、朝日新聞社に入社することに。この時点で、政治の暑苦しいほどの情熱には人の心を動かす力があるのだということがわかる。

 何事にも本音でぶつかる政治。スポーツ記事欄に陸上選手ばかりがデカデカと掲載されることが気に食わない政治は、「ストックホルムから3大会も出てだな、メダルに手も届かん陸上なんてな、恥さらしだ、やめたほうがいい」と言い放ち、同僚・河野一郎(桐谷健太)と衝突する。パリオリンピックの帰国報告会では、3度目のオリンピック出場を果たすも棄権となった四三らに「体協の陸上びいきは眼に余るものがある」と言葉をぶつけ、「嘉納治五郎(役所広司)名誉会長の引責辞任を求める」とまで言ってのけた。政治の発言は時に無礼で、当然ヤジが飛ぶ。だが政治が言いよどむことはない。本心を話して何が悪い、と言わんばかりのまっすぐさだ。このまっすぐさは四三のマラソン狂に通ずるものがある。堂々とした阿部の演技がとても魅力的だ。

「何が逆らわずして勝つだ、逆らってでも勝て、バカヤロメ」

 早口でわめく政治を見て思わず笑ってしまった治五郎に、嘉納治五郎本人だとは知らずつっかかる政治の姿は面白い。阿部の演技派な一面と、コミカルな一面が存分に楽しめるシーンだ。治五郎に掴みかかった瞬間、政治は一本背負いを決められてしまう。四三から「そちらが嘉納先生ばい! こんバカもんが!」と一喝された政治の「え、なに」「割と大きいんですね」と困惑する様子に、思わず笑ってしまった視聴者もいるのではないだろうか。

 ドラマ終盤でも、水泳のために突っ走る政治の姿が映し出される。オリンピック出場者数をめぐって勝手な主張を繰り返す政治たちに体協会長・岸清一(岩松了)は業を煮やす。「金も自分で集めてきたらどうだ、え、渡航費、国からぶんどってきたら、20人でも30人でも連れて行くさ!」と怒鳴る岸の言葉に、政治は闘志に火がついたような表情を浮かべた。「上等だバカヤロメ!」と吐き捨てると誰よりも早く行動に出る政治。水泳のために突き進む政治のワクワクとした表情は印象に残る。その後、政治は大蔵大臣・高橋是清(萩原健一)に直談判し、オリンピック特別予算を手に入れた。どのようにして手に入れたかは次週のお楽しみだ。

 ここまで、かなりのスピードで描かれた第25回。政治の凄まじい早口とせわしない動き、第一部とは全く違うストーリー展開に唖然とした視聴者もいるかもしれない。だが政治の大胆さ、行動力の早さを視聴者に伝えるには効果的な演出だったのではないだろうか。

 また第二部からガラリと変わったオープニングにも注目したい。今までは四三がハードル走のように橋を飛び越えていたが、政治はバタフライのように大きく肩を回し、水へ飛び込むようにして橋を飛び越えていく。時代が変わり、2人目の主人公へバトンが渡されるような演出も。真正面をじっと見つめる政治に、隣に映る四三が視線を向けるのだ。時代の流れと共に色づいていく背景の中を、こちらに向かって颯爽と歩く政治の姿は、昭和という激動の時代を駆け抜けることになる政治の物語を想像させるものだった。挿入される当時の映像は陸上競技から水泳へ。モチーフは足袋から聖火に変わった。だが、政治もまた「いだてん」だ。日本人初のオリンピック選手がいて、日本にオリンピックを呼んだ男がいる。「時代は変わる」。ガラリと変わった物語の今後に期待が高まる。(片山香帆)

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