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SABU監督が語る、『jam』撮影裏話と劇団EXILEの個性 「全員が本気で向かってきてくれた」

リアルサウンド

18/12/18(火) 15:00

 『MONDAY』『蟹工船』『天の茶助』のSABU監督が、劇団EXILEと組んでオリジナル脚本で放つ『jam』。青柳翔演じる場末のアイドル演歌歌手ヒロシと、町田啓太演じる意識不明の恋人の回復を一心に願う青年タケル、鈴木伸之演じるヤクザへの復讐を誓って刑務所から出所したテツオの3人を中心に、“因果応報”をめぐる物語が交錯していく。

 SABU監督らしさに劇団EXILEの色が加わり、「おもしろい!」と評判が上がっているなか、SABU監督を直撃。本作にまつわる裏エピソード、そして青柳、町田、鈴木はもちろん、劇団EXILEのメンバー全員への印象も語ってもらった。

■「シリーズ化できたらおもしろい」

――劇団EXILEメンバー総出演の作品ですが、企画が立ち上がった経緯を教えてください。

SABU:実は別の作品の企画がLDHさんと進んでいたんです。去年の6月くらいから始めようと思っていたんだけど、撮影が延びることになった。それで空いた期間に、青柳くん、町田くん、鈴木くんの3人を主役に新たに何か考えられないかという話が出て、慌てて脚本を書いて、去年の11月くらいにはクランクインしたんです。

――3人が出演するというお話から、結果的にメンバー総出演になっていったと。

SABU:最初は3人でした。町田くんと鈴木くんには会ったことがなかったので、まずは会ってみて、イメージが湧いて面白いものを書けたらやると。でも、挑戦状をいただくのは俺も好きだし、絶対に面白いものを書いてやろうと思いました。

――オリジナルで、しかも入り組んだストーリーにも関わらず、町田さん、鈴木さんとお話してから、あっという間に脚本が出来上がったと聞きました。

SABU:そうですね。書くのは得意ですから(笑)。書いている途中に、劇団EXILEのメンバーをあと何人かという話が出てきて、登場人物として何人出せるかなと思っていたんですけど、どうせなら全員のほうがいいだろうと。いろんなキャラクターを出して、シリーズ化できたらおもしろいんじゃないかと思ったのも理由のひとつです。

――シリーズ化する予定なんですか?

SABU:そうできたらいいなとは思ってますね。

――3人のキャラクターがとてもユニークです。青柳さんとは前作『MR.LONG/ミスター・ロン』でも組んでいましたが、どうして場末のアイドル演歌歌手に?

SABU:青柳くんは『MR.LONG/ミスター・ロン』でベルリン国際映画祭に行ったときに着ていたタキシードが演歌歌手っぽくて。そう見えていいのかなっていう微妙な感じがよくて(笑)。歌を歌えるのは分かっていたし、こういうのも得意かもと。そしたらすごくハマりましたね。最初はヒゲがある感じを考えてたんだけど。

――ないほうが、好感度が高い感じがあります。

SABU:そう。だから結局そっちの方向で行きました。よかったですね。

――活き活きしていました。筒井真理子さんが演じたファンに、ヒロシが監禁されてしまうシーンも、大変な状況なのにどこか笑ってしまうという。

ABU:本気かどうかっていうギリギリのところというね。最初はでっぷりしているおばちゃんで考え始めたんだけど、どこか恋愛関係になってもおかしくないくらいの雰囲気があったほうがおもしろいかなと思って、筒井さんになったんです。ぴったりハマりましたね。ヒロシとおばちゃんたちとのトークトゥミーという会があって、そこで「本当のファン」や「世界一のファン」という言葉も出てきたり。

――そこの関係もおもしろかったです。青柳さんは『MR.LONG/ミスター・ロン』でも走っていましたが、今回はシャッター商店街で疾走していました。SABU監督というとやはり疾走ですが、自然にそうしたシーンが浮かぶのでしょうか? それとも意識的に入れているのですか?

SABU:両方ですね。「今回も走ってましたね」というのは、絶対に言われますし。もうそういうイメージはしょうがない。だから後半に入れていこうと。ある出来事が、最初は町田くんの目線から描写されるのですが、後半は青柳くんの目線になる。

■「鈴木くんの池のシーンは“池猿”です(笑)」

――町田さんの場合は、街を車で走っていました。町田さんにはもともと好青年のイメージがありますが、今回のタケルは、行き過ぎた好青年になっています。その辺もお話して考えられたのですか?

