Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

ぴあ

いま、最高の一本に出会える

THE BACK HORNに聞く、音楽性がブレない理由「自分たちに合うものだけを作ろうとしてきた」

リアルサウンド

18/10/17(水) 18:00

 結成20周年を迎えたTHE BACK HORNがニューアルバム『ALL INDIES THE BACK HORN』をリリース。インディーズ時代の楽曲を再レコーディングした本作は、バンドの原点と最新型のサウンドを同時に体感できる作品に仕上がっている。

 今回は山田将司(Vo)、菅波栄純(Gt)にインタビュー。『ALL INDIES THE BACK HORN』の制作プロセスを中心に、作家・住野よるとのコラボレーションプロジェクト、20周年を記念したワンマンツアーなどについて語ってもらった。(森朋之)

このメンバーで出したい音を出そうとしていた(菅波栄純)

ーーまずは作家の住野よるさんとのコラボプロジェクトについて聞かせてください。住野さんの新作「この気持ちもいつか忘れる」、THE BACK HORNの新曲「ハナレバナレ」はお互いに構想やイメージを伝え合いながら制作したそうですね。

菅波栄純(以下、菅波):はい。打ち合わせを何回も重ねて、いろいろと話をさせてもらいながら制作を進めました。

山田将司(以下、山田):住野さんから「こういう感じの小説を書こうと思っています」という話を聞いて、そこからイメージを膨らませて。

菅波:うん。原稿を読ませてもらって、そこからインスピレーションを受けた言葉を歌詞に入れたりもしました。曲調については、もともと住野さんがTHE BACK HORNを好きでいてくれたこともあったし、自分たちらしいロックをガツン! とやろうと思って。そのうえで、小説とリンクするところを作るという感じですね。お互いの作品について口出ししたり、干渉するんじゃなくて、刺激を受けながら、自分たちがやりたいことを表現するというか。ヘンに考えすぎず、ヒラメキで勝負する感じでしたね。

山田:「ハナレバナレ」の原型は栄純が作ったんですけど、すごくスピード感があって、展開も激しくて。これだけの情報量が凝縮された曲は、THE BACK HORNにとっても初めてかもしれないですね。今年出したミニアルバム『情景泥棒』と地続きでありながら、また新しいサウンドアプローチができたかなと。住野さんの小説を読んでから聴けば、また聴こえ方が変わると思うんですよ。激しいだけではなくて、味わい深い曲になっていると思います。

ーーなるほど。間奏のパートでいきなり情景が変わるアレンジも印象的でした。住野さんの小説も予想外のストーリー展開が特徴でもあるので、そこもリンクしているのかなと。

菅波:そうかもしれないですね。ガツンとしたロックのなかにいきなり違う場面を挟み込むアレンジは、『情景泥棒』(2018年3月発売ミニアルバム)のときも取り入れていたから、その流れもあったと思います。「ハナレバナレ」は3分半くらいの曲なんですけど、その短い時間の間に大きく展開するのも気に入っていて。

山田:うん。ライブでもいい感じでやれると思います。

菅波:まだ詳しいことは決まってないんですけど、プロジェクト自体はこの後も続く予定なんですよ。お互いに影響を与えながら、また新しい挑戦ができたらいいですね。

ーーそして10月17日にはニューアルバム『ALL INDIES THE BACK HORN』がリリースされます。インディーズ時代にリリースした作品(1stミニアルバム『何処へ行く』、1stシングル『風船』、2ndアルバム『甦る陽』)を再レコーディングした作品ですね。

山田:インディーズのときの曲を再録するというのは、スタッフから出てきたアイデアなんですよ。3作とも廃盤になってるから、最近ファンになってくれた人たちは聴くのが難しい状態で。

菅波:ライブではやってるんだけどね。

山田:うん。ただ、ベスト盤として出すのはどうかな? というのもあったんですよね。インディーズの音源は前のベースと一緒に録ってるし、20周年というタイミングで、過去の曲をいまの4人でレコーディングするのはいいんじゃないかと。

菅波:久々に演奏した曲もありましたね。「茜空」とか「走る丘」とか。

山田:「茜空」は、いまの4人になってから1回しかやってないんじゃない?

