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Juice=Juiceが表現した今この瞬間の輝き 8人体制最初で最後のトリプルA面シングルをレビュー

リアルサウンド

19/2/24(日) 8:00

 〈♪微炭酸しゅ~わっ しゅ~わっ〉というフレーズが連呼される印象的なテレビCMを、あなたは目撃しただろうか。曲名は「微炭酸」で、歌っているのはハロー!プロジェクトのアイドルグループ、Juice=Juiceである。

参考:Juice=Juice、3年ぶり×23曲×8人の歌が凝縮! 新作『Juice=Juice#2 -¡Una más!-』レビュー

 その曲も収録されたトリプルA面シングル『微炭酸 / ポツリと / Good bye & Good luck!』が2月13日にリリースされた。Juice=Juiceは2013年にメンバー5人でメジャーデビューし、以降はメンバーチェンジすることなく活動し続けてきたが、2017年に2名、2018年に1名のメンバーが追加され、現在は8人組。そして今年3月にはメンバーの梁川奈々美、6月には宮崎由加のグループ卒業が予定されている。今回のニューシングルは、梁川にとって活動最後の、そして8人体制では最初で最後のシングル作品ということになる。この注目作の鑑賞ポイントをレビューしていく。

 まずはトリプルA面1曲目の「微炭酸」から見ていこう。記事冒頭にも書いたように、サビのフレーズがなかなかにキャッチー。歌詞全体としては、女性主人公の幼なじみである男友達に彼女ができ、自分の恋心が言い出せなくて……という内容で、サウンドはそんな切なさと共鳴したマイナー調のダンス歌謡チックなものとなっている。

 本曲の作詞を担当したのは、シンガーソングライターの山崎あおい。以前も別の記事で書いたのだが(参考:アンジュルム「46億年LOVE」が首位 2018年度『ハロプロ楽曲大賞』で目立つ若手女性作家の台頭 )、近年のハロプロ楽曲シーンに顕著な若手女性コンポーザーの多数起用、その傾向の一翼を担うひとりが彼女だろう。昨年ではアンジュルム「泣けないぜ…共感詐欺」「Uraha=Lover」の作詞作曲が山崎だったが、Juice=Juiceへの楽曲参加は今回が初となる。

 〈微炭酸〉というキーワードは、歌詞中では〈誰にも気づかれない 小さな音で 恋は弾ける〉、あるいは〈気づいたあの日から 弾け切れない私が嫌い〉と、恋を打ち明けられない女主人公の心情を象徴したものとなっている。もちろんそれと同時に、グループ名のジュースともリンクさせるという意図もあるのだろうし、秀逸で面白い言葉使いだ。

 パフォーマンス面から見て特徴的なのは、宮本佳林と稲場愛香のWセンターによる2トップ体制が強調されているという点だろう(歌割的にもこの2人のソロパートが比較的多めだし、MVではこの2人のみ別撮影のイメージショットがある)。J=J結成時からのエース格である宮本と、元々はカントリー・ガールズのメンバーだったが喘息により卒業、そして症状の回復とともにハロプロに復帰し、昨年J=Jへ電撃加入した稲場。アイドル力の高さに定評がある両名の組み合わせはかなり強力なものであり、ファンの間では「まなかりん」とも呼ばれている。実際、昨年上演されたJ=JによるSF舞台『タイムリピート ~永遠に君を想う~』では、女性鉱物学者ルナと、彼女に思いを寄せる男性宇宙物理学者ソーマを、それぞれ稲場と宮本が演じて話題となったし、今月21日発売の『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)ではJ=Jから選抜された宮本と稲場が表紙・巻頭グラビアに初登場と、2人が顔をそろえる機会は多い。楽曲面において「まなかりん」体制を打ち出した最初の一曲が「微炭酸」といえる。

 〈ポツリと ただ そばにいるのに 誰よりも 近くで〉〈ポツリと ただ 見つめてるのに 「好き」って一言が 言えない〉というサビフレーズを持つ「ポツリと」は、恋愛関係における距離感の機微を歌った切ない歌詞が心に染み入る。

 作詞作曲は、ハロプロおよびJ=Jにも多数の提供楽曲があるロックアーティスト中島卓偉によるもの。本曲はギターよりもシンセやストリングスを主体に用いて、歌詞の孤独感を逆説的に表現するかのような壮大かつスケールのある音像が構築されている(編曲は浜田ピエール裕介)。こういったタイプの楽曲はハロプロおよびJ=Jでも珍しいのではないだろうか。筆者はBuono!の2009年のアルバム曲「ゴール」を連想したりもした。

 メンバーの歌唱も豊かでしなやかな迫力があり、これがライブではさらに映える。歌割を確認すると、他の楽曲に比べてソロパートがかなり少なく、2人あるいは8人全員によるユニゾンが多い。そんな中で目立つのが、間奏開けの落ちサビ冒頭を続けて歌っている金澤朋子、高木紗友希のソロパートだ。艷やかな声質が武器の金澤と、J=Jのみならずハロプロ全体においても屈指の歌姫といわれている高木、この2人の歌声が要となっているのが本楽曲である。

 また、間奏では宮本・稲場の2人だけでコンテンポラリー風ダンスを舞い踊る場面があり、ここでもまた「まなかりん」が強調されている。

 梁川奈々美の卒業ソングという位置づけなのが「Good bye & Good luck!」。なにしろ曲冒頭からいきなり梁川のソロ歌唱で始まり、以降も彼女が大々的にフィーチャーされている。卒業の歌とはいえ、あくまで曲調は明るくさわやかで、笑顔で手を振ってお別れするような情景が思い浮かぶ一曲だ(実際のサビでも、手を振ってバイバイするような、わかりやすく真似しやすい振り付けになっている)。作詞を手がけているのはベテランの三浦徳子で、J=Jへは「Ça va? Ça va? (サヴァサヴァ)」「Feel! 感じるよ」に続いて3度目の歌詞提供となる。

 梁川はJ=Jと同時にカントリー・ガールズとの兼任メンバーでもあり、J=Jでの「GbGl」の他にもう一曲、カントリーでは「弱気女子退部届」という卒業ソングが用意されている(ミニアルバム『Seasons』収録)。こちらの作詞は児玉雨子が担当しており、梁川への完全な当て書き作詞になっている。万人の卒業シーンにも当てはめることができる「GbGl」の歌詞と聴き比べてみるのも一興だろう。

 作曲を担当しているのは、男性音楽作家のKOUGA(編曲は炭竃智弘)。「微炭酸」の作曲編曲も彼によるもので、2曲どちらも奇をてらいすぎない王道サウンドが続いた。現在25歳のKOUGAもまた、ハロプロ楽曲シーンにおける次世代若手作家のひとりだ。

 MVは、メンバー全員で女子会パーティーを開いているかのようなシチュエーションを撮っており、明るく楽しい、いわゆる「わちゃわちゃ感」が存分に堪能できる。J=JのMVでこのような作りはなかなか珍しく、こういう映像が見たかった! というファンも多いのではないだろうか。

 「微炭酸」「ポツリと」の2曲では「言いたいことが言えない」という内容の歌詞なのに対し、「GbGl」では「グッバイ!グッドラック!」と朗らかに宣言しているという違いがあり、その対比がサウンド面にも現れているのが面白いシングルとなった。今後もJuice=Juiceのグループとしての歴史は続いていくが、現時点の8人での記録/記念として意義深いシングル作品である。(ピロスエ)

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