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二宮健監督が振り返る、初の商業映画を撮って感じたこと 「スタイルを構築しなければいけない」

リアルサウンド

18/7/18(水) 10:00

 桜井ユキが主演を務める映画『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY リミット・オブ・スリーピング ビューティ』のBlu-ray&DVDが、7月18日にリリースされた。高橋一生とのスタイリッシュなラブシーンも話題となった同作のメガホンを取ったのは、現在26歳の新鋭・二宮健監督。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2015で審査員特別賞を受賞したインディーズ作品『眠れる美女の限界』を、商業映画デビュー作としてセルフリメイクした。現実と妄想の間で揺れ動く主人公・オリヤアキの喪失の物語を、ビビットな色彩感覚と斬新な編集で仕上げた本作は、どんな狙いで作られたのか。若き映画監督が抱くビジョンに迫った。

参考:30代前半遅咲きブレイクがトレンドに? 中村倫也、田中圭、高橋一生に共通するキャリア

【ビジュアルをダイレクトに繋いで高揚感を】

ーー『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY』は、虚実のあわいが混濁した作品で、シーンの断片を切り貼りして時間軸を意図的に狂わせるような編集に新しさを感じました。まさに夢を見ている感覚に近い作品ですが、かといって支離滅裂なわけではない。この手法はどんな風に生まれたのでしょう?

二宮健(以下、二宮):夢と現実を行き来する映画は、ジャンルとしては昔からあるのですが、成功例は極めて少ないです。というのも、いわゆる「夢オチ」は物語における禁じ手で、あまり歓迎されない手法なんですね。同じような題材で妙に敷居が高い文学的な映画などもありますが、そういう作品は往々にして退屈でつまらないものが多い。だけど、通常の映画が観客に強いる圧力ーー小難しい台詞とか、物語を構築するための長い説明シーンとか、やたらと多い登場人物とかーーを極力排して、ビジュアルをダイレクトに繋ぐことで観客を高揚感に導いたらどんな作品になるのかと。段取り的なシーンを一切排除して、主人公にとって感情的な昂りを覚えるシーンだけを繋いでいったのがこの映画です。その分、物語が破綻しないように、どれだけ絵変わりして、どれだけ場所が変わっても、オリアアキの感情のラインはしっかりと紡ぐように意識しました。オリアアキの主観の物語なので、彼女の心情に寄り添うことができれば、違和感なく鑑賞できると思います。

ーー音楽の使い方も新鮮でした。Kyla La Grangeの「Hummingbird」やHundaesの「Be There」など、US産ではない海外のエレクトロを物語の重要なシーンで使っていて、邦画では非常に珍しい例だと思います。選曲は監督によるものですか?

二宮:そうですね、音楽に関しては完全に僕の趣味です。映像に対して音楽をどうハメていくかということに対する探究心が強いので、人物の動きやシーンの移り変わりとも気持ちよく同期するようにしました。僕自身が映画で音楽の魅力に目覚めた経験があるので、そこは特に妥協したくなかったポイントです。映画の中でかかる音楽は、普通に聴くよりもずっと印象に残りやすいですし、みんなが好きな映画で音楽を抜きに語れる作品って少ない気がして。「あの音楽を聴くとこの映画を思い出す」という経験は誰しも持っているでしょうし、人生を彩る豊かな映画の秘訣は、音楽にあるのではないかとさえ感じています。

ーー本作にはMV的な側面もあるし、トリップムービー的な側面もあります。参照にした作品は?

