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中村勘九郎と生田斗真、オリンピックに向けて“同志”に 『いだてん』舞台はストックホルムへ

リアルサウンド

19/2/18(月) 12:00

 『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(NHK総合)第7話。日本選手団監督として就任した大森兵蔵(竹野内豊)の「金があるのに行けない三島に、行けるのに金がない金栗か」という台詞にもあるように、金栗四三(中村勘九郎)と三島弥彦(生田斗真)の対照的な立場が印象的な回となった。

参考:生田斗真、『いだてん』弥彦役で真骨頂を発揮 “アツさ”と“上品さ”を併せ持つキャラが話題に

 嘉納治五郎(役所広司)の口車に乗せられて自費で渡航費を用意することになった四三。四三はオリンピック出場のために、兄・実次(中村獅童)に資金援助の手紙を出した。オリンピックのエントリーフォームに名を連ねた四三と弥彦は、オリンピックに向けて英会話や食事マナーを学ぶことになる。貧しくとも自分を応援してくれる家族をもつ四三と、どこか冷めきった親子関係を感じさせる弥彦。対照的な2人がオリンピックに出場する日が刻一刻と迫っていた。

 「千八百円」という当時の大金を自費で出すことになった四三は、藁をもすがる思いで兄・実次に手紙を出した。いっこうに返ってこない返事に不安を募らせる四三だが、このまま返事がなければ学校を休学し借金してでも参加する意思を見せる。所属する徒歩部顧問・可児徳(古館寛治)に「そんなしてまで、君、オリンピックに出たいのかね」と問われると、まっすぐ可児を見据え「はい」と返事をする。その四三のまっすぐな返答からは、オリンピック出場への意気込みが日に日に濃くなっているのが伝わってくる。兄からオリンピック出場に関する前向きな返事をもらったとき、四三は子どものように顔をくしゃくしゃにして涙した。

 中村は、走ることに対して純粋な思いをもった金栗四三という人物を真摯に演じている。不安げな表情も、まっすぐな表情も、涙する表情も、笑顔も、全ての演技に四三の「走りたい」という純粋さが感じられる。三島家の女中・シマ(杉咲花)に「10里も走るってどんな気持ちですか」と問われたとき「いっちょうわからんです」とはっきり答える四三。「わからんけん、走っとっとです」というシンプルな回答は、シマを困惑させたが、金栗四三の“いだてん”らしさを象徴する回答でもある。

 一方で、金があるのに行けない弥彦も治五郎の口車に乗せられたと言えよう。天狗倶楽部の弥彦の闘争心をくすぐるような記事を目の前で読み上げられることで、頑なにオリンピックへは行かないと答えていた彼の考えが変わる。ただ、エントリーフォームにサインするも、家族への説得は完璧ではないようだ。海外の食事マナーを学ぶことになった一行は、弥彦の住む豪邸を使うことになった。だが、三島家では弥彦の母・和歌子(白石加代子)が常に睨みを利かせているし、兄・弥太郎(小澤征悦)はオリンピック関係者に見向きもしない。弥彦も「母は兄にしか興味がない。兄は金にしか興味がない」と話し、三島家の冷めきった親子関係が伝わる。しかし弥彦が趣味の写真で四三の晴れ姿を撮影した際、彼が現像する写真の中には母親の姿を切り取ったものもあった。母の写真を見つめる弥彦の表情は決して冷めきったものではなく、むしろ家族を愛おしく感じている表情だ。

 生田は、天狗倶楽部に所属する弥彦の暑苦しさをイキイキと演じつつ、家族に対する複雑な感情を繊細に演じている。四三に対してフレンドリーに接しながらも、家族から応援されている四三に発した「羨ましいなあ」という言葉は紛れもなく彼の本音だろう。日々自信家な一面を見せている弥彦が、笑顔を“つくってから”この言葉を発したようなこのシーン。弥彦の抱える切なさが伝わってくる。

 四三と弥彦が大日本体育協会で正式に顔を合わせたとき、笑顔で握手を求めた弥彦とは対照的に、四三は治五郎と接するときに似た緊張感をもって彼と接する。しかし四三は、オリンピック出場に向けて食事マナーや英会話などを必死に学ぶ中で弥彦と打ち解けていったのだろう。暗室で弥彦の会話した際には、共にオリンピックに出場する同志に対する距離感に変わっていた。家族との関係や経済状況など、さまざまなものが対照的な2人だが、日本人初のオリンピック選手として盟友となる2人でもある。今後彼らはオリンピック出場に向けて長い旅路に出る。その旅路でどのように関係を深めていくかが気になるところだ。

※古舘寛治の「舘」の字は、正しくは、外字の「(※舎官)」

(片山香帆)

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