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ChouChoが「オレンジ色」で表現した青春時代の情景「未来に寄せる希望がここに込められている」

リアルサウンド

18/10/30(火) 14:00

 『ガールズ&パンツァー』や『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』など人気アニメのテーマソングを歌う人気のシンガー・ChouChoが、ニューシングル『オレンジ色』をリリース。表題曲は、NHKで放送中のTVアニメ『ツルネ ―風舞高校弓道部―』(以下、『ツルネ』)のエンディングテーマで、京都アニメーションが制作していることでも話題だ。そんな注目アニメのエンディングを彩る楽曲「オレンジ色」は、青春時代のさまざまな想いを「オレンジ色」という言葉で表現した極上のバラードに仕上がった。ChouCho自身弓道部の出身ということで、同アニメに強くシンパシーを感じて制作したと話す。また、カップリングには、自身が作詞作曲を手がけた、表題曲とは対照的なクールで激しいナンバー「still」を収録。今回のシングルの制作にかける想いを聞いた。(榑林史章)

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■日常系や青春系の作品に合う声

ーーアニメ『ツルネ』のED主題歌「オレンジ色」を担当するChouChoさん。原作小説を読まれたとのことで、どんな印象でしたか?

ChouCho:『ツルネ』は高校の弓道部のお話で、私も高校の3年間弓道部に所属していました。『ツルネ』を読むと弓道の描写がとても繊細で、空気感まで見事に描かれていたことに驚きました。弓を構えた時や、的を射た時の感覚や映像が頭に浮かんで、当時の状況がよみがえりました。弓道の経験がない方でも、「弓道はきっとこんな感じなのかな」と、想像してもらいやすいと思います。

ーーChouChoさんは、どうして弓道部に入ろうと思ったのですか?

ChouCho:袴姿が、すごく格好いいと思ったんです(笑)。当時私は宮崎に住んでいて、都城というところは和弓の生産が盛んで、毎年「都城弓まつり全国弓道大会」が開催されるほど、弓道が根付いている地域です。だから弓道が身近だったのもあったし。高校に入学したての頃に、部活紹介で観た弓道部の先輩の袴姿がすてきで、「私も袴を着たい!」と思って入部しました。

ーー実際に入って、弓道は楽しかった?

ChouCho:すごく楽しかったですよ。弱小弓道部だったので、体育会系独特の厳しさはなくて。アットホームな感覚でみんなとワイワイしながら、楽しく弓道をやっている感じでした。そこは『ツルネ』の真剣な世界観と違いますけど。

ーー『ツルネ』という題名は、弓を放つ瞬間の音(弦音)とのことですが、どういう感じの音なのでしょうか。

ChouCho:「ビンッ」って感じでしょうか。弦を弾く音で、私の中では「凛とした音」という印象です。弓道には独特の用語が多いのですが、「弦音」という言葉は私の中でも印象深く残っていたので、作品のタイトルとして『ツルネ』という言葉を見た時に、とても心に響くものがありました。

ーー弓道部時代のことで、何か印象的に覚えていることはありますか?

ChouCho:試合の時のことは、よく覚えています。『ツルネ』の中でも描かれていますが、試合の時の空気は本当に緊張感があって。静まりかえった中で弓を放つ瞬間の感覚は、弓道を離れて何年も経った今でも、リアルに思い出せるくらい印象に残っています。ライブの緊張とも違う、他の武道やスポーツでは感じられない特殊な感覚だと思います。

ーー自分自身との戦いみたいな感じですね。

ChouCho:そうですね。自分の集中力との戦いです。今思えば、楽曲制作やレコーディングの時の集中力は、この時に鍛えられたものなんだろうなって思いますね。

ーーChouChoさんがこれまでテーマソングを担当されてきたアニメは、今回の『ツルネ』を含めて、青春を題材にしたものが多いですが、それはどうしてだと思いますか?

