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88rising CEO ショーン・ミヤシロが語る、アジアンカルチャーの未来「お互いを認め合うことで世界は進んでいく」

リアルサウンド

19/1/29(火) 12:00

 ヒップホップをメインにアジアンカルチャーを世界中に発信するメディア・プラットフォームであり、音楽レーベル/マネジメント/マーケティング会社と様々な側面をもつ<88rising>が、1月10日~11日に東阪で初の来日公演を行い、話題を読んでいる。(参考:88rising来日公演が示した、新しいアジアンカルチャーの確立ーーimdkmがレポート)所属アーティストのJojiが2018年に発表した1stアルバム『BALLADS 1』が、アメリカのビルボードアルバムチャートで初登場3位を記録、R&B/ヒップホップ部門ではアジア人として初めて1位を獲得するなど、異例の成功を収めつつある同社。その根幹には、どんなビジョンがあるのか。来日時に、同社のCEOを務めるショーン・ミヤシロにインタビューを行った。聞き手は、デジタル音楽ジャーナリストのジェイ・コウガミ。(編集部)

■88risingは善良な心の持ち主だけを選ぶ

ーー88risingとはどんな会社なのか、改めて教えてください。

ショーン:88risingは、アジアのカルチャーを讃えながら、人々を楽しませるコンテンツを生み出すエンターテインメント・カンパニーだ。アーティストを育て、彼らと一緒に作品を作り出して流通させるーーつまりレーベルとしての機能と、デジタルメディアに向けたコンテンツ制作の機能がある。最近はもう少しプレミアムなコンテンツとして、映画や台本付きのショウの制作にも力を入れていて、TVはもちろん、Netflix、Hulu、Doujin、TikTokなどとも仕事をしている。だから、ミュージシャン以外のクリエイターも所属しているよ。でも、一番に優先しているのはやはり音楽だね。良い音楽を作り続けるのはとても難しい。そのために、僕らはむやみに多くのアーティストと契約するのではなく、今、所属しているアーティストに自分のポテンシャルを気付かせて、それを最大限に引き出すことができるように努めている。契約するアーティストはとても慎重に選ぶよ。

ーー88risingにふさわしいアーティストはどんなタイプですか?

ショーン:第一に、既存のアーティストとは明確に違っている必要がある。例えば、Rich Brianがいるのに、また同じような音楽を作っている男性ラッパーはいらない。みんなそれぞれ違うのがいいんだ。第二に、とても良い人じゃないといけない。エゴが大きかったり、自己中心的な人と一緒に仕事をする時間はない。なぜなら、アーティストと仕事をするのは恋愛関係にも似ていて、ほぼ毎日、連絡を取り合う必要があるからだ。もし一人のアーティストが一緒に仕事をするのが難しいタイプだと、同時に進めている他の仕事にも大きな影響を与える。だから88risingは、志を同じくする自立した人で、善良な心の持ち主、そして友達になれるような人だけを入れている。

ーー契約したいアーティストをどのように探していますか?

ショーン:僕らは特に契約をするために新しいアーティストを探したり、売り込みに行ったりはしないよ。彼らの方から来るんだ。大体は断っているけれどね。それよりもむしろ、アーティストとは自然な形で出会うことが多い。例えばJojiの場合、韓国料理屋で食事をしていた時に友達が彼を連れてきたんだ。その時は彼が音楽を作っていることすら知らなかった。そしたら後日、「これちょっと聞いてみてよ」とメールが来て、そこからだんだんと発展していった。僕らはそういう風にやってきたんだよ。でも、最近はもう少し積極的にA&Rをやっていきたいとも考えている。今回、日本に来た理由の一つには、日本のアーティストの才能を理解したいというのもあるんだ。今後は、日本のマーケットにも進出したいと考えているからね。

ーーJojiの場合、音楽を始める前はYouTuberとして活動していました。ショーンさんは彼の音楽の才能を見極めて、音楽に集中するようにアドバイスしたのですか?

ショーン:JojiはもともとYouTubeチャンネルではなく、音楽がやりたかったんだ。まだ一緒に仕事をしてから一年しか経っていないけど、もうBillboardのヒップホップ/R&Bアルバムチャートで1位をとっているし、総合チャートでは3位。クレイジーだよ。これは、彼が自分の本当にやりたいことを理解した結果であって、僕らは彼の信念に沿って、その成長を手助けしたにすぎない。僕らは絶対にアーティストに命令はしない。対話を通して理解しあい、やりたいこと、またはやりたくないことを明確にしていくのが僕らのやり方だ。彼との仕事は今のところ、とても順調だよ。今回のアルバムで大きな注目を集めたから、次にやることはすごく重要だね。1曲で良いから、Spotifyで1億回再生されるとか、大ヒットを生むのが次のステップかな。

ーー88risingのオフィスではどんな人が働いていますか?