SABU:そうですね。すごくきれいな顔立ちで、男前。喋っていても、嘘くさいくらいの好青年(笑)。高校時代は飛行機の学校に通っていて大学は体育大だったりね。ほんとイメージ通り。そこを逆の形で生かしたいなと。どこか行き過ぎてしまって変質者っぽくなってしまっているようなおかしさ。ただやりすぎるとダメなので、“彼女のため”という軸を置いたんだけど、彼女にリップクリームを塗ってあげたりするときの目がちょっと寄っていたり(笑)、どこかおかしい。

――タケルの背景もすごく気になりました。なぜあんな車に乗っているのか、昼間は何をしているのか。

SABU:車は普通の乗用車だとおもしろくないし、ああいう昔の車ってシートが皮で赤かったりして、車の中の空間だけでも独特の世界観がある。ちょっとポップな『jam』らしい感じを出したかった。タケルの家はたぶん大富豪なんだけど、それは続編あたりに置いておこうかなと。

――テツオ役の鈴木さんは、セリフが一切なし。アクションで見せていました。

SABU:最初に会ったときに、鈴木くんはすごくとんがってたんですよ。「俺はひとりでもやっていく」みたいな感じで。なんか、変わった人だなと思ったんですけど(苦笑)、実際にはずっと親しみやすいタイプだった。どんな映画が好きか聞いたら、『海猿』だって言うんですよ。町田くんはかなり映画を観ていて、グザヴィエ・ドランの『トム・アット・ザ・ファーム』とかの話をしていて、そんなの観てるのかと思っていたんです。一方、鈴木くんは『海猿』が好きだというのがまたおもしろくて。

――監督が鈴木さんのために池のシーンを用意したと聞きました。

SABU:“池猿”ね。最初、その意図が本人にうまく伝わっていなかったんだけど、あれは“池猿”です(笑)。鈴木くんは、基本的に男っぽい役がしたいと言っていて、だからこそ『海猿』が好きだったみたい。以前、HIROさんとも韓国映画のトンカチの使い方がすごいという話をしていたので、そうしたアクションもテツオのシーンに入れました。

 『MR.LONG/ミスター・ロン』はナイフでの華麗なアクションでしたが、『jam』は、もっとどろどろの、アクションか何か分からないくらいの激しさでやれたらいいなと。そしたら鈴木くんがすごく上手くやってくれたのでよかったです。

――銃で撃たれても生きていたり、リアルそうでリアルじゃない世界ですよね。

SABU:無敵(笑)。あと、テツオは人と繋がるのが下手で、やくざにも見放されて、結局おばあちゃんしかいない。やることも、おばあちゃんに頼まれた「駅に行ってくれ」という一つのことしかない。そこが何とも悲しい。誰にも相手にされていないというところが切なく見せられたらなと。

――ラストの鈴木さんの表情がすごく好きです。

SABU:いいですよね。狙い通りの表情を見せてくれました。すごいと思います。実はあのシーンは脚本の段階では、“流れる灰色の雲をぼ~っと見ているテツオ”という感じで終わっていたんです。でも現実なのか幻影なのか、ある人が見えることにしました。クランクアップ日の撮影で、その数日前に思いついて変更しました。

――監督は、最終稿に変更を加えることもあるのですか?

SABU:基本的には脚本も絵コンテもきっちり描きます。現場で俳優がアドリブをしたりするのは、結局、脚本がおもしろくなかったりするからだし。俺自身が役者のころそうだったので。だからアドリブをされているような現場じゃアウト。まずはこの脚本を完璧にやれというスタンスだし、思い付きもそんなにはないです。ただ『jam』は若干慌てて書いたので、そういう余白はいつもよりはあったかもしれませんね(笑)。

――現場で、青柳さん、町田さん、鈴木さんそれぞれに他の2人を誉める言葉を、ぼそっとささやいていたと聞きました。刺激を与えるためですか?

SABU:それもあります。青柳くんは特にそうですね、3人のなかでもヒロシが中心ですし。町田くんや鈴木くんは、いまうなぎ上りなので、「頑張れよ、負けるなよ」という気持ちで青柳くんにはよく言ってました。盛り上げようというのはあったと思いますよ。競い合えよと。

■「劇団EXILEは揃ったら不思議と“グループ”になる」

――劇団だからこその空気感を感じることはありましたか?

