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『いだてん』中村勘九郎×森山未來、シンクロした情熱 物語は明治から大正へ

リアルサウンド

19/4/1(月) 12:20

 全4章で構成される大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(NHK総合)。第13話は、第1章「ストックホルム大会篇」を締めくくる回だ。

参考:寺島しのぶ、黒島結菜、菅原小春、柄本佑ら『いだてん』新キャスト発表 菅原「秘めている思いを表現できたら」

 日射病でマラソンを走り切ることができなかった四三(中村勘九郎)。当日の記憶が曖昧な四三は、世話係のダニエル(エディ・アンドレ)に案内され、ことの顛末を改めて知る。また四三は、ライバルとして共に戦ったポルトガルのラザロ選手(エドワード・ブレダ)が日射病で亡くなったことを知らされる。しかし四三は再び走りだす。時を同じくして、孝蔵(森山未來)は緊張と戦いながら初高座に挑む。落語「富久」を演じる孝蔵は、最後まで演じきれないものの目を見張る才を見せた。

 まず注目すべきは、四三が再び走り出すまでの演出だ。四三の頭に蘇る倒れた日の記憶は苦々しいものだった。ペトレ一家の庭先で倒れた四三をダニエルたちが迎えにきた。自分が置かれている状況を理解した四三は、立ち上がって走り出そうとするのだが体が追いつかない。ふらつく四三と同じようにカメラが大きく揺れ動き、彼の姿を映しきれない。この演出から日射病の猛威が伝わってくる。四三は帰りの車中でむせび泣き続けた。中村は四三を演じる中で、彼が味わってきた悔しさを追体験したのかもしれない。涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにして泣き続ける中村の姿は、四三が当時味わったであろうやるせなさを想像させる演技だった。

 また四三は、弥彦(生田斗真 )からライバルだったラザロ選手が日射病で亡くなったことを知る。四三はなかなか言葉が出ず、すぐには彼の死を受け止められない。ラザロと同じ道を選んでいたら、四三も命を落としていたかもしれなかった。しかし走りきれなかった悔しさから「ばってん、それでよかったとか」と呟く四三。そんな彼に弥彦は語気を強めてこう言う。「よかったに決まっている! 死んだら君、二度と走れんのだぞ!」

 無念の敗北、ラザロの死。四三が受け止めなければならない現実はあまりにも重い。だが弥彦の言葉や恩師・嘉納治五郎(役所広司)、大森兵蔵(竹野内豊)、安仁子(シャーロット・ケイト・フォックス)、東京高師の面々、家族……四三がストックホルムの地に降り立つまでに関わってきたすべての人の「頑張れ」という思いが四三の心を支える。それになにより、四三は純粋に走ることが好きなのだ。

 そのころ東京では、孝蔵が初めて高座にあがる。緊張のあまり酒に手を出し、泥酔状態で高座にあがった孝蔵は、客の視線に驚き頭が真っ白になってしまう。だが「耳で覚えちゃダメよ。噺はね、足で覚えるんだ」という円喬(松尾スズキ)の言葉を思い出し「富久」を演じ始める孝蔵。

 「富久」を演じる孝蔵が熱を帯び始める姿と、四三が再び日本のユニフォームを着、走り出す姿が重なる。四三と孝蔵のキャラクターは真逆だが、孝蔵の軽快で熱を帯びた話し口は四三の心の奥にある情熱を表すのにふさわしい。四三は呼吸を乱すことなく淡々と走り続ける。しかし心の中は「富久」を演じる孝蔵のように、熱く燃え盛っていたはずだ。

 孝蔵は「富久」を最後まで演じることはできなかった。しかし孝蔵の「富久」は客の心に刺さっただろう。一方、四三も自身の敗北やラザロの死を覆すことはできない。しかしそれらを受け止め、走り続ける。各国のマラソン選手たちは「4年後に会おう」と言葉を交わし、その中にはもちろん四三の姿もある。「勝つか死ぬか、そのどちらかだ」というラザロの言葉を思い出す四三の表情は、再び走り出すという決意に満ちたものだった。

 第13話のタイトルは「復活」。消失したものが再び元の状態に戻ることを示すこの言葉は、再びスタート地点に立った四三と孝蔵の姿を表すのに然るべきタイトルだ。孝蔵は清さん(峯田和伸)から受け取った着物を羽織り、三遊亭朝太としてのスタートを再び切る。日本へ帰国する四三は、4年後に開催されるオリンピックのために、走ることへの情熱を再び燃やすだろう。次回、第14話から、時代は明治から大正へと変わる。四三の新しい挑戦が楽しみだ。(リアルサウンド編集部)

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