ショーン:若い人たちもたくさんいるし、音楽業界で長年過ごして、いろいろなことを経験してきたベテランもいる。強力な音楽チームがいて、最近はメジャーレーベルの人にも次のステップに進むための手伝いをしてもらっている。動画コンテンツの制作などでは若い人が多いかな。新鮮なアイデアは若い人たちが持っているし、若者向けのコンテンツを作るには、そのエネルギーが必要だから。現時点で、上海とロサンゼルスとニューヨークにオフィスがあって、どのオフィスも急速に成長しているよ。今はだいたい、60人くらいが働いている。

ーー他の拠点も探していますか?

ショーン:日本と東南アジアに現地チームが欲しいと考えている。本格的なオフィスを構えるのではなくて、一人か二人、ブランドの収入機会などを向上させる役割を持つ人が現地市場に欲しいね。昨夜のライブ(1月10日Zepp Tokyo)に来てくれた日本のファンは自然に発生したもので、計画的に何かの施策をしたわけではない。ただYouTubeに動画をアップロードして、世界中の人々に届くことを祈っただけ。でも、今後は現地で毎朝、「どうやってこの会社を良くしよう?」「どうやってこのプロジェクトを進めよう?」と考える人が必要だ。誰か良い人がいたら紹介してほしい。

■みんなが88risingの成功を願っている

ーーアメリカでは88risingのライブにどんな人々が訪れていますか?

ショーン:とても多様なファンがいるよ。アメリカだと、50%がアジア系アメリカ人で、残りの50%が白人、アフリカ系アメリカ人、メキシコ系、ラテン系……という感じかな。もともと狙っていたわけではないけれど、88risingを始めた当初からグローバルな精神を持つ会社にしたいとは考えていた。例えばHigher Brothersは母国語の中国語でコンテンツを作成できるけれど、プロジェクトはグローバルに進めてきた。結果として彼らは、中国だけではなく、アメリカでもたくさんの人々の気を引いた。コンテンツを様々な形で届けることで、幅広い層にアプローチすることができるんだ。例えばKOHHとフィーチャリングすると日本のリスナーにも興味を抱いてもらえるだろう?

ーーファン層がグローバルに拡大したことで、運営に変化はありましたか?

ショーン:リリースの戦略について、慎重に考えるようになった。始まった当初はアマチュアなスタイルで適当にリリースしていたところもあるけれど、今はもっと成熟した会社になったから、そうはいかない。僕らは一つの会社としてやっているけれど、同時にクルーでもあって、アーティストたちはみんな次のレベルに進みたいと考えている。そうなると、作品を埋もれさせないためにも、計画的にリリースする必要がある。アーティストがすぐにリリースしたいと言っても、そこは慎重に判断すべきだ。

ーー2018年は、88risingにとって飛躍の1年でしたね。

ショーン:本当にすごい1年で、多くの画期的な出来事があったよ。2月には、Rich Brianの最初のアルバム『Amen』がリリースされて、かなり好評だった。夏には88rising名義のコンピレーションアルバム『Head In The Clouds』もリリースしたし、その後にはJojiの『BALLADS 1』が続いた。世界中のアジア人の若者からの熱い期待を感じたし、アメリカでも多くの音楽メディアが好意的な記事を書いてくれた。ファンの方から、僕らの活動がどれだけ大切かを伝えるメールが届いたり、ライブのチケットが売り切れたり。

ーーライブ会場でファンと交流をすることはありますか?

ショーン:もちろんだよ! 僕なんてアーティストでさえないのに、みんな会うとものすごく喜んでくれるんだ。すごくワクワクしているのが伝わってくる。9月にロサンゼルスで開催した『HEAD IN THE CLOUDS FESTIVAL, the 88rising experience』は本当に思い出深いよ。なぜならそれは、アジア人のレーベルがアメリカで行った初めての大型音楽フェスティバルだったから。みんな、そのことをすごく誇りに思っていて、泣いている人もたくさんいた。グッズ販売も印象的だった。ライブの最中にも、僕らのTシャツを買うのに長蛇の列ができていた。そこまでして88risingのグッズを着て、レペゼンしたいんだと思うと、本当に僕らは何かを成し遂げようとしているんだと、大きな責任を感じるよ。みんなが僕らに成功してほしいと願っているのを強く感じるし、ここまで到達したのだから、彼らを悲しませるようなことは絶対にしたくない。だから、僕らは何をするにしても、より良いものを作らなければいけないんだ。

ーープレッシャーは感じますか?

ショーン:プレッシャーは自分で自分にかけている。ちょうど今日、『Vice』に「アジアンラップの急成長」というテーマの動画がアップされたんだけれど、『Hot 97』のナンバーワンヒップホップDJであるEbro Dardenが、この動画で88risingについて話しているんだ。課題はたくさんあるけれど、アジア人のファンが僕らを熱心に支持してくれていることはわかっているから、ちゃんと結果を出さないとね。

■日本のアーティストの音楽も世界に届けたい

ーー日本を訪れた印象は?

