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ぴあ

『中学聖日記』は現代社会を生きる“大人”を揺さぶり続ける 剥がれだした有村架純の仮面

リアルサウンド

18/10/30(火) 6:00

 ドラマ『中学聖日記』(TBS系)がどんどん面白くなってきた。中学生と教師の恋というテーマゆえに賛否両論あるが、このドラマがどうにも気になってしょうがない。「教師としてあるまじき純愛」と謳っているが、このドラマの面白さは、「純愛」ではなく、別のところにあるのではないか。3話を経て、純愛とは言い難い煩悩まみれの15の恋が暴走し、自分を精一杯取り繕った大人たちの仮面が剥がれ、それぞれの本音がようやく見えてきた。

参考:有村架純、ついに岡田健史への恋心に気づき涙 『中学聖日記』は怒濤の展開に

 『Nのために』『リバース』(TBS)などの新井順子プロデューサー、塚原あゆ子演出に加え、『FINAL CUT』(カンテレ・フジテレビ系)『花燃ゆ』(NHK総合)の脚本を担当する金子ありさという3人の女性が手がけている『中学聖日記』。雨やプールにおける水の演出、金魚鉢か何かの中にいるような、丸みを帯びたフレーム、彼らを照らす柔らかな日の光、そして常に誰かに見られているかもしれないというサスペンス、背徳感を生み出すカメラのシャッター音と、実にスリリングかつ繊細なタッチで、思春期の恋、教師と生徒の恋という瑞々しく危うい何かを描き出している。

 初回放送後、ネットでは多くの批判の声が見受けられた。その理由は、マキタスポーツ演じる上布が言うところの“メンタルとフィジカルが相半ばする”「触れたい」盛りの「15の恋」の暴走は、とうてい「純愛」という言葉で抑えきれるものではないということ。そして教師という「聖職」に従事する無垢なヒロインであるべき有村架純演じる聖の内面から染み出てくる、夏木マリ演じる教頭が言うところの「女くささ」への違和感だったのではないか。

 どうにも嘘くさいと言ったらなんだが、絵に書いたように生真面目で純真な新人教師は、常に真っ直ぐに理想を語り、教員採用試験の志望動機で書いたような「教師になった理由」を語り、まるで花嫁のスピーチのように彼氏への“尊敬”を語る。ドラマ『獣になれない私たち』(日本テレビ系)の1話における常に完璧な笑顔を作り、松田龍平に「キモい」と言われる新垣結衣のように、聖もまた、何かしら取り繕っているように見えるのは、こちらの考えすぎだろうか。

 それでいて、聖は長い髪が前にかからないように掻き分けながら、転んでいる生徒・黒岩晶(岡田健史)に手を差し伸べることで意図せずして彼を刺激したり、さらには「きれいな顔してるね」と声をかけたりする。それだけで中学生・晶の心は“聖ちゃん”でいっぱいになってしまうのである。

 このドラマはそういう、耳障りのいい言葉でまとめようとするとどうしてもはみださずにはいられない何かで溢れている。その象徴的な存在が、むいてもむいても次が出てくる“ラッキョウ”のように様々な要素を併せ持った、自身をバイセクシャルであると公言する、吉田羊演じる原口律というキャラクターである。

 町田啓太演じる聖の婚約者・勝太郎と上司・律との関係性を見ていると、1月に放送されたドラマ『女子的生活』(NHK総合)における、トランスジェンダーを演じた志尊淳と同級生・町田啓太の関係を思い出さずにはいられない。性別を越えた、何でも本音で語り合える居心地のいい関係。それは「原口さんは原口さんだから」と屈託ない笑顔を浮かべ、それだけで居心地のよい雰囲気を作りだすことができる、町田啓太の性質ゆえだろう。聖の前では“理想の彼氏”を演じている勝太郎は、律の前では悩みや迷いを全て吐露することができる。だが、この関係性が『女子的生活』の2人の関係と違うのは、バイセクシャルである彼女は、勝太郎を十分に恋愛対象として意識し得るところにある。

 このドラマの大人たちには、視聴者にはわかりづらい彼らの本音を語らせるための「相談役」とも言える存在がいる。勝太郎にとっての律であり、聖にとっての千鶴(友近)であり、晶の母親・愛子(夏川結衣)にとっての上布だ。勝太郎、聖、愛子は常にそれぞれのキャラクター(理想の恋人、教師、母親)に徹して、それぞれの「相談役」たちに本音を吐露し、自分でも気づいていないもう一つの姿を引き出されるわけである。

 逆に言えば、そうまでしないと表に出せないものを抱えて生きている大人たち、常に表の自分と裏の自分を持ち合わせ、取り繕わないとやっていけない大人たちの対極に、晶や岩崎(小野莉奈)はじめ爆発しそうな思春期のモヤモヤと恋愛感情をそのまま相手にぶつけ、周囲にも撒き散らしていく中学生たちがいる。彼らの衝動が、取り繕ってばかりの大人たちを揺さぶり、たきつける。

 3話の終盤、ようやく聖は自分の本音を語り始める。真面目な新任教師は、生徒に抱いてしまった恋心を吐露し、晶と同じく「どうかしている」自分に気づく。3話は、大人たちそれぞれが隠していた感情に火をつけてしまった回だった。聖は晶への思いに気づき、勝太郎が無理をしている律の手をとったことで、律は勝太郎にキスをした。そして晶の母親の心には、聖への疑惑の火がついた。それぞれが隠している本音を炙りだされつつあるこの先、自分を取り繕えなくなっていく彼らは、どう動くのだろう。

 今期ドラマのヒロインたちが、そろって周囲から与えられた自分のイメージ通りに生きることに固執し、取り繕い、疲弊していることからわかるように、現代の大人たちは何かしらの鎧を背負い、本音さえも吐露できない。そんな社会だからこそ、このドラマは、本能のままに行動する子供たちを対極に置き、現代社会を生きる、取り繕った大人たちに揺さぶりをかけるのかもしれない。(藤原奈緒)

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