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井之脇海、池田エライザ、寛一郎、旬の若手俳優が集結! 『青と僕』のスリリングな緊張感

リアルサウンド

18/7/30(月) 6:00

 ある人にとっては永遠に輝き続け、ある人にとっては思い出したくもないような10代の頃の「青き」日々。しかし、それは果たして、本当にそうなのだろうか。輝き続ける青春の遠景には、当時の自分が気づこうとしなかった誰かの痛みが、思い出したくもない記憶の片隅には、誰かの優しさがあったのではないか。そう思ったときに、私たちの「記憶」は、足元からグラグラと揺らぎ始めるのだった。

参考:CMを短編映画に変えてしまう存在感! 文学的香りを放つ俳優・井之脇海

 月曜の深夜、フジテレビ「ブレイクマンデー24」枠で放送中のドラマ『青と僕』(全6話)が、静かな注目を集めている。昨年、同枠で放送され好評を博したドラマ『ぼくは麻理のなか』の制作チームが贈る“時空を超えた青春ミステリー”という触れ込みの一作だ。

 その物語は、現在はITベンダーの会社に勤務している「ぼく」のもとに届いた、一通のメールから本格的に動き始める。「自分のことを忘れるなんて許さない」。その送り主は、5年前に謎の死を遂げた「あいつ」だった。なぜ、今? これは誰かの嫌がらせなのか。そして、「ぼく」は、高校時代の同級生「紫織」と、久しぶりの再会を果たすのだった。

 主人公である「ぼく」を演じているのは、今作が連続ドラマ初主演となる井之脇海。子役からキャリアをスタートさせ、黒沢清の映画『トウキョウソナタ』の出演をきっかけに役者を志すようになったという井之脇は、NHK連続テレビ小説『ひよっこ』でのコーラス教師役、大河ドラマ『おんな城主 直虎』(NHK)の小野万福役など、近年頭角を現しつつある、注目の若手俳優のひとりだ。

 平凡な高校生だった「ぼく」に、「お前、青いな!」と快活に声を掛け、いつしか行動をともにするようになる「あいつ」。太陽のような明るさを持ちながら、卒業後、謎の死を遂げる「あいつ」を演じるのは、昨年『心が叫びたがってるんだ。』、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』という2本の映画で俳優デビューを果たした寛一郎。現在公開中の映画『菊とギロチン』で、アナキスト・グループ「ギロチン社」のメンバーのひとりである「古田大次郎」役を好演したことも記憶に新しい、祖父に三國連太郎、父に佐藤浩市を持つことでも知られる気鋭の若手俳優だ。

 そして、そんな「ぼく」と「あいつ」と行動をともにしながら、「あいつ」が思いを寄せる同級生「紫織」役を演じるのは、押見修造の漫画を原作とする先述のドラマ『ぼくは麻理のなか』で堂々の主演を果たし、最新主演映画『ルームロンダリング』をはじめ、ここ数年はドラマに映画に引っ張りだこの女優、池田エライザである。このメインキャスト3人のアンサンブルが、まずはとても素晴らしい。

 瑞々しい高校時代と、どこか陰のある現在。そのあいだにあるのは、「あいつ」の死だった。それを境として、次第に疎遠となった「ぼく」と「紫織」が、5年経った今、一通の不審なメールをきっかけに、再び正面から向き合おうとする「あいつ」の死。けれども、お互いの記憶のなかにある、「あいつ」の印象は、どこか微妙にずれているのだった。

 高校時代は無二の親友と思っていた「あいつ」のことを、「ぼく」は果たして、どこまで本当に理解していたのだろうか。「あいつ」が死の直前、「ぼく」に見せようとしていたものとは何だったのか。日々の生活のなかで、いつしか記憶に蓋をするようになっていた青春時代の光と影が、ある種の懐かしさと激しい痛みとともに、「ぼく」の胸の内によみがえる。

 3人が無邪気に夢を語り合っていた高校時代と、突然訪れた「あいつ」の死、そして次第に疎遠になっていった現在という3つの時間軸を行き来しながら進んでゆく物語。「あいつ」は、なぜ死んだのか。そして、「ぼく」に不審なメールを送った人物は、果たして誰なのか。重層的に練り込まれた本作の脚本を担当するのは、『ぼくは麻理のなか』と同じく若手脚本家の下田悠子。その脚本監修として、岸田國士戯曲賞を受賞した、劇団ままごとの柴幸男がクレジットされているのも見逃せない事実だろう。さらに、その音楽を担当しているのは、意外にも今回が初の連続ドラマの劇伴起用となる牛尾憲輔(agraph)だ。

 それだけでも、「若手キャストとスタッフで、新しい形のドラマを生み出そう」という気概が窺える本作だが、個人的に何よりも注目したいのは、本作のチーフ監督を、サカナクションや水曜日のカンパネラ、Charaなどのミュージックビデオで知られる山田智和が務めていることだった。美しい映像表現であることはもちろん、そこにエモーショナルな躍動を刻み込むことのできる映像作家として、ミュージックビデオやCMの世界では、若手最注目の存在である山田。2016年には、二階堂ふみとコムアイが渋谷の街を駆け巡る、実験的なワンカット・ドラマ『トーキョー・ミッドナイト・ラン』(フジテレビ)を手掛けるなど、ミュージックビデオやCMだけではない映像表現にチャレンジし続けている彼にとって本作は、初めての連続ドラマ演出となる。さらに、そのサポートには、『ぼくは麻理のなか』を演出した、同じくミュージックビデオ出身の監督、スミスも名を連ねている。

 美しさのなかに、どこかスリリングな緊張感と、刹那のエモーションを秘めた映像によって切り取られる若者たちの群像劇。そこに、NHK連続テレビ小説『べっぴんさん』、そしてドラマ『女性的生活』(NHK)などで強い印象を残していた中島広稀、ドラマ『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)の“マロ”役として好印象を残し、映画『わたしに××しない!』のメインキャストにも抜擢されるなど、近年その存在感を増している金子大地といった若手俳優たちが加わりながら、さらなる謎と奥行きを増している物語は、早くも折り返し地点を迎えようとしている。

 「澄み渡る青、混じり合い群青。3人がどこまでも青く美しかったお話と、3人がどこまでも不器用で下手くそだったお話。10数年の時を行き来しながら紐解かれていく“とある事件”を、是非目撃して下さい」とは、池田エライザのコメントだ。それにしても、『青と僕』という一風変わったタイトルが示す「青」とは、果たして何なのだろうか。抜けるような空の青さと、吸い込まれる海のような青さを行き来しながら描き出される「青春の光と影」。物語の最後、彼らはそれを、どのように抱きしめようとするのだろうか。決して爽やかなだけはない「青き」日々の内実を、しかと見届けたい。(麦倉正樹)

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