ショーン:日本は最高に素晴らしいよ。東京は世界一の街だ。これまでに7回訪れていて、その価値は十分に理解していると思う。来るたびにインスパイアされるよ。特に今回は、僕らにとって日本で初めてのツアーだから、すごくワクワクしている。昨夜のライブも最高だった。日本のファンは穏やかで静かなのかなと思っていたけれど、めちゃくちゃに暴れていてクレイジーで最高だった(笑)。それと、Higher Brothersが出演したからだと思うけれど、中国人も多かったね。わざわざ来てくれて嬉しかったよ。昨日のライブは本当に良いことばかりだ。Jojiが出演できなかったのは残念だったけれど、近いうちに彼も来日してライブをやるはず。絶対に成功するという確信がある。

ーー先ほど、日本のマーケットにも進出したいと言っていました。具体的なビジネスプランは?

ショーン:日本には本当に多くのエネルギーと才能とクリエイティビティが集結しているから、一度にすべてを手がけるのは不可能だね(笑)。まずは日本のマーケットをよく知ることからスタートかな。将来的には日本のアーティストと契約して、グループをプロデュースしたり、コンテンツを制作したいと考えているよ。日本のスタイルで、日本からリリースしたいんだ。そのためにも、現地にチームを作るのは大切だね。中国ではそれがとても効果的だった。「グローバルに考えて、ローカルに行動せよ」さ。善良で賢く、一生懸命に働き、責任感を持った情熱的な人材を求めているよ。グローバルな精神は、国際的なプロジェクトを通じて自然と身に付くから、そこはあまり気にしなくても良い。

ーー日本の音楽シーンは、ショーンさんの目にどう映っていますか?

ショーン:日本の音楽シーンはとても豊かな歴史を持っていると思う。昔のシティポップとか大好きなんだ。宇多田ヒカルとかTERIYAKI BOYZもいるよね。KOHHも最高だよ。彼はロックスターだ。でも、はっきり言わせてもらうと、今は日本国外で浸透しているアーティストがほとんどいないよね。韓国とは違って、日本のビッグアーティストは日本だけで有名だ。でも、だからこそ僕らが日本のアーティストと一緒に仕事をするにはぴったりの時期だと思う。僕らが世界でやってきたことを、日本のアーティストとやるのさ。それにふさわしいアーティストが、日本にはちゃんといることもわかっているよ。アメリカではいまも「日本はカッコイイ。深い歴史があって、不思議な国を作り出しているんだ」と思われていて、しかもそれは事実なんだから、日本のアーティストと一緒に仕事をして世界中に音楽を提供できたら、最高だと思わないかい?

ーーアジアのアーティストがアメリカで成功するポテンシャルについてはどう捉えていますか?

ショーン:ポテンシャルは本当に高いよ。実際に88risingは成功しているから。JojiやRich Brianを見て、「私たちにもできる」と思う人も増えているはず。K-POPもアメリカで大流行中だし、BTS (防弾少年団)なんてフットボールスタジアムでライブを成功させたからね。音楽のジャンルは僕らとはちょっと異なるけれど、僕や君と同じような目をしたアーティストが大きな成功を収めているんだ。世界的に、アジア系の人々のカルチャーを受け入れる志が高まっていると思う。そうじゃなければ、あれほどの成功にはなっていないはず。人々がお互いを認め合うことで、世界は進んでいくんだ。

ーー2019年はどんなビジョンを描いていますか。

ショーン:さらに精力的に進化していきたい。僕らの会社は世界の中でもかなり熱いインディペンデントなレーベルで、ブランドもあるし、動画だって自分たちで制作している。新しい音楽ビジネスのやり方として、業界にイノベーションを起こしているんだ。それと、明確にアジア系の企業だという理解があるのも強みになっている。「ミレニアル世代のグローバルなアジアカルチャーを盛り上げる」という88risingの理念をしっかりと心に留めておけば、すべてうまくいくはずさ。

ーー最近、GUESSともコラボレーションしていましたが、そのような他の企業との仕事も積極的に行っていく予定でしょうか?

ショーン:もちろん、オープンな姿勢でやっていくつもりだよ。でも、ブランドのために何かを作るということはしたくない。僕らがもともとやろうとしていることがあって、ブランドがそれをサポートしてくれるような関係であればやるつもりさ。たとえば僕らはフェスティバルを実現しなくてはいけない。そのために、ブランドはリソースや資金を調達する。それが理想的な関係だね。

ーー最終的に、88risingをどんな企業にしたいですか。

ショーン:最も重要なアジア系エンターテインメント企業になりたいと考えている。それが本当のゴールだ。もっとも、ビジネス的な意味合いはさておき、文化的な意味合いでは、すでに一番重要になっているはずだし、これまでの成果を振り返っても、歴史に残ることをやってきたと思う。でも、僕らはこれからもっと向上することができるし、さらに大きなことを成し遂げられるはずだ。約束するよ。(取材=ジェイ・コウガミ/構成=松田広宣、かぷぬ/写真=三橋優美子)