ChouCho:私の声質がパワー系ではないので、アクションやバトルの作品よりも、日常系や青春系の作品に合うんだろうと客観的に思います。

■自然と温かくノスタルジックな気持ちになる

ーーそんなChouChoさんが歌う「オレンジ色」は、藤井万利子さんの作詞作曲によるミディアムバラードで、実に胸に響く楽曲。最初に聴いた時は、どんな印象を持ちましたか?

ChouCho:小説に出てくる試合の場面ではなく、友情物語の部分にフォーカスした、温かい曲だなと思ったのが第一印象です。「この曲に自分の声が重なったら、どんな曲になるんだろう?」と想像して、ワクワクしました。

ーー歌う部分で、意識したところや大変だったところはありましたか?

ChouCho:最初に、キー設定をどうしようか迷いました。この曲は、サビがそんなに高くなくて、逆にAメロが高いという、ちょっと変わったメロディーになっていて。キー設定を間違えると、サビが埋もれてしまうので、時間をかけました。私の声がいちばん響いて、聴いた人が心地良く、そして『ツルネ』という作品にとっていちばん合うキーはどれなのか。高いキーで歌ってみたり、低いキーでも歌ってみたり、何パターンも実際に歌って聴き比べて決めていきました。

ーーChouChoさんの歌い方は、今までにないほどシンプルなものですが、それはどういった意図があったのですか?

ChouCho:曲自体がシンプルで美しいので、歌い上げるよりも素朴さを大事にするほうが、この曲の魅力を引き出せるんじゃないかと思いました。それで、上手く歌うよりも言葉をしっかり聴かせることを意識して歌っています。これまでこういう歌い方をした経験がなかったので、そこは新しい歌い方を見つけた感じがありました。

ーー歌詞を聴かせるというイメージでしょうか。

ChouCho:そうですね。言葉を詠むというか……情景描写が美しいので、その言葉をしっかり届けたいと思いました。童謡に近い懐かしさも感じたので、自然にノスタルジックな気持ちにもなりましたね。

ーー最後はファルセットのフェイクで歌い上げて終わっていて、そういう感じは、今までのChouChoさんの曲にはなかったものだったので新鮮でした。

ChouCho:私も新鮮でした(笑)。このフェイクは、作曲者の藤井さんから入れてほしいと提案があって挑戦したんです。余韻というか、曲が終わってパツッと切れるよりも、温かい情景を残していくようなイメージです。曲の持つ温かさがほんのりと残るような感覚で、ファルセットで歌ったことで、自分自身でも余韻や広がりを感じました。

ーーまた、Dメロからオチサビにかけては、エモーションが溢れる感じです。青春時代を思い出していたら、Dメロあたりで感極まって涙がこぼれてしまったような雰囲気かなと思いました。

ChouCho:そんな風に想像を広げて聴いてくれるのは、すごく嬉しいです。Dメロは他とはメロディが違いますし、歌詞も切なくなっていて、ここには言葉にならない想いが込められています。青春時代というのは、子どもでも大人でもない時期で、その中で悩みや葛藤があって。そういう青春時代のもやもやとしたものが、このDメロで表現されているのかなって私は思いました。

ーーそのDメロの最後に〈いつか届け〉というフレーズが出てきますが、ここにはどんな想いが込められていますか?

ChouCho:高校生の時は、未来は輝いて見えて、夢がいっぱい溢れているものです。そういう未来に寄せる希望が、ここに込められていると思います。〈いつか〉と言いつつも、必ず届くと信じていることも伝わります。

ーータイトルにあるオレンジという色は、つまり青春の色でもある。ジャケットのイラストが、まさしくそういうイメージなんでしょうね。

ChouCho:そうですね。私自身学生時代は、まさにこのイラストのような夕陽の風景を部活帰りに観ながら、毎日帰宅していたんです。だからジャケットを見た時は、すごく懐かしいなって思いました。イラストには手前に階段が描いてあるんですけど、私の帰り道にもこういう階段があって、友だちと階段に座っていろんなことを話していたなって、思い出されますね。

ーーどういう話をしていたんですか?

