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Hi-STANDARDの“すべて”が明かされる 初のドキュメンタリー映画が伝える、巨大な夢と愛の核心

リアルサウンド

18/11/10(土) 12:00

 Hi-STANDARDというバンドは多くの人たちにとって特別な存在である。彼らの長年に渡る絶大な人気、彼らが成し遂げてきた数々の偉業、彼らの音楽の持つ圧倒的な素晴らしさはもちろんのこと、再始動後に完全に蘇ったハイスタの姿もあまりにも特別である。

参考:Hi-STANDARDのドキュメンタリー映画『SOUNDS LIKE SHIT』全79館で上映決定

 ハイスタの結成から活動休止時期を経て現在に至るまでの歴史、その中でメンバー3人がどのような物語を生きてきたのか。これまでに断片的に語られることはあったものの、本当のところは誰にもわからなかったところだろう。様々な言葉が何度も一人歩きをした。『SOUNDS LIKE SHIT: the story of Hi-STANDARD』が描いたのは、語られることが少なかったハイスタの本当の物語である。

 この映画で監督を務めたのは、今作が映画監督デビュー作となる梅田航。これまでにハイスタを始めとするバンドの写真、映像を撮り続けてきたカメラマンである。ハイスタが16年ぶりとなる新曲「ANOTHER STARTING LINE」の曲作りを始めたところから、彼はスタジオ入りしたハイスタの姿を撮り始めた。

「ハイスタの曲作りのスタジオなんて、そんなの見たいに決まってるじゃないですか(笑)。それで、カメラを持って毎回スタジオに行くようになって。撮っていれば何かできるかなって感覚でした。とにかく今起きていることを撮ること。誰かが映像に撮らないともったいないなっていうのはありました」(梅田航/劇場販売のパンフレットより。以下同)

 この映画が何よりも魅力的なのは、ハイスタの歴史がすべてメンバー3人、本人たちの言葉だけで語られているところだ。梅田航は時間軸を追ってハイスタの歴史を追っていくスタイルで映画作りにアプローチしていった。そこで軸となったのは、時系列に沿って行われたメンバー3人のインタビューである。インタビュー自体はメンバー1人ずつそれぞれ2日かけて行い、3人ともかなりオープンに話してくれたという。

「当時の気持ちにしても、『あ、そこまで話してくれるんだ?』って思うくらい、3人ともスゴく話してくれましたね。それがあったから映画が成り立ってる部分はあります。3人が上っ面じゃなく本当のことを話してくれてるので、だからこそ映画のストーリーが面白くて深みのあるものになったんだと思います」

 1991年の結成からライブハウスでの活動。アルバムを出すごとに加速していく人気。今のロックフェスの走りとなった『AIR JAM』を主催して3万人以上の観客を動員。アメリカのレーベルからリリースをしてツアーをするなど海外にも進出。自主レーベル<PIZZA OF DEATH>を会社として設立して独立。そこから1999年に発表した3rdアルバム『MAKING THE ROAD』は全世界で100万枚のセールスを記録。人気の絶頂を迎えたハイスタだったが、『AIR JAM 2000』を最後に、公式発表もなく活動を停止する。バンドが自分たちの信じているものを追求すればするほど、バンドの人気が出れば出るほど、喜びもあれば同時に苦悩もどんどん増えていく。この映画の中でメンバー3人は当時の出来事、気持ちをありのままに語っていく。そして、それを裏付けるように当時の映像がライブ映像を中心に映し出されていく。こうした映像はこの映画で初出となるものがほとんどであるのも見どころの一つだ。しかもすべての素材の容量が80TBもあったという膨大な過去のアーカイブから厳選された映像でもある。梅田航はその作業に半年間を費やしたという。

 活動が止まって10年以上の月日。その時期もこの映画では丁寧に描いている。修復不可能と思われたメンバー間の確執はどのようなものだったのか。そこはこの映画で初めて明らかにされるところでもある。赤裸々に語られる活動停止の真相と3人の思い。もちろんそこには3人それぞれの視点がある。だからこそぶつかり合ったわけだし、すれ違いもあったわけだ。ただそこには、バンドがDIYという自分たちの手による活動にこだわり、ハイスタというバンドのあり方にこだわったからだということにも気づかされる。梅田航はここでもその手腕を生かして物語を描いている。

 そして東日本大震災をきっかけに大きく変化した3人の関係。『AIR JAM 2011』でのハイスタ再始動、続く『AIR JAM 2012』の開催。16年ぶりの新作『ANOTHER STARTING LINE』のリリース。『AIR JAM 2016』の開催。18年ぶりのアルバム『THE GIFT』のリリースとそれに伴うアリーナツアー。この間にバンドが蘇り、生まれ変わっていく姿が描かれているのもこの映画の見どころだ。2015年からずっとハイスタの側にいて撮影を続けてきた梅田航にとって、この間のバンドの変化はあまりにもリアルだったという。

「メンバーそれぞれが言ってることでもあるんですけど、壊れてしまったものはもうしょうがない、元通りにはできない、だったら新しい関係を作ればいいじゃんって。より新しい違う形になって、より良いHi-STANDARDになっていけばいいんだって。そういうことを目の前で見れて撮ることができたっていうのは、僕にとってはスゴく幸せでしたね」

 この映画で描かれているのは、喪失と再生の物語でもある。もちろんこの映画には様々な見方があっていい。なぜ私たちがハイスタに夢中になるか、その答えが見つかるかもしれない。バンドの歴史としても楽しめるだろう。3人のメンバーの生き様を見るのもいい。昔のレア映像を楽しむのもいい。だけどここには一旦失ったとしか思えなかったものがまた蘇るという奇跡が描かれている。それはバンドに限らず、人間関係や人生のいろいろな場面にも当てはめられることだとも思う。映画のエンドロールで流れるハイスタのとある1曲にしても象徴的なものを感じる。

「歌詞は昔の友達に語りかけるという設定なので、映画を観ている人に、昔の友達とケンカ別れしたままだったり、疎遠になってたりしてても、たまには電話してみれば?って呼びかけてるような感じもある。もしかしたら新しい関係を築けるかもよ、ハイスタの3人だってできたんだからって。そういう風に感じられるのもいいと思うんですよ」

 ここで流れる曲のように、映画の場面ごとに選ばれたハイスタの楽曲、引用された歌詞、そこにも梅田航のこだわりが出ている。そこの見どころも見落とさないでもらえれば、この映画で語られる物語もさらに広がりをもって感じられると思う。(文=大野俊也)

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