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GRAPEVINEが語る、アルバム制作に向かう意識 「ちょっとした突破口はやっぱり必要」

リアルサウンド

19/1/31(木) 19:00

 GRAPEVINEが16作目のオリジナルアルバム『ALL THE LIGHT』を2月6日にリリースする。華々しいホーンをフィーチャーした「Alright」、エレキギターの弾き語りによる「こぼれる」という2曲のデジタルシングルを含む本作は、ホッピー神山のプロデュースのもと、バンドが持つ多彩な表情が感じられるアルバムに仕上がった。「Era」「すべてのありふれた光」など、“光”をモチーフにした楽曲も、本作の解放的な雰囲気につながっている。メンバーの田中和将(Vo/Gt)、西川弘剛(Gt)、亀井亨(Dr)に、本作の制作とバンドの現状について聞いた。(森朋之)

・任せることが増えている(亀井亨)

ーー16thアルバム『ALL THE LIGHT』は、ホッピー神山さんがプロデューサーとして参加した作品。ホッピーさんは1stアルバム『退屈の花』(1998年)、ミニアルバム『Everyman, everywhere』(2004年)にも参加していますが、一緒に制作するのは久しぶりですね。

田中:そうですね。近年はセルフプロデュースでアルバムを作ることが続いていて。途中、(アルバム『BABEL, BABEL』で)高野寛さんに何曲かお願いしたこともあったんですが、前作は20周年ということもあり、完全に自分たちだけで制作して。なので「次こそはプロデューサーを立てよう」という話はかなり前から出てたんですよ。ただ、バンドの性分として明確なビジョンがないというか、「こういうことをやりたいから、この人にお願いしたい」という具体的な話になかなかならず。

西川:うん。

田中:そんなこんなで、ホッピーさんの名前が出てきて。以前にも絡んだことがあるし、かなりストレンジな方なのも知っているので、「いまやったら、おもしろいことができるかも」っていう。僕らもそれなりに成長してますからね。

ーーGRAPEVINEにとって、プロデューサーを立てる意義ってなんですか?

西川:メンバーがもう一人増えるというか、新しい意見をもらえるということですよね。あとはアイデアをまとめてもらえるということかな。「責任を取ってもらう」という感じもあるかも(笑)。判断に迷ったときは、基本的にお任せするので。

田中:制作に入る前から「乗っかろう」みたいなモードだったんですよ。

西川:判断も早いですからね、ホッピーさんは。レコーディングの前の晩に「あの曲にハンドクラップを入れたい」ってメールしたんですけど、次の日、10分くらい遅刻してスタジオに行ったら、「もう入れたよ」って(笑)。

田中:「昨日、西川くんから『ハンドクラップを入れたい』と連絡があったから、ここにいる人間でやろう」と言われ(笑)。

西川:「もう入れたんですか?」と言ったら、「Time is money」って返されました(笑)。

亀井:とにかく作業が速いんですよね、ホッピーさんは。僕らだけでやってると煮詰まったり、周り道することもけっこうあるんだけど、今回の制作はスムーズに進むことが多くて。曲作りのセッションの段階から入ってくれた曲もあるんですよ。

ーー「ミチバシリ」「Asteroids」「God only knows」ですね。プロデューサーを入れることで、制作のモチベーションにもつながる?

田中:そうですね。これだけキャリアを重ねてくると、ぶっちゃけた話、モチベーションを保つのもそれなりに大変だったりするので。プロデューサー、サポートメンバーもそうですけど、外から入ってきて、風の入れ替えをしてくれることを求めているというか。

 何でもそうだと思うけど、同じメンバー、同じチームで長くやってると、視野が狭くなるじゃないですか。ちょっとした突破口はやっぱり必要ですよね。

ーー最初に配信リリースされた「Alright」はかなり派手でポップなナンバー。アルバムの導線として最適な曲だと思いますが、やはり本作のために制作された曲なんですか?

田中:いや、以前のアルバムのセッションのときに作っていた曲なんですよ、じつは。でも、そのときは暗礁に乗り上げてしまって、保留してたんです。

亀井:うまくまとまらなかったんですよね。

田中:うん。今回のアルバムの制作が始まった時点では、そこまで曲が揃ってなかったから、候補曲のなかにコレも入れてたんです。そうしたらホッピーさんが「自分にアイデアがあるから、この曲はぜひやろう」と。

ーー当初のアレンジとはかなり違ってるんですか?

