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ぴあ

いま、最高の一本に出会える

BTS、『LOVE YOURSELF』シリーズで見せた大人への成長 『結 ‘Answer’』で示したもの

リアルサウンド

18/9/3(月) 8:00

 8月24日にリリースされた『LOVE YOURSELF 結 ‘Answer’』で、デビューミニアルバム『2 Cool 4 Skool』〜『Skool Luv Affair』の“学校3部作”、『花様年華』シリーズ=“青春3部作”に続くBTS(防弾少年団)の新たな3部作は幕を閉じた。今作は前2作の楽曲に新曲を加え、1枚のアルバムとして再構成し直した変形のリパッケージ(韓国アイドルのアルバムではよくあるリリース形式)で、『花様年華』シリーズにおける『Young Forever』と似た位置づけと言えるだろう。すでに『Tear』リリース時にティーザーとして公開されていた「Euphoria」から始まり、『Her』ー『Tear』ー『Answer』とアルバムのリリース順に構成された楽曲は、3人のラッパーのソロトラックを挟んで展開してゆく。

 『LYS』シリーズの前にBTSを取り巻く環境は大きく変わったが、それに伴い彼らに投げかけられた疑問符への出来うる限りの解答が示されたのが、まさにこの『Answer』と言えるのではないだろうか。タイトル曲の「IDOL」は、南アフリカ発祥のハウスジャンルであるゴム(gqom)と韓国の民族音楽である国楽をミックスさせている。MVには随所に韓国的なモチーフが散りばめられ、衣装や色彩は“KPOPらしさ”を大胆に表現しているかのようだ。これは“KPOP”が欧米の音楽文化圏から投げかけられてきた、極端に欧米化されてきたクリエイションと、KPOPならではのオリジナリティはどこにあるのか? という疑問に対するある種の答えにも見える。

 “アーティストなのか、アイドルなのか”という歌詞も同様で、アイドル文化が希薄な欧米の音楽文化圏での、アイドルの位置づけに対する牽制のようにも思える。韓国的モチーフを楽曲に取り入れる試みは、韓国において特にヒップホップジャンルでは以前から適宜見られており、アーティスト/アイドル議論についても「IDOL」の導入部の歌詞は元祖“自作ドル”であるBIGBANGのG-DRAGONが以前尋ねられ答えた内容と共通している。そして、メンバー自ら作詞作曲を手がける“自作ドル”の多い韓国アイドル界では、BTSがアイドル以外の席に並んだことはない。しかし、今最も世界中から注目を受けている“KPOPグループ”であるBTSが、あえてこれを明言することそのものが重要なのだろう。彼らの行動やクリエイションが、欧米圏でのKPOPに対するイメージをそのまま左右しかねない状況でもあるからだ。そういうシチュエーションにおいて、“自分達はアイドルであり、そのことに誇りを持っている”と明言し、自分達のルーツカルチャーやマイノリティ発祥の民族音楽を取り込んだ表現を発表することは、特別な意味を持っていると言えるのではないだろうか。

BTS (방탄소년단) ‘IDOL’ Official MV

 一方で、今作に新しく追加された7曲全ての根底にあるテーマはまさに“愛”である。愛の始まりを自らのダンスへのときめきになぞらえたJ−HOPE「Trivia 起 : Just Dance」、愛について迷いながらも生きることは愛すること、とまっすぐに言うRM「Trivia 承 : Love」、愛に対する正直な懐疑と心の揺れをシニカルに、時に甘く表現したビタースウィートなSUGA「Trivia 轉 : Seesaw」など、表現されるキャラクターや考え方は様々だ。しかし、肝心なのはこのアルバムで重要な役割を担う楽曲である「Trivia」が冠されたこの3曲が、全て彼らの制作面を昔から担ってきたBigHitエンターテインメントのPD(プロデューサー)陣によって制作されたという点であろう。デビュー以降、メンバーの心情を率直に吐露しリスナーの代弁者であろうとするというスタンスは変わっていないと思うが、それを表現するクリエイションの核にいたのは常にPdogg、Slow Rabbit、Hiss Noise、ADORA、Supreme boiというお馴染みのPD陣である。“自作ドル”と呼ばれてはいても実際は彼らとBTSのメンバー達も含めての“チームBTS”とも言うべきチーム体制が、コンセプトとリアリティの融合を可能にしてきたのではないだろうか。新奇性や話題性のために外部からの作曲家をゲストとして招いたとしても、コアの部分は変わらないメンバーが支えているという誠実さが特に結実したアルバムのように思う。

 今までのBTSは、少年期の終わりを表現した“学校3部作”における形成初期の個人の自我対社会(=大人)から、青年期の始まりを告げた『花様年華』シリーズで自己対自己の葛藤までを描いてきた。『花様年華』シリーズで〈Save Me〉と叫んでいた若者が、やがて〈自分を救えるのは自分だけ〉(「I’m Fine」)である、と己を認めて愛することが出来るようになった『LYS』で、青年期の懊悩は終わりを告げた様だ。そして大人になるということは、自分とは価値観や年齢や立場も違う様々な種類の人たちと関わり、共存していくことでもあるだろう。それはかつては対立していた“社会=大人”の一部になるということでもあり、仲間内や己の内面だけを見ている訳にもいかなくなるはずだ。精神的な葛藤を経てアイデンティティを確立してゆき、少年から大人へと成長を遂げたBTSは、今後どのような成熟を見せてくれるのだろうか。

■DJ泡沫
ただの音楽好き。リアルDJではない。2014年から韓国の音楽やカルチャー関係の記事を紹介するブログを細々とやっています。
ブログ:「サンダーエイジ」
Twitter:@djutakata

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