ChouCho:部活の話や恋愛の話、学校のことなど。将来の話もしました。私はその頃から歌手になりたいと思っていたので、夢を友だちに打ち明けたりとか。その時の弓道部でいちばん仲の良かった友だちは、2人とも就職して東京に住んでいて、たまに連絡を取って会っています。

ーーMVは、ChouChoさんが学校で歌ってるシーンと、少年3人の思い出のシーンで構成されていて、ノスタルジックな気持ちになる映像ですね。

ChouCho:成田にある、廃校になった小学校をお借りして撮影しました。大人になると学校に行く機会がないので、校舎に入っただけで懐かしい気持ちでいっぱいになりました。机や椅子がとても小さくて、可愛らしくて。全部が懐かしくて、そこにいるだけで、自然とノスタルジックで温かい気持ちになることができました。そんな自然な表情を、ぜひ観ていただけたらうれしいです。

■カップリングで発散!

ーーカップリング曲の「still」は、一転してすごくクールで格好いい楽曲。シューゲイザーとデジロックが融合したような雰囲気で、今までのChouChoさんの曲にはなかったタイプですね。

ChouCho:今までの楽曲の中で、いちばんハードでありクールでもあります。

ーー作詞作曲をChouChoさんご自身で手がけられていますが、作り始めた時は、どういうイメージを持っていたんですか?

ChouCho:「オレンジ色」が、とても温かくて柔らかい曲なので、それといい感じで対比になる曲にしたいと思っていました。それで、携帯のボイスメモにストックしていたメロディを参考にしながら、ロジックで打ち込んでデモを作っていきました。私が作ったデモはもっとシンプルなものだったんですけど、それをスタッフや編曲の村山☆潤さんと一緒に聴きながら、先ほど話したような対比になる曲にしたいと提案させていただいて。その上で村山さんが、アレンジをしてくれました。ただ、ここまで極端なものになるとは、デモの段階では想像もしていなかったです(笑)。

ーー途中でセリフのパートがありますが、こういうアイデアはデモの段階からですか?

ChouCho:いえ、セリフはスタジオでプロデューサーから「セリフを入れよう」と、急にアイデアが出てきたんです。「え! 私がセリフをしゃべるんですか?」と、聞いた時はすごく驚いて戸惑いましたけど、「でも絶対に合うから」と言っていただいて、チャレンジしてみようと思ったんです。それで、歌録りをする直前にセリフの文言を自分で考えました。

ーー実際に録ってどうでした?

ChouCho:最初はどんなテンションでしゃべっていいか分からなかったので、録りながら決めていった感じなんです。普段の自分っぽくしゃべると、本当に普通っぽくなってしまって。だから、普段より高い声でしゃべったり、落ち着いてゆっくりしゃべるとか、いろいろ試しましたね。最終的に採用されたのは、幼い感じの高めの声でしゃべったものでした。なので普段のしゃべり方とは、まったく違っています。

ーー歌詞には〈i still believe in me〉というフレーズが、何度も登場します。この言葉からは、制作過程における苦しい内面が表現されていると思いました。

ChouCho:分かりますか(笑)。この時期は、今回のシングルの他に、『ガールズ&パンツァー TV&OVA 5.1ch Blu-ray Disc BOX』に収録される、佐咲紗花さんとのデュエット曲「Still a long way to go」と私のソロ曲も同時進行で作っていたから、すごくハードな制作だったんです。作曲はまだいいのですが、作詞がとにかく大変で、自分の中から出て来るもの、自分の中にある可能性を信じて進むしかないと思って、そういうことをテーマにして歌詞を書いたんです。それにカップリング曲は、タイアップが付いていないので制約がないんですね。だから、そのぶん歌詞で発散していこうと思って。実際に「still」は最後にできた曲なので、より時の状況が反映された歌詞になりました。

ーー生みの苦しみみたいなものがあるんですね。

ChouCho:ありますよ。作曲は、やり始めてからそれほど経っていないので、まだ楽しさのほうが勝っているんです。でも作詞の場合は、タイアップがあるときはテーマが決まっているので、それに沿って書いていけばいいんですけど……カップリング曲とかアルバムに収録するオリジナル曲の場合はテーマが決まっていないので、何でも書いていい分、何を書くかがすごく難しくて悩んでしまうんです。

ーー〈i still believe in me〉と、英語にしたのは何か訳が?

