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ジョナス・ブルー「Rise」はなぜ日本でヒット? その背景を考察してみた

リアルサウンド

18/8/2(木) 18:00

 2015年に活動を開始し、一躍トロピカルハウスシーンの人気アーティストとなったイギリス出身のDJ/プロデューサー、ジョナス・ブルー。彼の最新曲「Rise ft. Jack & Jack」が、日本でストリーミングサービスを発火点としたヒット曲となっているのをご存知だろうか。この楽曲は今年5月のリリース以降、LINE MUSICソングチャート、iTunesソングチャート洋楽、USEN洋楽チャートでトップを獲得し、Apple Musicでもトップ3にランクインするなど本国以上のチャート結果を記録。ストリーミングサービスの普及以降、各国のローカルなトレンドが可視化されて久しい音楽シーンにあって、日本ならではのチャートアクションがうかがえる曲になっている。この曲が日本でヒットをしている背景を考察してみたい。

 ジョナス・ブルーは2015年にトレイシー・チャップマンの1988年のヒット曲をトロピカルハウス風にリメイクした「Fast Car」をリリースすると、本国UKのチャートで2位を獲得。同チャートで11週連続トップ10入りを果たし、同年にはEDM界の人気フェス『Tomorrowland』にも出演して本国で人気アクトの仲間入りを果たした。続く2016年6月の2ndシングル「Perfect Strangers (feat. JP Cooper)」も、UKシングルチャートでの最高2位を筆頭に、ヨーロッパの主要国で大ヒット。この頃から日本でもShazam東京エリア・チャート(デイリー)で最高5位、主要ラジオチャートでトップ10入りするなど人気を広げ、J-WAVEを中心にラジオでオンエアされることで、次第に夏男=ジョナス・ブルーというイメージが浸透していった。とはいえ、この時点ではまだまだ「Rise」のヒットが想像できるような状況ではなかった。

Jonas Blue – Rise ft. Jack & Jack

 では、このヒットはどのように生まれたのか。まず考えられるのは、日本でのトロピカルハウスの定着だ。ジョナスが活動をはじめた2015~2016年はジャスティン・ビーバーが『Purpose』で同ジャンルを取り入れたことが話題となり、カイゴが1stアルバム『Cloud Nine』を発表したシーンの最盛期。日本でもこの時期にカイゴやトロピカルハウスには大きな注目が集まり、同ジャンルに特化したイベント「Tropical Disco」も始動。2017年にはその要素を取り入れたカルヴィン・ハリスの『Funk Wav Bounces Vol. 1』も一般層に広がった。と同時に、K-POPやJ-POPシーンの楽曲にトロピカルハウスが取り入れられたことも、このジャンルの定着を促した要因と言えるはず。BTSの2016年の楽曲「Save Me」を筆頭にBLACKPINK、SEVENTEENといった日本でも人気のK-POPグループが続々とトロピカルハウスを取り入れた他、2017年にはw-inds.の「We Don’t Need To Talk Anymore」やPerfumeの「Everyday」などもトロピカルハウスを取り入れてヒット。EDMのいちサブジャンルを越えて、むしろポップシーン全体の大きな影響源になったことが、息の長いシーンへの注目に繋がった。

 そうした日本でのトロピカルハウスの広がりを考えても、ジョナス・ブルーの楽曲は日本のリスナーとの親和性の高さが感じられるものになっている。EDMシーン全体を見渡しても、もともとAfrojackやTiëstoを筆頭にしたビッグルームハウス的なアーティストの楽曲が一般層にまで浸透するヨーロッパ諸国などに対して、日本の場合はむしろゼッドやアヴィーチー、The Chainsmokers、Galantisといった歌モノ要素も強いポップ・ミュージックとしてのEDMがより支持される傾向にある。ジョナス・ブルーの楽曲はまさにその系譜にある、歌の魅力を生かしたトロピカルハウスだ。また、彼の曲は初期のトロピカルハウスとは微妙に異なり、2016年の「By Your Side(feat. RAYE)」のように、2010年代初頭のフューチャーベースなどを起点に広がった奇抜なボーカルエディットなど、最新のクラブ・ミュージックの要素を取り入れたものにもなっている。フューチャーベース的な感覚はポップ・シーンに限って言えば欧米よりも韓国や日本などアジア圏で取り入れられることが多く、そうした意味でもジョナス・ブルーの音楽と日本のリスナーとの距離は近かったのかもしれない。ちなみに、ボーカルエディットはカイゴも2017年の2nd『Kids in Love』で大々的に取り入れて話題になった。