田中:考え方がぜんぜん違いますからね。これは僕の曲なんですけど、作った時点ではポール・ウェラーみたいな感じだったんですよ。ホッピーさんが「生のホーンを入れよう」と言い出して、ガラッと雰囲気が変わりました。

亀井:そういう発想はぜんぜんなかったので。イントロのフレーズも、後からホッピーさんが入れたんですよ。

ーー確かに“乗っかって”ますね。

田中:まあ、やってみないとわからないですから。良くも悪くも主張がないといいますか(笑)、曲が良くなる、おもしろくなるんだったら、どう変えてもらってもいいんですよ。メンバーが持ってきたデモもイジり倒すし、端折ったり、組み替えたりしますから。

ーー「Alright」をリード曲にしたのも、ホッピーさんのアイデアなんですか?

田中:いや、それはスタッフですね。「Alright」をリード曲にしたいと言われて、「派手だし、いいんじゃない?」っていう。

亀井:そういうところも任せることが増えてますね、最近は。意見があるときは言いますけど、自分たちの判断が正しいかどうかわからないので。

ーー以前は「これはやりたくない」という主張が強かった気がしますが。

田中:そうですね(笑)。でも、3枚目、4枚目のアルバムくらいからは、まわりの意見に頼ってたんじゃないかな。特にシングル曲を決めることは、任せることが多かったと思います。

ーーじつは周囲の意見にも耳を傾ける、開いたバンドだったと。

田中:閉じてるも開いてるもなくて、曲を同等に扱ってるだけなんですけどね。シングルもカップリングもアルバムの曲も同じような熱意で作ってるので。

ーーなるほど。今回のアルバムは、GRAPEVINEのいろいろな表情が堪能できる作品だと思いますが、そこは意識していました?

田中:これもホッピーさんが言ってたことなんですけど、「個性的なツラの曲が並んでたらおもしろいんじゃないの?」という話はしてました。そういう意味ではカラフルなアルバムになったと思いますね。

亀井:プリプロを2回に分けてやったんですけど、最初は何も考えずに曲を持っていったんですよ。その後、ホッピーさんが全体のバランスを考えて、「弾き語りの曲があったらいいね」とか「GRAPEVINEの王道みたいな曲がもう一つほしい」みたいなことを言ってくれて。

田中:うん。プロデュースするにあたって、ここ最近の3~4作を聴き込んでくれたみたいなんですよね。そのうえで、自分たちに何をやらせたらおもしろいかを考えてくれたんじゃないですかね。

ーー弾き語りの曲って、「こぼれる」ですよね。

田中:そうです。「エレキの弾き語りの曲を作ってくれない?」とリクエストがあって。この曲を先行配信したのは、よくわからないですけどね。けっこう地味な曲なんで(笑)。

亀井:いままでにないタイプの曲だけどね。

田中:異色ですよね。尖がった部分を出すという意味では、これを配信するのは正解だったのかも。

ーー歌詞は曲が揃ってから書いたんですか?

田中:その都度、イメージしながら書き進めていった感じですね。近い時期に書いてるので、自然と統一感は出てるなって自分でも思いますけど。

・“にやり”とできるところだったり、居心地の悪さを入れたい(田中和将)

ーー「Alright」もそうですけど、アルバム全体を通して、前向きさ加減がいつもより高い気がします。

田中:そうですか。まあ、いままでは前向きじゃなかったと言われたら、ちょっと心外ですけど(笑)。「Era」とか「すべてのありふれた光」とか、光をモチーフにした曲がいくつかあるから、キラキラしている印象があるのかもしれないですね。

ーー特に「すべてのありふれた光」は、アルバムの大きなポイントだと思います。曲の終盤、〈ありふれた未来がまた/忘れるだけの 忘れるための〉の後、〈それは違う〉という強い言葉によって曲の印象が一気に変わりますが、この言葉を使ったのはどうしてですか?