菅波:そうだな。以前に再録していた5曲(「冬のミルク」「ザクロ」「桜雪」「無限の荒野」「泣いている人」)以外はすべて新たに録ったんですけど、メンバーそれぞれにテーマがあったんですよね。光舟(岡峰光舟/Ba)は前から「原曲のベースラインはすごくいいし、普通に好き」って言っていて。そこに自分で考えたフレーズを混ぜながらレコーディングしてましたね。マツ(松田晋二/Dr)は「いまの演奏力でぜんぶ塗り替えたい」という感じで、すごくタフなドラムを叩いていて。俺はハイブリッドな感じでやったんですよね。

ーー当時の感覚と、いまだからやれることを混ぜるということですか?

菅波:はい。インディーズの頃はエフェクターも1個くらいしか持ってなくて(笑)、出せる音も限られてたんですよ。だから今回は楽曲に合わせていろんな音色で演奏してみたくて。以前は弾けなかったアドリブのフレーズなんかもかなり入れてますね。逆に当時とまったく同じやり方で録った曲もあるんです。インディーズのときはヘッドフォンが吹っ飛ぶような音量でアンプに向き合ってレコーディングしてたんですけど、今回、それを再現してみたくて。何をどうやって弾いてるのかわからないし、ズレてたりするんですけど、それがカッコいいっていう。

山田:強いよね、それは(笑)。

菅波:「こういう感じで弾こう」て、狙ってやれないからね。歌はどう?

山田:そうだな……。インディーズの頃は衝動に任せてたというか、勢いで歌ってたところもあって。いま聴き返してみると「ここはじっくり聴かせたほうがいいな」という部分もあったりするんですよ。もちろん衝動的にいったほうがいいところもあるんだけど、いまは引き算して考えることもできるし、曲が向かっていく方向、そのなかにあるメッセージを増幅させることを意識して歌った感じですね。20年やってきた経験もあるし、昔よりは豊かな表現ができていると思います。

ーーなるほど。改めて初期の楽曲を聴いてみると、THE BACK HORNの独特の世界観は、最初から存在していたんだなと感じて。驚くほど個性的だし、どの楽曲もめちゃくちゃキャラが濃いじゃないですか。

山田:そうですね(笑)。

菅波:それは俺も思います。

ーーこの楽曲を作っていた頃、「こういう音楽をやりたい」というビジョンはあったんですか?

菅波:なかったんですよね、それが。どういう音楽をやるかというよりも、このメンバーで出したい音を出そうとしていたというか。あと、将司の歌の存在がとにかくデカかったんです。将司が歌えば自ずとこの世界観になるというか。それを形にするために、メロディやコード進行を探っていたので。このアルバムに入っている曲はすべて、このメンバーでやっていたから生まれたものだと思いますね。

ーーグランジをやろうとか、ミクスチャーをやろうとか、そういうことではなく?

山田:そういう話はほとんどしてなかったですね。

菅波:それよりも自分たちに似合うというか、「“らしく”やりてえ」っていうことだけかな。「やったる!」「かましたる!」という気持ちもありましたね。18才、19才くらいだったので。

ーー「魚雷」「ザクロ」とか、タイトルもすごいですよね。

菅波:そうですね(笑)。「怪しき雲ゆき」は将司の歌詞なんですけど、これって、人生初歌詞?

山田:人生初ではないけど、CDになった歌詞はこれが初めてだな。

菅波:そうか。でも、18才でこれが書けるってすごいよな。〈カナナカナカナカナ…〉がAメロの半分以上を占めてるって、日本のロック史上でもかなり斬新だと思うんだけど(笑)。

山田:〈土の匂いがする/土の匂いがする/何万 何千 何百の…〉とかね。

菅波:すごいよな。これ、どういう発想で書いたか覚えてる?

山田:よく覚えてないけど(笑)、柔軟だったんだろうね、脳みそが。想像だけでどこまでも飛んでいけたし、歌詞の世界と自分がつながるまで深く入っていくような感じもあって。この頃の歌詞は、悶々とした感情を埋めるような感覚で書いてたと思うんですよ。

菅波:あ、それはわかる。苛立ちとかな。

山田:そう。苛立ちとか寂しさとか、そういうものを自分で埋めようとしてたんじゃないかな。カッコつけたい気持ちは、ほぼなかった。

自分たちのことを自分たちがどれだけ信じられるか?(山田将司) 

ーーライブのときも、自分の感情を埋めるような感覚だったですか?