 そうした要素に加えて、彼が近年来日公演を積極的に行ない、クラブの現場でも人気を広げていったことも大きいだろう。2017年にはシングル「Mama”(featuring William Singe)」をヒットさせると、2017年10月には初来日して渋谷のCLUB CAMELOTでパフォーマンス。彼の登場前からジョナスがプレイするフロアを含む3フロアがすべてが満員状態になる盛況となった。その後はサブリナ・カーペンターとのコラボ曲「Alien」などをヒットさせ、2018年4月には、新木場のagehaで早くも2度目の来日公演を敢行。ここでもフロアが満員となり、各シングル曲のプレイ時には観客から大合唱が生まれるなど、日本での楽曲レベルでの認知も印象付けた。そうした来日公演を経て、いよいよ夏を目前に控える5月にリリースされたのが、この「Rise ft. Jack & Jack」だ。

 楽曲を聴いて感じるのは、今回の「Rise」が過去の楽曲以上に、ユースカルチャーならではの奔放なエネルギーをいっぱいに詰め込んだ眩い「サマー・アンセム」になっていること。海やビーチを思わせる清涼感たっぷりのピアノに加えて、ここではイントロから心奪われるフルートなども取り入れられ、彼の代名詞である夏っぽさが倍増している。ユニゾンやコーラスなどを駆使して楽曲を彩るJack & Jackのボーカルとジョナス・ブルーらしいトラックとが絶妙に絡み合う、キャリア屈指のキャッチーな楽曲だ。

 そして何より特筆すべきは、同曲のアコースティックVer.「Rise(Acoustic)」にも顕著だった、クラブ・シーンのプロダクションを取り去っても歌モノとしての高い魅力が感じられるソングライティング。これまでの彼の魅力をさらにアップデートした、会心の1曲に仕上がっている。それが自分のテイストを可視化して、最適解を教えてくれるストリーミングサービスを通して多くの人々に広がったことと、2017年のSpotify Japanで再生数年間2位を記録した ZEDD「STAY feat. Alessia Cara」のように「Rise」の哀愁を感じさせるメロディーラインがダンスミュージックの垣根を超えて、日本人に受け入れられやすいメロディーだったということもヒットの大きな要因ではあったのではないだろか。

 2018年に入っても、ドレイクの「One Dance」などから広がったダンスホールの再評価などを通して、夏っぽさを感じさせる音は引き続き世界の音楽シーンを席巻している。直近ではジャスティン・ティンバーレイクがサプライズリリースした新曲「SoulMate」も、「Summer starts now」というセリフを経てトロピカルハウスやダンスホールの影響をうっすらと感じさせる楽曲に仕上がっていたのも記憶に新しい。そうした意味でも「Rise ft. Jack & Jack」は、これからの季節、ますます注目を集めるかもしれない。本格的な夏が到来することに加えて、9月には「Ultara Japan」で今年2度目の来日公演も決定。彼の快進撃はまだまだ続きそうだ。

■杉山 仁
乙女座B型。07年より音楽ライターとして活動を始め、『Hard To Explain』~『CROSSBEAT』編集部を経て、現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。2015年より、音楽サイト『CARELESS CRITIC』もはじめました。こちらもチェックしてもらえると嬉しいです。

■発売情報&関連リンク
ジョナス・ブルー新曲「ライズ feat. ジャック & ジャック」発売中

iTunes
ジョナス・ブルー日本公式サイト

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