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ぴあ

城 南海が歌で届ける“人生の機微” 富貴晴美&サラ・オレインと『西郷どん』再現した東京公演レポ

リアルサウンド

18/7/22(日) 10:00

 NHK大河ドラマ『西郷どん』の劇中歌やエンディングの大河紀行「西郷どん紀行~奄美大島・沖永良部島編~」を担当して人気の、奄美大島出身のシンガー・城 南海が、全国5カ所6公演のツアー『ウタアシビ2018夏』を開催、7月21日横浜・ランドマークホールでツアーファイナルを迎えた。7月7日と8日には、東京・恵比寿ガーデンルームで東京公演を行った城。8月にデビュー10年目に突入することに際し、デビュー当時の楽曲や代表曲を交えながら、夏らしいカバーも披露。さらにゲストとして作曲家・富貴晴美とサラ・オレインを迎え、NHK大河ドラマ『西郷どん』の楽曲をコラボで披露。『西郷どん』ファンには忘れられない、豪華な一夜になった。

デビュー10年の名曲が彩るライブ

 「夏の曲、1年ぶりくらいに歌う曲、ファンの方からぜひ歌ってほしいとの声があった曲。私の10年を聴いてください」と、城 南海。昨年夏にリリースしたシングル「あなたに逢えてよかった」で、夕陽のように温かみのあるバンドサウンドとピュアさのあるボーカルを聴かせて始まったライブは、2009年の1stアルバム『加那ーイトシキヒトヨー』からも楽曲を多数披露した。「蛍恋」は、ピアノのイントロと和のメロディが印象的。飛んでいる蛍を手ですくうような手振りもあり、美しい自然の情景が浮かんだ。また「太陽とかくれんぼ」では、民族っぽい音に現代的なアレンジがほどこされた、ワールドミュージックといったサウンドで、太古の世界にトリップした感覚が広がる。さらに昨年発表の楽曲「Silence」では、R&Bのフェイクのようなこぶしも聴かせ、ポップスシンガーとしての存在感も発揮した。また夏をイメージしたJ-POPのカバーコーナーでは、2015年にリリースしたカバーアルバム『ミナミカゼ』にも収録されてお馴染みの、井上陽水の「少年時代」をはじめ、藤井フミヤの「Another Orion」や大塚愛の「プラネタリウム」のカバーも披露。THE BOOMの「風になりたい」のカバーでは、しっとりとした雰囲気から一転、ラテンのリズムに合わせて会場には手拍子やかけ声が広がり、にぎやかな様子で会場がひとつになった。

 このライブでいちばんの見どころになったのは、後半戦最初の『西郷どん』コーナーだ。まずは、同ドラマ劇中歌として話題を集めた「愛加那」を、弾き語りで披露してくれた。「愛加那」は、西郷吉之助(隆盛)が奄美大島に流刑されていた間の島妻の名前で、大河ドラマ『西郷どん』では、女優・二階堂ふみが愛加那を好演。楽曲「愛加那」は、ふたりの別れのシーンで流れて視聴者の涙を誘った。歌だけでなく作詞も担当した城は「作詞をするときには、改めて愛加那さんの気持ちを想像しました。愛加那さんは西郷さんと奄美で3年間一緒に暮らして、きっとその幸せな3年間を思い出しながら、その後の人生を送っていったんだろうと思います。愛加那さんの気持ちが、少しでも伝わったらうれしいです」と紹介。弾き語りによる「愛加那」は実に感動的で、愛加那の広く大きな愛情や、そこにおける切なさが歌詞とも重なって、会場にいた誰もがきっと胸が締め付けられる想いになったことだろう。

西郷どんトークで制作秘話明かす

 この『西郷どん』コーナーには、大河ドラマ『西郷どん』の音楽を手がけた作曲家・富貴晴美がゲストとして登場してコーナーに華を添えた。「“富貴どん”と呼んでください」と、登場そうそうから笑いを取って会場を和ませた富貴。その富貴のピアノをバックに歌ったのは、「西郷どん紀行〜奄美大島・沖永良部島編〜」だ。現代的なピアノと民族的なメロディの融合は秀逸で、そこに奄美の独特言葉がハマり、外国の歌を聴いているようだ。しかし、どこかで非常に慣れ親しんでいる感覚もあり、きっと日本人のDNAが知っている音楽なのかもしれないと感じた。