田中:特別な理由があったわけではないんですけど……。〈それは違う〉の前は、今までの僕のやり方だと思うんですよ。そこで〈それは違う〉を挟むのはそこそこ勇気が要りましたけど、そのまま終わらせてはいけない気がして。決してハッピーエンドではないですけど、せめて“扉が開いたかも”“光に触れたかも”というところまでいかないとダメな気がしたというか。

ーー確かにこれまでの曲は“光に届きそうで届かない”というイメージの曲が多かったですよね。

田中:そうですね。そういう儚さ、虚しさを歌うことは確かに多かったし、それが僕の歌詞のイメージだと言われたら、否定はできないと思います。ただ、この曲に関してはそれだけではダメで、何かしら自分のなかで決着を付けないといけなかったんだろうなと。

ーー強く心に残る歌詞ですよね。年齢を重ねることで、10代、20代のときとは違う不安や怖さも生まれてくるし、さらに切実に光を求めるようになると思うので。

田中:そう言ってもらえるとありがたいですね。この歌詞を書いた甲斐があります。

ーーGRAPEVINEには「光について」(1999年)という名曲がありますが、「すべてのありふれた光」の歌詞を書くにあたって、2曲のつながりは意識していました?

田中:いや、それはないですね。照らし合わせて書いているわけではないので。ただ、同じ人間が書いているので……。これは昔から言ってることですけど、書いている内容はさほど変わらないと思うんですよ。表現の方法、言葉の使い方、視点の置き方、シチュエーションや設定はいろいろありますけど、内包しているテーマはいつも同じというか。そう考えると、「光について」も「すべてのありふれた光」も同じようなことを歌ってるのかなと。まあ、「光について」はずいぶん若いときに書いてますから、それなりにフツフツとしたものはありますよね。そのあたりを照らし合わせて聴いてみるのは、おもしろいかもしれないです。

ーー“内包しているテーマ”こそが、田中さんの作家性なんでしょうね。音楽的にも同じことが言えますか?

田中:いろいろ試してますけどね、そこは。

西川:よく“ひとりの人間から出てくるメロディは、大して多くない”って聞きますけどね。歌い回しも、そんなに多くないだろうし。

田中:歌う人が違えば変わるんだろうけど、そうじゃないですからね(笑)。どうしても似たようなものが出てくるというか。

西川:まったく新しいメロディを考えたところで、「つまらない」と思うこともあるだろうし。同じようなものでも「カッコいいな」と感じられればいいわけで、あまり意識はしてないですけどね。

ーー亀井さんはどうですか? メインの作曲者として、数多くのメロディを書いてきたわけですが。

亀井:「同じような曲ばかりできるな」と思いますね(笑)。制作に入ったら、とにかく曲を作って持っていくわけですけど、「アレンジで新しい感じになるといいな」という期待はいつもあって。プロデューサーを立てることもそうですけど、ちょっとずつ変えながらやってきたというか。自分たちだけで曲を作って、「お!」と思えることは少なくなってますけど、「次こそは」と思って続けてます。

ーー『ALL THE LIGHT』というアルバムタイトルについても聞かせてください。いつになくキャッチーなタイトルですよね。

田中:さっきも言いましたけど、光をモチーフにした曲が入っているのもそうだし、わかりやすくて気持ちいいタイトルがいいかなと。

西川:確かに難しさはまったくないですよね。『BABEL, BABLE』なんて、意味がわからないじゃないですか。

田中:ハハハハハ。

西川:あれはあれでキャッチーだったと思いますけどね。

ーーそういえば前作『ROADSIDE PROPHET』も、すぐに意味がわかるタイトルではなかったような。

田中:前作はちょっと難しかったですね(笑)。

西川:GRAPEVINEというバンド名もわかりづらいですから。

田中:結成したときから不親切なバンドでした(笑)。

西川:デビューしたとき、「わかりづらいからバンド名を変えよう」って言われたんですよ。

ーーえ、そうなんですか? そんなの「変えるわけないやろ!」ですよね?