山田:そうなんですよね。最初の頃はまったく客席を見ないで歌ってたので。ライブでは“対・人”という気持ちで歌うのが当たり前なんですけど、その頃は(観客に向けて歌うことが)なんか媚びてる感じがして。聴いている人がいてもいなくても、そんなの関係ねえ! っていう(笑)。ドラムセットとか床に向かって叫んでましたから。

菅波:その頃の将司、曲に対する入り込み方がすごかったんですよ。演奏が始まった瞬間に別世界の人みたいになって。しかもそれが自分たちの最大の武器だったんですよね。演奏力のレベルも低かったし、他のバンドと差別化できるのは、絶対に将司の歌だったので。“あのボーカルがいる”というのが突破口になったし、バンドを前進させてくれたんですよね。

ーーしかも当時の雰囲気、世界観は現在も引き継がれてますよね。このアルバムの曲をライブで演奏してもまったく違和感がないので。

菅波:それも自分たちの強みですね。最新の曲とインディーズの曲をセットリストのなかに並べられるっていう。

山田:うん。全部沁みついているというか。

菅波:「20年経って、感情的にわからなくなった」みたいなことも一切なくて。いまも〈腐って死ね〉(「魚雷」)という気持ちになったりするので(笑)。それはオーダーメイドで曲を作っていたからでしょうね。何かに憧れて、それを目指していたわけではなくて。

山田:そうだな。

菅波:好きなものを目指していたら、メンバーの趣味によって音楽性も変わっていくじゃないですか。俺らは最初から自分たちに合うものだけを作ろうとしてたんですよね。

山田:しかも素材からね。

菅波:そうそう。もちろん好きなバンドだったり、メンバー全員で聴いていたバンドもいたんですけどね。eastern youthもそうだし。でも、それはあくまでも要素の一つであって。音楽以外の文化の影響もありましたね。地元のCOCK ROACHというバンドのメンバーから夢野久作の小説『ドグラ・マグラ』を借りて、「この世界観、たまらない」とか(笑)。古本屋で昔のエログロ系のマンガを探したりもしてたし。少し後になるけど、『おしゃれ手帖』というナンセンス漫画があって……。

山田:ハハハハ(笑)。

菅波:メジャーな雑誌に掲載されていた漫画ですけど、俺も将司もホントに好きだったんですよ。しかも、光舟も前から読んでいて(笑)。そういうところでつながっていたところもあるかも。一般的なところとはズレたところでかみ合っていたというか。

ーーなるほど。「自分たちに合った楽曲をオーダーメイドで作る」というスタンスは、いまも同じですか?

菅波:そうですね。おもしろいなって思うんですけど、「ハナレバナレ」を聴いた人から「初期の曲の感じがある」という反応がけっこうあって。自分たちとしては新しいアプローチなんだけど、根っこにあるものは変わってないんだろうなって。

山田:うん。「自分たちのことを自分たちがどれだけ信じられるか?」だと思うんですよ、大事なのは。それがあれば、何をやっても“らしく”なるので。どんなアレンジだろうと、どういう楽器が加わろうと、THE BACK HORNの音楽になるんですよね。

ーーそうやって積み重ねてきた音楽が多くのロックファンに支持されて、20周年を迎えたことについてはどう感じてますか?

菅波:不思議に思うこともあります。メンバー4人で共有していた濃厚な感覚を音楽にしてきたんですけど、冷静になって聴くと「ヘンな曲だな」という曲もあるし(笑)、それを大きい舞台で演奏していると「何だろう、この状況は」って。そういう意味では奇跡的なバンドですよね、THE BACK HORNは。

山田:そうかもね。インディーズの頃は、リスナーの反応もまったく気にしてなかったし。

菅波:ファンに対しては、超感謝ですよね。「俺らを見つけてくれてありがとう」と言いたいです。

ーー10月からは20周年を記念した全国ツアー『「ALL TIME BEST ワンマンツアー」〜KYO-MEI 祭り〜』がスタート。ファイナルは来年2月8日の日本武道館公演ですが、どんなツアーにしたいと思っていますか?

