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TVドラマは50代俳優の主戦場に ドラマ文化の全盛期を最も享受した世代の姿

リアルサウンド

18/12/23(日) 10:00

 10月クールのドラマが次々と最終回を迎えているが、今期のドラマは50代の俳優が主演を務めるドラマが多かった。

『SUITS/スーツ』(フジテレビ系)の織田裕二が51歳、鈴木保奈美が52歳。
『ハラスメントゲーム』(テレビ東京系)の唐沢寿明が55歳。
『黄昏流星群』(フジテレビ系)の佐々木蔵之介が50歳、黒木瞳が58歳。
『下町ロケット』(TBS系)の阿部寛が54歳。
『科捜研の女 season18』(テレビ朝日系)の沢口靖子が53歳。

 若者向けの学園ドラマが減り、大人の視聴者をターゲットにしたドラマが増えているとは感じていたが、こうやって実際に出演俳優を並べてみると、本当に高齢化していたのだと、驚かされる。同時に思うのは、今の50代は、外見も考え方もとても若いということだ。俳優という人に見られる仕事だということを差し引いても、昔の50代と較べて若々しいなぁと思う。作家の村上春樹は、30歳で人生の進路を決めればいいのではないかという30歳成人説を唱えているが、その解釈で言うと今の50代は昔の40代くらいではないかと思う。

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 50代の俳優の多くは1960年代生まれで、80年代から90年代初頭にデビューしている人が多い。女優では、小泉今日子(52歳)や斉藤由貴(52歳)のような、10代をアイドルとして過ごし、20代になってから本格的な女優として開眼してきた人や、原田知世(51歳)や薬師丸ひろ子(54歳)のような角川映画で若い頃にヒロインを演じた人たちがいる。筆者は76年生まれの42歳だが、70年代生まれの立場から見た彼らは、物心ついた時にテレビドラマで活躍していたお兄さん、お姉さんたちで、80年代末から90年台代初頭のトレンディドラマで主演を務めていた。昔から見ていた俳優やタレントの立ち位置の変化を見ることで、自分の年齢を自覚させられることは多い。今から10年くらい前に90年代に若手だった俳優たちが、父親役や会社の中間管理職的な立場を演じているのを見た時は自分も年をとったなぁと思った。

 脚本家の宮藤官九郎は、小泉今日子や薬師丸ひろ子といった80年代にファンだったアイドルたちを自作に起用することが多いのだが、宮藤のドラマのバックボーンにある80年代的なテレビやアイドルカルチャーの豊かさを原風景とする世代が今の50代だ。そんな60年代生まれの感覚を連続テレビ小説(以下、朝ドラ)に落とし込んだのが『あまちゃん』(NHK)だった。対して、70年代生まれで現在40代の団塊ジュニアの感覚を朝ドラに落とし込んだのが『半分、青い。』(同)だろう。60年代生まれと70年代生まれ。おそらくテレビとテレビドラマ文化の全盛期をもっとも享受できたのが、この二世代だったのではないかと思う。

 また、今の50代はバブル世代でもあり、昭和の年功序列・終身雇用を軸とするサラリーマン文化の恩恵を預かることができた最後の世代だ。対して、70年代生まれの団塊ジュニアは、バブル崩壊以降の就職氷河期を体験しており、正社員、派遣社員、フリーター、あるいはホリエモン(堀江貴文)のようにベンチャーでIT企業を起こした人々といった感じで就業形態が多様化しているため、ライフスタイルにおける一体感は薄い。2013年に放送された『半沢直樹』(TBS系)の原作は『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』で、主人公の半沢たちはバブル期に入社した銀行員だった。ドラマ版では若干、薄まった要素だが、原作小説では彼らバブル世代は、上の世代の(世の中を駄目にした)団塊の世代に対する強い反発があり、物語は一種の世代間闘争となっていた。この対立は、団塊世代とバブル世代が同じ価値観を共有できたからこそ成立した物語であり、下の世代からはどこか他人事に見える。

 今の40代(団塊ジュニア)にとって、50代(バブル世代)はお兄さん的存在で、ある種の憧れの対象だったのだが、それだけに深い断絶も感じる。団塊ジュニアは、戦後日本の核家族的なライフスタイルや企業形態はもちろんのこと、テレビ文化や雑誌文化といった戦後カルチャーの伝統をバブル世代から継承することはできても、その伝統は自分たちで打ち止めではないかと思う。

 下の世代はネットやスマホが当たり前のデジタルネイティブで、すでに昭和日本的なルールとはまったく違う価値観を生きている。彼らの中心はYouTube等の動画サイトや、InstagramやTwitter等のSNSであり、テレビは自分たちとは無関係な目上の人たちが出るメディアだという意識ではないかと思う。

 団塊ジュニアの強みは、テレビや雑誌等の旧メディアと、インターネット普及以降の新メディアの両方が理解できることだと思っていたが、近年の断絶を見ていると、もしかしたら、どちらにも居場所がないのかもしれない。50代の俳優が現役で活躍する姿は頼もしいが、自分たちの世代が彼らの年齢になった時に、同じように頑張れるのかと考えると気が重くなる。やれることはやるつもりだが、あまり楽観視はできないというのが正直な気持ちである。

(成馬零一)

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