二宮:大好きなキャメロン・クロウ監督の『バニラ・スカイ』(2001年)の影響はもちろん、ダーレン・アロノフスキー監督の『レクイエム・フォー・ドリーム』(2000年)、ニコラス・ウィンディング・レフン監督の『ネオン・デーモン』(2016年)や『オンリー・ゴッド』(2013年)の影響もあるし、ジャコ・ヴァン・ドルマル監督の『ミスター・ノーバディ』(2009年)からは時間の概念に関する映画の作り方を随分と学びました。ジェームズ・キャメロン監督の『ターミネーター2』(1991年)におけるサラ・コナー(リンダ・ハミルトン)のショットガンの撃ち方も真似しています。グザヴィエ・ドラン監督も気になる存在ですし、ジュゼッペ・トルナトーレ監督の『ニュー・シネマ・パラダイス』(1988年)の影響もあります。

ーー本作が商業映画デビュー作とのことですが、自主映画の制作とはどんな違いを感じましたか?

二宮:初の商業映画の現場は面白かったですよ。後からメイキング映像を観たら、僕がずっと嬉しそうに笑ったり踊ったりしていて、「ああ、自分こんなに楽しんでたんだ」と軽い感動さえありました。商業映画の現場は、スタッフはみんなプロフェッショナルだから、自主映画の現場では時に大切な叱咤激励で何か変わるようなことも特にないので、監督として映画づくりそのものを楽しむことも時には優先しました。もちろん、僕が楽しんでいるだけでは辿り着けないステージがあることも最近はわかっているので、さらに商業映画として高みを目指すためのスタイルを構築しなければいけないとは感じていますが、この作品に関しては100%楽しんで撮影しています。そのテンションの高さは、映像にも現れているのかなと。

【女性が観てうっとりできるラブシーン】

ーー主演の桜井ユキさんと相手役の高橋一生さんは、この作品の前後でブレイクを果たしていて、その意味でも貴重な作品になっていると思います。特に桜井ユキさんの魅力が最大限に引き出されていると感じました。彼女のダンスには自然なキュートさがあって、グッと心を掴まれるものがありました。

二宮:それは嬉しい感想です。自分が感じているように、お客さんにも彼女のことを「いいな」と感じてもらおうと、とても心がけました。ダンスに関しては、自分を魅力的に見せる方法がわかっている人なんだろうなと感じました。所作ひとつとっても、日常から見せ方を心得ているのだと思います。それに加えて、彼女は、嘘がない人で、常に全力で作品に向き合ってくれました。

ーー高橋一生さんはどんな印象でしたか?

二宮:一生さんって本当に素敵ですよね。僕が言ったことをすっと理解してくれますし、対応力もすごくあって、聡明な方だと思います。

ーー2人の屋上でのラブシーンは、非常にロマンチックでした。妥協のない芝居で、ソフトに演じているわけではないのに、生々しさよりも美しさや多幸感を感じる映像です。

二宮:作品全体がオリアアキの主観によって語られているので、男性的な視点を入れないように考慮しました。僕は特にフェミニストというわけではないですが、男性的な性の視点に対して開き直っているような描写は好きじゃないんです。おっさんの顔が見え隠れしていて、ダサいじゃないですか。あくまでも女性が観てうっとりできるラブシーンを目指しました。

【今の映画界について】

ーー『全員死刑』の小林勇貴監督や『みちていく』の竹内里紗監督など、同世代の若手監督はどう見ていますか?

二宮: “若手監督”という括りで一緒に紹介されたりすることも多いので、僕にとって学校の同級生みたいな感覚です。実際、みんな友達同士だったりもしますし。ただ、実際に作っていくものに関しては、世代でくくってしまうと、観客も作り手も視野が狭まってしまうので、もっと大きな視野と切り口で広がっていけばいいのになあ、なんて、たまに思ってます。

ーー二宮監督は、今後も商業映画にチャレンジしていくのでしょうか?

二宮:これからも商業映画には挑戦し続けたいと思っていますし、今回の映画を通して、日本の観客がどういうところに反応するのかとか、どの程度攻めた表現が受容されるのかとか、その塩梅がおぼろげながら掴めた部分はあります。その中で、「日本ではこういう映画を作ればヒットする」という傾向に乗っかるのではなく、かといって歯向かうのでもなく、そのバランスを考えながら、開放的で見通しの良い映画を作っていきたいと思ってます。(取材・文=松田広宣)

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