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ぴあ

いま、最高の一本に出会える

第2回

毎月連載

小西康陽 5243 シネノート

7月から8月

18/8/19(日)

 酷暑。今年はほんとうにきびしい。あれはたしか2014年の8月、ラピュタ阿佐ヶ谷で清水宏の『按摩と女』を観たとき、ちょうど劇場の冷房が快適で、なんだか堪らなく幸福な気分を味わってからというもの、夏は映画館でぐったりしているのがいちばん快適なのではないか、と考えている。
 もともと夏は大嫌いな季節なのだけれども、しかし映画の中の夏は観ていて楽しい。暗闇の中で、白い光の量が他の季節よりもぐっと増えるからなのか。とりわけ夏に観る夏の映画が、やはり良いですね。
 このひと月に観た、夏の映画。新文芸坐の三船敏郎特集で観た『婚約指輪 エンゲージ・リング』。汗を拭きながら、逗子だったか鎌倉だったかの町を歩く三船敏郎の白いズック。恋に落ちる田中絹代がチャーミングだった。
 ラピュタ阿佐ヶ谷で観た『北白川こども風土記』。 京都の小学生たちが郷土の歴史を調べる短編映画。クライマックスは大文字焼きの準備を至近距離で見学する場面だった。
 神保町シアターの石坂洋次郎原作映画の特集は夏の映画の佳作ばかり。千葉泰樹監督の『丘は花ざかり』を観たのは二度目だったが、まったく憶えていない場面の連続だった。志村喬と池部良が下着一枚で泳ぐ場面とか。
 中川信夫『石中先生行状記 青春無銭旅行』は新東宝の作品。和田孝と小高まさるのふたりが無線旅行に出る、というだけで楽しい。水遊びをしていたら千秋実の山伏に洋服を盗まれて、褌一丁で自転車に乗り、追いかけ回す場面。
 そして佐伯清の『戦後派お化け大会』。これは素晴らしい映画だった。大盛りのかき氷。夏祭りのおばけ大会。そして三船敏郎のカメオ出演。圧巻は河村黎吉のピストルの場面。やはり7月にラピュタ阿佐ヶ谷で観た『どぶ』という映画の乙羽信子演ずるヒロインの拳銃強奪の場面を連想しつつ、大笑いした。
 やはりラピュタ阿佐ヶ谷で観た若杉光夫の『石合戦』という映画も美しいひと夏の話だった。川の向こうとこちら、褌一丁、海パン一丁で石を投げ合う小学生たち。ストーリーなどどうでもよくなってしまうほど美しい場面だった。

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