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いま、最高の一本に出会える

『私の頭の中の消しゴム』から14年 韓国版『いま、会いにゆきます』に見るソン・イェジンの女優としての成熟

リアルサウンド

19/4/5(金) 18:00

 ソン・イェジンが久々に、正統派の純愛ラブストーリーでスクリーンに戻ってくる。タイトルは、映画『Be With You~いま、会いにゆきます』。そう、2004年に竹内結子と中村獅童主演で映画化され大ヒットとなった市川拓司のベストセラー小説を、新たに韓国で映画化したものだ。

 日本版『いま、会いにゆきます』は、興行収入48億円をあげ、同年の興行収入ランキングで邦画部門3位を獲得している(参考:https://eiga.com/news/20050208/12/)。同じく2004年に公開された『世界の中心で、愛をさけぶ』と並び、小説原作を実写化した純愛ラブストーリー映画の名作として、今もその名を残している。また、ヒロインが未来にタイムスリップしたり、死を知りながらも愛を育んだり、それが男女の両方の視点から描かれるという本作の要素は、『君の名は。』や『君の膵臓を食べたい』など近年10代を中心にヒットした作品にも見受けられ、そのブームの原点とも呼べるだろう。

 一方の韓国版では、『私の頭の中の消しゴム』のソン・イェジンがヒロインを務め、14年ぶりの恋愛映画に挑戦した。韓国版ならではの要素やオリジナルエピソードも盛り込まれ、本国では公開からわずか15日で動員200万人を突破し、韓国における恋愛映画では最速記録を打ち立てた。また、ヒロインと恋に落ちるウジン役で、『映画は映画だ』やドラマ『ごめん、愛してる』など、多くのドラマや映画に主演し、日本でも人気を集めるソ・ジソブが初の父親役に挑戦する。

 実は、本作にはソン・イェジンらしさがぎゅっと詰まっている。過去の作品やいくつかのキーワードをもとに、彼女の魅力をひもといていこう。

 数あるソン・イェジン作品の中でも、特に日本で知られている代表作といえば、チョン・ウソンと共演した『私の頭の中の消しゴム』だ。社長令嬢のスジンは偶然出会った大工と恋に落ち、家族の反対を押し切って結婚。だが、スジンは記憶を失う不治の病にかかり……という胸が張り裂けるほど切ない愛の物語は、2005年に日本で公開された当時、4週連続第1位を記録。興行収入の累計総額は30億円という大ヒットを飛ばし、今も日本で公開された韓国映画史上1位に君臨し続ける名作だ(ちなみに、2位もソン・イェジンがペ・ヨンジュンと共演した2005年公開の『四月の雪』)。

 『Be With You~いま、会いにゆきます』もまた、記憶を失うことを軸に展開するストーリー。ソン・イェジン扮するスアは、ソ・ジソブが演じる初恋の人ウジンと結婚し、息子にも恵まれる。しかし、ほどなく悲運の事故で亡くなったスア。それから一年後、雨の降る日に家族の前に生前の姿と同じスアが現れるが、ウジンについて何も覚えていないのだった。

 病が発覚する中盤から急展開となる『私の頭の中の消しゴム』に対し、『Be With You~いま、会いにゆきます』は、現在と過去を行き来しながら随所にファンタジーのような温かさとユーモアもにじませる。ウジンと出会った大学生時代のスア、妻としてのスア、母親としてのスア。表情やしぐさを細やかに自然体で演じ分けるという、ソン・イェジンの女優として成熟した姿も。その一方で、素朴で清純な雰囲気は、かつてのまま。その変わらぬ透明感に驚かされる。

 『おいしいプロポーズ』(2001年)でドラマ初主演(ソ・ジソブと共演!)を果たしたソン・イェジンが、「国民の初恋」と称され大衆に広く知られたのは、2002年のことだった。きっかけは、母親と娘の初恋を重ねて一人二役を演じた映画『ラブストーリー』。翌年にはドラマ『冬のソナタ』のユン・ソクホ監督に抜擢され、『夏の香り』でソン・スンホンとの運命の愛を演じた。

 「ロマンスクイーン」と呼ばれるようなったソン・イェジンは一方で、ナンパ師に扮した『ナンパの定石』(2005年)、おおざっぱな干物女を演じた『個人の趣向』(2010年)など、コミカルな役にも挑戦するように。

 そして、コミカルとピュア、両方の魅力を存分に発揮したのが、最新ドラマ『よくおごってくれる綺麗なお姉さん』(2018)だ。恋と仕事に行き詰った30代の女性が、チョン・ヘイン扮する年下男子に愛される姿は、胸キュン必至。女性から見ても「かわいい」、そして同世代から見ると「うらやましい」、そんなキャラ。妬まれたり、嫌われたりしないのは、ソン・イェジンだからこそ、なのだ。

 芸能界デビューから今年で20年。

 『白夜行 -白い闇の中を歩く-』(2009年)のようなサスペンスや時代劇『ラスト・プリンセス 大韓帝国最後の皇女』(2016年)など経て、『Be With You~いま、会いにゆきます』で再びピュアなラブストーリーを選んだソン・イェジン。

 韓国メディアALLETSのインタビュー(2018年3月19日)でこう明かす。

 「韓国でも有名な原作を映画化することには、プレッシャーも感じましたが、新人であるにもかかわらず明確な信念を持つイ・ジャンフン監督に信頼を寄せ、出演を決めました」

 撮影前には、作品を分析し、監督にアイディアを提案。そのため、スアにはソン・イェジン自身がかなり投影されているという。

 「例えば、スアが息子と遊ぶ場面は、甥といるときの私。負けず嫌いだから、子ども相手でも手加減しない。ゲームをしても、いつも勝とうするんです(笑)」。一方で、「ウジンと手をつなぐか迷うシーンでは、鈍くなっていた心の底にあったピュアな感情が呼び起され、ときめきを感じた」とも。

 ラブロマンスについて、彼女は同インタビューでこう語る。

「私にとって最も大事な意味を持つ、故郷のようなもの。人々に愛していただいた原点であり、帰ると落ち着く場所です」

 完璧主義であるがゆえ、「20代の頃はラブロマンスを熾烈に熱心に演じてきたが、今回はリラックスできた」というソン・イェジン。『Be With You~いま、会いにゆきます』は、30代を迎えてさらに輝きを増す彼女の、等身大の今を映し出す鏡のような作品でもある。(文=桑畑優香)