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HIKAKIN & SEIKIN、スカイピース、フィッシャーズ……YouTuberはなぜ“応援歌”を歌うのか

リアルサウンド

18/9/8(土) 10:00

 飛ぶ鳥を落とす勢いの活躍を見せるYouTuberたち。彼らへの技術提供やマネジメントを手がけるUUUM株式会社の鎌田和樹社長によると、現在日本で活動しているYouTuberは1〜2万人ほどという(参考:PRESIDENT online「プロのユーチューバーは日本に何人いるか」)。中にはYouTubeの枠を超え、TVや雑誌、舞台へと飛び出していく才能も現れていることから、いまやYouTubeはエンタメの次世代を担う原石の宝庫であると言っても過言ではないだろう。

 そんな中、人気のYouTuberがミュージシャンとしてメジャーデビューする事態が相次いでいる。HIKAKIN & SEIKINをはじめ、スカイピース、フィッシャーズ、歩乃華、みやかわくんなどがその例だ(参考:Fischer’s、歩乃華、みやかわくん、スカイピース……YouTuberの歌手デビュー、なぜ相次ぐ?)。参考記事でも述べられている通り、お笑い芸人や俳優、モデルなど畑違いの場所からCDデビューを果たす例は決して珍しくはない。人気者を音楽のフィールドに持ち込み、ヒットを狙う手法はすでに業界では確立されたやり方だからだ。しかし、実際の支持が伴うかというと蓋を開けてみなければわからないもの。YouTuberたちの例を見ると、HIKAKIN & SEIKINのリリースした『雑草』は発売と同時にiTunes総合で1位の快挙を達成。スカイピースのメジャーデビューアルバム『にゅ~べいび~』もiTunesランキング、LINE MUSICランキング共に1位を獲得する大ヒットぶりだ。ではなぜ、これほどまでにYouTuberたちの音楽はファンを引きつけたのだろうか。

 代表的な楽曲をみていくと、まずHIKAKIN & SEIKINの「雑草」はEDMサウンド特有のループするフレーズが特徴的。〈Wo oh oh!〉と鼓舞するような雄叫びに次第に気持ちも高ぶり、ラストの盛り上がりにはカタルシスさえ感じるほどだ。スカイピースの1stシングル表題曲「雨が降るから虹が出る」は、アニメ『七つの大罪』のオープニングにも抜擢されたゴリゴリのミクスチャーロック。しかし曲中にはバラード調に歌い上げるフレーズあり、ラップありと変化に富んでおり聴き応えも十分だ。そしてフィッシャーズの「虹」は、ホーンを取り入れた明るい青春ロックといった様相。メンバー全員が関わって作り上げたオリジナル楽曲とのことで、パートごとにそれぞれの個性も発揮され、シンプルながら良曲と言っていいだろう。

 聴き比べてみると、楽曲というよりは歌詞からある共通項が浮かび上がってくる。それはいずれも「応援歌」であることだ。たとえば「雑草」では、〈夢見る未来へと〉〈何度倒れようと〉〈さあ立ち上がれ今〉〈蕾は開くはず〉という夢をあきらめない姿勢を歌ったフレーズが執拗に繰り返される。また、スカイピースの「雨が降るから虹が出る」では〈何度だって諦めかけた 何度だって手を取ってくれた/君がいたから どんな困難も超えていける〉と力強く未来へと向かう言葉が並び、フィッシャーズの「虹」は〈仲間の数だけ夢があるのさ みんなで 叶えていくストーリー〉とストレートにメンバーとの絆を歌うことで悩める人々の背中を押す。

 J-POPの大半を占めるのがラブソングである中、YouTuberたちの作る楽曲が「応援歌」であることはおそらく偶然ではない。彼らが今「夢が叶う」と口にすることには大きな意味がある。なぜなら彼らはオーディションやスカウトで選ばれる芸能人とは違う。出自はごくごく平凡ながら、YouTubeという誰にでも平等に使えるツールをきっかけに一躍スターへと駆け上がった人々だ。若い世代にとってはその姿が「好きなことで食べていく」「諦めなければ報われる」を体現したものに映っているとしても不思議はない。一見するとありきたりなメッセージではある。しかし、かつては自分と同じ“普通の人”だったYouTuberが、成功の上で発する言葉は、決して遠い世界の出来事ではなく、むしろ身近にも感じられることだろう。「もしかしたら自分にも」。そんな思いを抱かせるリアルな「応援歌」がここにはある。

 HIKAKINしかり、成功する前に味わった苦境を公言するYouTuberは多い。とすると当人たちが、かつての自分と同じように苦しみ、悩む人らを応援しようという思いを抱くのは自然なことのようにも思える。YouTuberという活動そのもので、画面の前の誰かに希望を与えたいという意気込みもあるだろう。その意味でも彼らが「応援歌」にたどりついたのは必然だったのだ。歌われるべくして歌われた“歌”は、かつての自分たちを救い、次世代を担う才能へのはなむけにもなっていくことだろう。

■渡部あきこ
編集者/フリーライター。映画、アニメ、漫画、ゲーム、音楽などカルチャー全般から旅、日本酒、伝統文化まで幅広く執筆。福島県在住。

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