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ぴあ

伊藤健太郎、有村架純を覗き込む“目の引力” 『コーヒーが冷めないうちに』で見せたニュートラルさ

リアルサウンド

18/9/27(木) 6:00

 映画『コーヒーが冷めないうちに』が公開中だ。出演は主演の有村架純を筆頭に、薬師丸ひろ子、吉田羊、松重豊ら実力派がズラリ。その中で好演を見せているのが、俳優の伊藤健太郎だ。2014年、ドラマ『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』(フジテレビ系)で本格的に俳優デビュー。順調に出演作を重ね、ステップアップを果たしてきた大輪が、今、開花のときを迎えようとしている。

■見る者を吸い込む、不思議な目の引力

 同作で伊藤健太郎が演じるのは、ヒロイン・時田数(有村架純)の相手役である新谷亮介。深い孤独を抱える数の心に寄り添い、喫茶店の中しか知らなかった彼女を外の世界へと連れ出すキーパーソンだ。

 伊藤健太郎の俳優としての最大の魅力は、目だろう。くりっとした黒目がちの瞳は、見ているこちらがいったい何を考えているのだろうと読み取りたくなる余白がある。目力とはまた違う。“引力”といった方が近いだろうか。自然と吸い込まれてしまう目だ。

 そんな印象的な目を使った芝居が同作でも効いている。主人公の数はその生まれ持った宿命から周りの人と距離を置いた暮らしをしているのだが、そこに初めて深く踏み込んでくるのが、伊藤演じる亮介だ。亮介の目は、不純物がない。眼差しに迷いがなさすぎて、つい他の人には話せないようなことも話してしまえる不思議な安心感がある。物語が進むにつれて、どんどん数と亮介の距離は近づいていくのだが、数を見つめる亮介の眼差しは慈しみに溢れていて、それでいて押しつけがましくなく、さり気ない。特に自分より背の低い数を、身を屈めるようにして覗き込む目が、背景の雪景色に負けないくらいイノセントで魅力的だった。

 こうした伊藤の目の魅力はこれまでの出演作でも存分に示されている。最も代表的なものを挙げるとすれば、『アシガール』(NHK)の羽木九八郎忠清だろうか。伊藤自身、顔立ちは非常に古風で硬派。それでいて決して粗野な感じはなく、むしろ年齢以上の落ち着きや品があり、涼やかな雰囲気を醸し出している。そんなビジュアル的魅力が戦国大名の跡取りという役どころにマッチ。その澄み切った瞳は、若君が聡明で凜々しい男性であることを台詞で説明しなくても表現しており、普段は決して感情表現の大きくない若君が、優しくくしゃりと目尻を垂らすさまに、多くの女性たちが劇中での呼び名そのままに「若君」と呼んで恋心を募らせた。語らずとも漏れ出る“目の引力”は、俳優・伊藤健太郎の大きな武器だ。

■少女漫画的キラキラに染まらない、ニュートラルな存在感

 また、もうひとつ映画『コーヒーが冷めないうちに』で伊藤健太郎が見せた秀逸な点に、“ニュートラルさ”がある。同作のような主人公が複雑な事情を抱えている作品の場合、相手役となる男性はどうしてもスーパーヒーロー的になりがち。だが、亮介はあくまで普通の大学生だ。そして、そこが亮介の魅力でもある。

 美大の仲間たちとつるんでいる様子は、どこにでもいる大学生そのもの。エッジの効いた役よりも普通の役を演じる方が難しい、と言うのはよく聞く話だが、伊藤はこの普通のさじ加減が抜群に上手い。もちろん年越しのキスシーンなど、思わずキュンとなる場面もあるが、亮介は決してキラキラの王子様でも、ピンチを救う無敵のヒーローでもない。上から手を差し伸べて引っ張り上げるのではなく、数と肩を並べて一緒に歩いていこうとする。穏やかだけど芯がある今時の男性らしい人物像に仕上がっていた。

 伊藤の魅力も、亮介のような“ニュートラルさ”にあると思う。メガホンをとった塚原あゆ子監督とは『私 結婚できないんじゃなくて、しないんです』(TBS系)でも現場を共にしている。このとき、伊藤が演じたのは、主人公・橘みやび(中谷美紀、高校時代は松井珠理奈)が長年片想いをしていた桜井洋介(徳井義実)の高校時代。女子人気の高い、いかにも少女漫画的なキャラクターだった。だが、伊藤が演じると過剰なキラキラ感は薄れ、互いに想いを寄せ合っているのに通じることがない関係に、20年前の高校生らしいじれったさが感じられた。

 これまでの出演作を見ても、非常にニュートラルだ。映画『ルームロンダリング』では挙動不審だがヒロインのために正義感溢れる行動に出るメガネ男子を、映画『デメキン』では仲間思いの暴走族総長を演じるなど、振り幅は広く、それでいて特定のイメージに偏っていない。今時感も、古風さも、自由自在。映画『コーヒーが冷めないうちに』でも序盤は美大生だが、年月の経過と共にサラリーマンとなる。そのとき、前髪を上げただけで、少年の面影を残したあどけない大学生だった亮介の印象がガラリと変わって驚かされた。クリエイターの視点から見たときに、伊藤健太郎という素材は、いかようにでも染めることができて、それでいて作品ごとに異なる魅力がにじみ出る、面白い存在なのだと思う。

 10月からは『今日から俺は!!』(日本テレビ系)で生真面目で義理堅いウニ頭の伊藤真司を演じる。監督を務める福田雄一とは本作で初タッグ。そのニュートラルな存在感が光る伊藤が、クセの強い「福田組」でどんな色を放つのか。ネクストブレイク俳優の躍進に期待したい。(文=横川良明)

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