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増田俊樹が踏み出した音楽活動の第一歩 アニバーサリーイベントで届けた誠実な歌声

リアルサウンド

19/3/15(金) 7:00

 3月6日に1st EP『This One』をリリースしてCDデビューを果たした声優の増田俊樹が、29歳の誕生日当日である3月8日に東京・マイナビBLITZ赤坂で、アニバーサリーイベント『増田俊樹 Anniversary Event -This One-』を開催した。トークパートとライブパートの2部構成で、ライブパートでは『This One』収録曲に加えてカバー楽曲も披露。緊張しながらも音楽活動の第一歩を力強く踏み出した一夜になった。

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■表現者としての未知数の可能性

 登場早々「まだ地に足が付かない。手が震えてる」と笑いながらも緊張した様子の増田に、会場からは黄色い歓声が上がる。トークパートでは、まずは『Making of This One』と題して、1st EP『This One』のレコーディングの様子、ジャケットやMV撮影の様子を観ながら、制作時の思いを語った。

「どの曲も最初は、自分の人生に置き換えてみても、なかなか想像がつかなくて、どう表現していいかわからなかった。でも曲を聴き込んでいくうちに、この曲を歌うのはこういう人かもしれない、この曲に存在する登場人物はこういうことが伝えたいんじゃないか、こういう考えを持ってるんじゃないかと想像することができた。聴いた人達がどう感じて、どう楽しんで、どう影響を受けるのかを想像すると、自分が歩んできた人生とは少し違う歌詞であっても、それを歌で表現するのは楽しいことだと発見できました」

 また、会場に集まったファンからメッセージを募集し、箱からランダムに取り出しながらメッセージに応えた。中には29歳にかけて「好きな肉の部位は何ですか?」という質問もあり、ダイエット話に絡めて「ヒレ肉です」と答えて笑わせる場面も。表現という部分に話が及ぶと、「自分が選んできた道を間違いにはしたくない。表現にはいろいろなジャンルがあり、一つひとつ挑戦していく中で、音楽は新たな表現の一つだと考えている。どんな表情、表現をすればいいか、僕自身まだわかっていないけど、それがどんなものになるか楽しみに活動していきたい」と話した。

 2011年から声優として活動し、これまで数多くのアニメやゲーム作品で声優を務めると同時にキャラクターソングを歌ってきた。その増田が今新たに挑戦している音楽は“自己表現”であり、そこには舞台やアニメのようにシナリオや原作があるわけではない。自分自身と真摯に対峙することでしか生み出されない表現がある。そこで感じる孤独、不安、葛藤。楽曲「風にふかれて」には、それらの感情を乗り越えて少しでも前に進もうとする、強い思いが込められていると感じる。増田の真剣な表情に、うんうんとうなずきながら、観客は言葉一つひとつを聞き逃すまいとして耳を傾けていた。

■真っ直ぐ誠実、嘘のない歌声

 ライブパートの客席は、ブルーのペンライトで埋め尽くされた。MVと同じ黒で統一された衣裳に身を包んだ増田が、ブルーのレスポールを肩から提げる。手元に視線を落とし、真剣な表情でギターを鳴らして「風にふかれて」が始まった。ストリングスやピアノの流麗なサウンドにエレキギターが力強さを与えたサウンドで、メロディにはどこか懐かしさがあり胸をキュッと締め付ける。

 この「風にふかれて」について、トークパートで「最初に聴いたとき、増田俊樹っぽさがあると思った。恋を表現した歌ではあるけど、登場人物がその事柄について受け入れがたく思っていると言うか、俺はこうしたいというエネルギーが奥底に眠っている。嵐のなかでも一歩一歩進んでいくような、薄暗さがあるけど大きなパッションをはらんでいる曲。僕の歌い始めの1曲目にぴったりだと思った」と、語っていた。今まで歌ってきたどのキャラクターとも違った、増田俊樹としての歌声が、新鮮に耳に届いた。

 2曲目はゆったりとしたリズムで、爽やかな風がそよぐような「夏空の雨」。「最初は試行錯誤して苦しんで作っていたんだけど、途中で30~40代になって音楽を楽しんでるおっちゃん像が見えた」と話す。ハンドマイクでステージを動き回りながら歌うと、会場にはハンドクラップが響く。増田も実に楽しそうな表情だ。

 最後に歌われたのが「フレーズ」だ。温かいムードのゆったりとしたリズムの楽曲で、会場が一つになって頭の上で手を揺らす。好きな相手に花束を贈るように、歌に乗せて相手への気持ちを贈るという歌詞で、〈その胸に届くように送るよ〉というフレーズでは、客席に手を広げるようにして歌って届ける彼の姿に、大きな歓声が沸いた。

 また、BUMP OF CHICKENの「カルマ」とMr.Childrenの「放たれる」のカバーも披露してくれた。「カルマ」は高校生のときにプレイしたゲーム、「放たれる」は映画『青天の霹靂』をきっかけに好きになり、カラオケでもよく歌うそう。増田の音楽的ルーツも感じさせる2曲を、ファンもペンライトを揺らして一緒に歌った。

 アンコールでは再び「風にふかれて」を披露した。「今日1回限りの『風にふかれて』をみんなで一緒に作りましょう」と、ここでは間奏で、コール&レスポンスを繰り広げた。耳に手を当てて観客の声を聴きながら、「気持ちいいね」と嬉しそうな表情。そんな観客の声に応えるように〈新たな気持ち抱いて〉という歌詞を〈みんなの気持ち抱いて〉に替えて気持ちを込めて歌うアドリブに、会場からは大歓声があがる。曲の終わりには、バンドメンバーのほうを向いて、手をグルグル回して合図を送って曲を締めくくった。

 最後に「ありがとう」とマイクを通さず、生声で感謝を伝えた増田。ひたむきさや真剣さを感じさせる歌声には、誠実さがあり、そこに嘘は感じられない。この歌声なら信じていいと思わせるような、技術を越えた説得力を感じた。(榑林史章)

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