 続けて、同ドラマの劇中曲でサラ・オレインが歌った、「我が故郷」を歌う。歌詞がない楽曲で、美しいスキャットが楽器のように奏でられると、そこに美しいハーモニーが新たに重なる。「え!」と驚いた観客の前に現れたのは、城の歌声ハモりながら登場したサラ・オレインだ。繊細さがありながら、でもとても力強く壮大な歌声で、まるで天使がその場に降りてきそうな神々しさがあった。静かにふたりの歌声に聴き惚れるばかりの観客だが、歌が鳴り止むと、一気に大歓声と拍手が会場に沸き起こった。「ラジオで共演させていただいたときにお声がけをさせていただいて。富貴どん、サラどんとこの曲を歌えて、南海どんは幸せです」と話した城だが、本当に幸せだったのは、その場に居合わせた観客のほうだろう。

 MCでは、3人がお互いを“○○どん”と呼び合いながら、まるで女子会のように『西郷どん』トークに花が咲いた。富貴は、2人のことを動画サイトで見て知ったそうで、「南海どんを動画サイトで初めて知ったときは、“愛加那さんだ!”と思った」と、起用の経緯を明かす。サラは、「ドラマで『愛加那』が流れたシーンで、感動して泣いてしまいました。ナレーターの方には申し訳ないけど、ナレーションがまったく耳に入らないほど歌に引き込まれてしまった」と、「愛加那」を歌った城を絶賛。

 そんな「愛加那」の作詞も担当した城は、「実は、先にサラどんが歌った「我が故郷」を聴いていたから、私もきっと〈ウ〜ア〜〉で歌うものだと思っていたんです。そうしたら突然『歌詞を書いてほしい』と、無茶振りをされてしまって」と、冗談交じりに制作裏話を明かす。また「我が故郷」は、「西郷どん〜メイン・テーマ〜」を制作する過程で、派生して生まれた楽曲だったとも。普通は聞けない音楽制作の舞台裏の話に、観客は興味津々といった様子で、3人の話に熱中で聞き入った。そして最後にはその「西郷どん〜メイン・テーマ〜」を、富貴どんのピアノをバックに、南海どん、サラどん、さらに“観客どん”のみんなで一緒に歌って、『西郷どん』コーナーを締めくくった。

人生の機微を歌う時代を超えたメッセージ

 ふたりを送り出し、「夢のような時間でしたね。自分でも感動しちゃいました」と、しばらく放心状態といった雰囲気だった城は、気を取り直して2009年のデビューシングル表題曲「アイツムギ」を歌った。「デビューから10年、この曲が私を支えてくれました」と、紹介した城。同曲は、川村結花の作詞・作曲で、どこか民謡的なメロディやコード感、そして島唄特有の節回しが当時から話題を集めた。透明感と凛とした佇まいを持った歌声もあいまって、鹿児島県の音楽チャートでは初登場1位を記録した。愛を受けつないでいく様子を伝統工芸品の大島紬と重ねた歌詞からは、「愛加那」とも通じる、絆の強さや包容力が根底に流れていると感じた。

 また、琉球地方に伝わる「イトゥ〜ワイド節」も歌われた。「『イトゥ』は仕事歌です。さとうきびを売り歩くつもりで、私に続いて一緒に歌ってください」と城。また、「ワイド節」は徳之島の歌で、「徳之島は闘牛が盛んでこういう歌が生まれました」と語る。奄美大島に生まれ育ち、子どものころ徳之島に住んでいた時期もあったという、彼女ならではの選曲だろう。曲の後半は、威勢のいい雰囲気で、かけ声を入れたり振り付けもあったりと、過剰は一気にお祭りのようなにぎやかさになった。

 「アイツムギ」では愛を歌い、「イトゥ」は仕事の厳しさ、そして「ワイド節」は遊びに興じる楽しさを歌う。これらはつまり、人生の機微であり、生きることの“い・ろ・は”だと言えるだろう。長い人生を謳歌するための、時代を超えたメッセージが、城の歌の根底にはある。彼女のファンは、ある程度の社会的地位を確立した大人世代メインだ。きっと城 南海の楽曲は、人生の残り半分を共に過ごす人生のBGMとして、そうした大人の世代の心に響いている。

(文=榑林史章)

城 南海オフィシャルサイト

 

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