山田:タイトルが“KYO-MEI 祭り”なので、祝祭感というか、THE BACK HORNならではの祭りを見せたいと思ってます。俺らがやる祭りはかなりカオスかもしれないけど(笑)。

菅波:奇祭だね(笑)。セットリストも超いいし、絶対に楽しめると思います。20周年の“ALL TIME BEST”のツアーと聞くと、最近ファンになってくれた人は「コアなファンじゃないと参加しづらいのかな」と思うかもしれないけど、ぜんぜんそんなことないので。気兼ねなく来てほしいです。

山田:うん。新旧織り交ぜた曲をやるし、誰でも楽しめるライブになってるので、ぜひTHE BACK HORNの20年を感じてもらえたらなと。

ーーめちゃくちゃ期待してます。ちなみにthe band apart、ストレイテナーなども今年20周年なんですが、“一緒にシーンで戦ってきた”みたいな感慨ってありますか?

山田:うーん……。仲良くなったのって、ここ5年くらいなんですよ。若いときは手を取り合うこともなく、それぞれ進んできて。

菅波:同世代だから、意識していないわけないんですけどね。

山田:むしろ意識しすぎてたかも(笑)。

菅波:そうだね。「くっそー、ストレイテナーの新譜がカッコいいー!」とか。最近は仲がいいし、フェスで会ったりすると、泣きそうになるくらい嬉しくて。

山田:そうだね。「お、いたいた!」って(笑)。

(取材・文=森朋之/ライブ写真=橋本塁(SOUND SHOOTER))

THE BACK HORN – 『ALL INDIES THE BACK HORN』 全曲ダイジェスト音源
THE BACK HORN – 何処へ行く 【Music Video】

■リリース情報
『ALL INDIES THE BACK HORN』
発売:2018年10月17日(水)
価格:¥3,300(税抜)
<初回プレス分>三方背ブックケース仕様 / ライブ会場限定特典引換券封入
【CD収録内容】全21曲
Disc-1
01. ピンクソーダ
02. カラス
03. 冬のミルク
04. 魚雷
05. 雨乞い
06. 怪しき雲ゆき
07. 晩秋
08. 何処へ行く
09. 風船
10. ザクロ
11. 桜雪
Disc-2
01. サーカス
02. 走る丘
03. 新世界
04. リムジンドライブ
05. 無限の荒野
06. 甦る陽
07. 茜空
08. ひとり言
09. さらば、あの日
10. 泣いている人
※以下5曲は、再レコーディングを行なった既発済楽曲。
「冬のミルク」(2008年1月発売『BEST THE BACK HORN』収録)
「ザクロ」(2013年9月発売『B-SIDE THE BACK HORN』収録)
「桜雪」(2013 年9月発売『B-SIDE THE BACK HORN』収録)
「無限の荒野」(2017年10月発売『BEST THE BACK HORNⅡ』収録)
「泣いている人」(2017年10月発売『BEST THE BACK HORNⅡ』収録)
それ以外の16曲は、今作のために改めてレコーディングを行なった新録音源。

10月17日(水)よりiTunes Storeほか主要配信サイト、Apple Music、dヒッツほか定額制聴き放題サービスで配信開始予定。

「ハナレバナレ」
iTunes、レコチョク、mora他主要ダウンロードサイト、Apple Music、LINE MUSIC、Spotify他主要サブスクリプションサービスにて配信中

■ライブ情報
10月1日(月) 東京都 新宿LOFT
10月5日(金) 北海道 札幌ペニーレーン24
10月13日(土) 岩手県 盛岡Club Change WAVE
10月14日(日) 岩手県 KESEN ROCK FREAKS
10月19日(金) 静岡県 浜松窓枠
10月21日(日) 鳥取県 米子AZTiC laughs
11月8日(木) 京都府 京都磔磔
11月10日(土) 石川県 金沢EIGHT HALL
11月11日(日) 長野県 長野club JUNK BOX
11月17日(土) 香川県 高松MONSTER
11月18日(日) 高知県 高知X-pt.
11月30日(金) 愛知県 名古屋ダイアモンドホール
12月8日(土) 福岡県 福岡DRUM LOGOS
12月15日(土) 大阪府 なんばHatch
12月16日(日) 広島県 広島クラブクアトロ
12月21日(金) 茨城県 水戸LIGHT HOUSE
12月23日(日) 宮城県 仙台Rensa
1月11日(金) 沖縄県 桜坂セントラル
1月13日(日) 鹿児島県 鹿児島CAPARVO HALL
1月19日(土) 台湾 THE WALL 
2月8日(金) 東京都 日本武道館 ※ツアーファイナル

THE BACK HORN 20th Anniversary特設サイト
オフィシャルサイト

Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play