SABU:秋山(真太郎)くんと八木(将康)くんのコンビの掛け合いはそういう感じがすごくありましたね。上手でしたし、ヒロシと3人になったときの空気感もすごくおもしろかった。みんなすごく仲良しで、俺が俺がっていう感じはないんですよね。

――3人以外の印象も聞かせてください。

SABU:秋山くんはまじめ。すごく考えてきたうえでやってるなというイメージ。彼はもともと髪が短くて、最初に会ったときは黒かったかな。チンピラっぽい、変なスナックのボーイさんとかが似合いそうな印象でした。そこからヤクザ役に持ってきて、髪の色も変えてもらいました。八木くんとは現場で初めて会って、顔が四角いという話は聞いていたので、覆面をかぶってもその四角さが分かったらおもしろいなと(笑)。秋山くんの細い感じと、八木くんの四角い感じが並べようとしました。

――実際、おふたりを並べてみたら。

SABU:すごくいい空気感でした。芝居もすごく上手でしたね。小澤(雄太)くんもヤクザ役が似合ってました。こんなに似合うとは思ってなかった。グラサンが効いててよかったですね。なんかイヤらしい感じがして。衣装合わせのときに初めて会ったんですけど、テツオを刺すのは彼にやってもらおうと決めました。

 小野塚(勇人)くんは芝居がピカイチ。誰よりも一番うまくて、抜き方がいい。余計な意識が一切なくて、スッと入れる人です。佐藤(寛太)くんはあのキャラクター通りでした。彼もすごく男前で、ラーメン屋に合うかなぁという心配もあったのですが、結果的によかったです。試写を観て一番喜んでいたのが、佐藤くん。「こんなの観たことない。すっごくおもしろかった」ってずっと言ってましたよ。

 野替(愁平)くんは、こういう人が付き人をやっているのがよかった。ヒロシとどこかカップルっぽい感じもあって。俺は役者のころ、舞台の付き人をよく見てきて、気遣いの凄さとかを知っているので、それをかなり説明してやってもらいました。

――野替さんの役が最後にフィーチャーされる場面もあります。あれはなぜ入れたのですか?

SABU:あのシーンも決定稿にはなかったんです。でももう1回出てきたほうが、続編にも繋がるかなと。彼の芝居も印象に残っていたので、もう1回最後に出したかったのもありました。ヒロシのマイクを拾うのですが、現場で、「ヒロシの歌を歌えるか」と聞いたら、「歌えます」っていうんですよ。(ロケ地の)北九州に着いてから、現場に来る途中に曲を聞かせてもらって、一生懸命覚えたらしくて。それで歌ってもらったら、ちゃんと歌えたんです。えらいなと思って、じゃあ、歌ってと。

――そうなんですね!

SABU:だからその日に急遽、歌ってもらって撮ったんです。

――それは驚きました。最初はメイン3人の出演という話から始まった本作ですが、あらためて劇団EXILEとのお仕事はいかがでしたか?

SABU:みんな本気なんですよね。全員、完璧にセリフが入って現場に来ている。それは当たり前のことですけれど、どこか身内の作品的な感覚で来られたら困るなと思っていたら、そんなことは全然なかった。全員本気で、こちらが特別な緊張感を作る必要はなかった。それぞれが自分のところで凹まないようにと、作品の全体をおもしろくしようと本気で向かってきてくれてよかったです。

――劇団EXILEは、日本のエンタメ界で独特のポジションにいるグループかと思います。日本の映画界に、こうしたグループがいるおもしろさは感じますか?

SABU:世間には、劇団EXILEなんて初めて聞いたという人もいると思うんです。でもピンではそれぞれ活躍しているというのがおもしろい。劇団といっても個人でやってるし、でも揃ったら不思議とグループなんですよね。不思議なカラーがあります。全員それぞれが主役にできるような粒がそろっていると思います。

――HIROさんは、いわゆる一般の映画プロデューサーとはやはり違いますか?

SABU:全然違いますね。HIROさんはクリエイター寄りなので話しやすいし、期待に応えたいと思わせる。応えるというか、ある意味裏切って、想像をさらに超えたくなる。なぜみんなHIROさんについて行くんだろうと思っていましたが、実際にお仕事すると、そういうことかと納得しました。HIROさんにしかない勘、センスを持っているんですよね。この映画のキャッチになっている“因果応報”という言葉を言い出したのもHIROさんです。試写を観たあとに、そこを前面に出したほうがいいと。

――もともと“因果応報”をテーマに意識していたわけではなかった?

SABU:意識していたわけではないです。宗教っぽい感じはもともと好きなんで、出ちゃうんですけど。でも因果応報と最初から頭にあると、それに縛られちゃうので。もちろんテーマというのはあります。基本的にいつも、人間の滑稽さや切なさを描くようにしています。あと、お客さんに変な問題を押し付けて終わるようなのはいいと思っていないので、おもしろかったなという感想の中に、そうした気になるものが散りばめられているのがいいと思っています。

――最後に読者にひと言お願いします。

SABU:今の日本の映画は、割と一面的なものが多いです。キラキラだったらずっとキラキラしてたり、サスペンスならそれ一色とか。『jam』は、演歌歌手が出てきたかと思えば、めちゃくちゃなアクションがあったり、いろんな色が入っているので、その構成を楽しんでもらえたらなと思います。(取材・文=望月ふみ)

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