西川:いやいや、すぐに違うバンド名を考えたんですよ(笑)。でも、なかなか良い名前が浮かばず、結局は「このままでいいか」ということになって。

田中:バンド名にも、そこまでこだわりがあるわけではなくて。「差し当たり、これでいいか」みたいな感じで決めたので。

亀井:最初はぜんぜん聞き取ってもらえなかったんですよ。「グレイプパイン? おいしそうな名前ですね」って言われて(笑)。

田中:発音も難しいですからね。アメリカでライブしたときに、「自分のバンド名くらい、きちんと発音しよう」と思って練習したんだけど、なかなか上手くできなかった(笑)。

ーーGRAPEVINEというバンド名も、探れば興味深い由来があって。田中さんは以前からリスナーに対して「能動的に聴いてほしい」と言ってるし、わかりづらいバンド名にもその姿勢が出てるのかも。

田中:それは「リスナー体験が豊富なほうが、おもしろくなるよ」と言いたいだけなんですけどね。「プロ野球を10倍楽しく見る方法」じゃないけど、アレやコレや知っていたほうが、いろいろとわかってくるじゃないですか、音楽に限らず。そのことを身をもって示しているわけですよ(笑)。

ーー曲を制作していて、「これはわかりやす過ぎる」みたいな話になることも?

田中:ありますね。アレンジしてるときとか。

西川:「わかりやす過ぎる」より「これだと難しすぎる」という話をすることが多いかな。

田中:そうかも。「もうちょっと親切にしたほうがいいか」とか。

西川:結局、やりたいようにやってますけどね。

田中:結果的に不親切(笑)。

ーーアレンジにおける親切、不親切って?

西川:たとえば「ここでそんなに混沌とさせる?」とか。曲の構成上、その後の解放感を狙ってやってるんですけど、「そこまでやる必要はないんじゃないか」みたいな話をすることもありますね。あとは「せっかくこんなに美しい曲なのに、不穏な感じで終わるのは後味がよろしくないのでは?」とか。

ーーなるほど。ただ、GRAPEVINEの音楽は決して難解ではないですよね。

田中:そう思いますけどね。基本的には普通にロックをやってるつもりなので。そのなかに“にやり”とできるところだったり、居心地の悪さを入れたいっていう。そういう性分だとしか言いようがないですけど。

ーー一見さんにはハードルが高いかもしれないけど、なかに入るとめちゃくちゃ奥が深いという。実際、GRAPEVINEのファンはディープに楽しんでいる人が多いですからね。

西川:楽しんでくれてるのかな? あんまり聞いたことないけど(笑)。

田中:「こんなにいい曲なのに、何でこんなことするんだろう?」という方が多い気がするけど(笑)。

ーー(笑)。2018年の“21周年ツアー”(『GRAPEVINE club circuit 2018』)もかなり渋いセットリストでしたが、僕のまわりのGRAPEVINEファンはめちゃくちゃ楽しんでたみたいですよ。

田中:それは良かった。よく教育されたリスナーなんでしょうね。

西川:何もリリースのないツアーだったし、比較的小さい会場が多かったですからね。たぶんヘビーリスナーの方、昔から聴いてくれてる人が多かったと思うので。

ーーアルバム『ALL THE LIGHT』を引っ提げたツアーも楽しみです。今年は“22周年ツアー”ですね。

田中:そうなりますね(笑)。

ーー毎年“○年”と言ってたら、25周年、30周年のありがたみがなくなる気がしますが。

田中:いいんですよ、それで。そうなることを見据えての発言ですから。10周年、15周年もそうだったんですが、“○周年”を掲げると、ツアーのチケットがバーッと売れたりするんですよ。それにちょっとイラッとして(笑)。

西川:ハハハハハ!

田中:ベスト盤みたいなライブを期待してるんでしょうけど、「ふだんのツアーも来いよ」っていう(笑)。

西川:周年のタイミングって、大きい会場でライブをやりがちじゃないですか。別に小さい会場でもいいですよね。小さめの会場で5日間やるとか。

田中:5日間はきついけどね(笑)。

ーー(笑)。今年のツアーはもちろん、新曲をたっぷり聴けそうですね。

田中:まだ何も考えてないですけど、今回のアルバムは、いつも以上にライブで再現できない曲が多いんですよ。ライブならではの演奏になるでしょうね。

亀井:原曲とは変わってくる部分もあるだろうし、それがおもしろくなっていけばいいなと思ってます。

(取材・文=森朋之)

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