ChouCho:曲を作っている時から、ここは英語が合うだろうなというのは感じていて。私の歌詞で、ここまで英語が多いのは珍しいんですけど、長い音符が多いメロディーだったので、日本語だと間延びしてしまうんですね。だからAメロとサビの頭は、英語にしようと思っていました。それに英語だと、自分の感情をストレートに込めやすいんです。日本語だと直接的すぎて恥ずかしくなる言葉でも、英語だと一旦フィルターを通す感覚があるので、気持ちを乗せやすいんです。

ーー英語のフレーズを考えるのも、日本語の作詞とは違った感じになりますよね。

ChouCho:はい。書きたい英語の言葉があっても、音にはまっていなければダメだし。私はネイティブではないので、やっぱり日本語みたいに自由自在にというわけにはいかなくて。はまらなかった言葉があったとして、それと同じ意味で違う言葉に置き換えるのに、その都度調べたりしながら探さなくてはいけなくて、時間がかかります。それに、メロディが生きる語感の言葉を選びたいので、そうすると言葉も制限されてしまうし。

ーーそうした創作過程を経てのレコーディングは、スムーズに進んだんですか?

ChouCho:そもそもデモを作った時はこんなに激しくなかったので、デモでは裏声を使って歌っていたんです。でもアレンジが仕上がったら、オケが激しくガンガンに鳴っている感じになったので、本番のレコーディングでは、それに負けないように歌わなくちゃいけなくて。特にサビは、いつも以上にガツンとパワーを込めて歌いました。だから、サビは歌い方自体がいつもとは違っていると思います。

ーー「オレンジ色」の話では、部活ものや青春ものが似合う声という話をしましたが、「still」を聴くと、ロボットアニメ系でも合いそうだなって思いました。

ChouCho:イケそうですか。良かったです(笑)。こういう声や歌い方も持っているんだよということを、たくさんの方に知ってほしいと思っていたので、そういう意見はうれしいです。

ーーカップリングでは、挑戦したい気持ちがあったんですか?

ChouCho:カップリングは、毎回何かしらの挑戦をしたいと思っています。いつもとは違う一面を見せるチャンスでもあるので、新しい部分をどんどん出したいと思って、今回も臆することなく出していきました。こういう曲が歌えることに気づけたのも収穫でした。

 今思い出したんですけど、歌のディレクションは村山さんで。「もっと出して!」「もっとイケる!」みたいな指示が、何回もありました。どうしてもきれいに歌おうとしてしまうんですけど、「きれいに歌うよりも感情を爆発させてぶつけるように」と言われて。それで、自分の殻が破れるまで、何度も歌い直しました。

ーー今後もたくさん作曲していくと思いますが、今後はどんな曲を作りたいですか?

ChouCho:いつもシングルのA面はタイアップのアニメが青春ものが多いこともあって、明るく前向きな曲になることが多くて。カップリングはそれとの対比もあって、自分で作曲すると自然に少し暗めでアンニュイな雰囲気の曲が多くなるんです。なので今後は、逆にすごく明るい曲も作ってみたいです。

ーーリリース後は、『ガールズ&パンツァー』や『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』といった作品に関連したイベントに出演。作品と共に育っているみたいな感覚もありますね。

ChouCho:そのアニメが続いていて、その中でキャラクターが成長していく姿を見守ることができるのは、とてもうれしいことです。また、そのキャラクターの成長後を歌詞にして書けたり、一つの作品やキャラクターに対していろんな角度から楽曲を作ることもなかなかないことなので、自分自身すごく成長させていただいている感覚があります。それに、一緒に歩んでいるからこそ書ける歌詞もありますしね。今回携わらせていただいた『ツルネ』も、そういう作品の一つになったらうれしいです。(榑林史章)

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