Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

ぴあ

いま、最高の一本に出会える

『ドロ刑』早くも続編期待の声 中島健人、遠藤憲一を逮捕し“スタートライン”に立つ

リアルサウンド

18/12/16(日) 12:00

 第2話のバーでの斑目(中島健人)と煙鴉(遠藤憲一)のやり取りにこんな言葉があった。「結局最後は執念なんだ」。先週の放送の第9話のクライマックスで斑目の頭を駆け巡る回想シーンでも登場したこの言葉はまさに、12月15日に放送された最終話で明らかにされた煙鴉の過去と、それをめぐる斑目たち13係との攻防を体現したものであった。

 日本テレビ系列土曜ドラマ『ドロ刑 –警視庁捜査三課−』最終話は、第9話からつながる硬派な展開のまま幕を開け、そのまま最後まで駆け抜けた。“虹”という言葉の謎に、警視総監の真鍋(本田博太郎)が鯨岡(稲森いずみ)に発する「煙鴉を自由にさせたら困る人が大勢出てくる」という不穏な言葉。そして13係の面々は、20年前に起きたある宅地造成をめぐる隠ぺい事件にたどり着くこととなるのだ。

 その事件が起きたのは「虹の見える丘公園」と名付けられた分譲地。かつて化学工場があった跡地を造成したその土地を購入したひとりの男は、有害物質によって幼い息子を失い、抗議運動に参加するも息子の死と有害物質との因果関係を認められず、妻は自殺。それでも諦めずに真相を探り続けた彼は、事件に関係する人々の家に忍び込みひたすら情報を集め、稀代の大泥棒“煙鴉”になる。そしてすべてを締めくくるかのように、巨悪の根源である大手ゼネコンの会長や関与した役人、訴訟を担当した裁判官、そして当時市長だった現在の総理大臣と、その陰にいる真鍋への復讐を企むというわけだ。

 前述のセリフには続きがあった。「どっちが本気で捕まえたいかで勝負は決まる。徹底的に泥棒の気持ちになれ」。そのエピソードではその後、斑目は煙鴉からの教えに従いながら“忍び”のプロフェッショナルの考えを先読みし、盗みに入る家を割り出し捕まえることに成功する。煙鴉から教え込まれた、この“ドロ刑”としての最も重要な教訓は、斑目を着実に成長させていったと同時に、ドラマ終盤には大きな足かせにもなっていた。

 泥棒の気持ち、それはつまり追うべき存在である煙鴉のねらいのことであり、それを理解できずに、ただ友情と信頼関係のほつれに悩んでいた斑目。しかし彼が“ドロ刑”としての自分の責務を果たす覚悟を決めたことで、そのねらいにたどり着くことができ、煙鴉の気持ちになることができた。それを象徴したのが、煙鴉をおびき寄せるために13係総出で一芝居打ったクライマックスだ。煙鴉は自分をサポートするのと同時に、目的遂行のために動かそうとしているのだと理解した斑目は、誤った方向に進むと見せかける。13係の面々が煙鴉を取り囲んだときに、煙鴉が一瞬見せる微笑みは、斑目が「徹底的に煙鴉の気持ちになった」ひとつの成果といえるだろう。

 振り返ってみると第1話から第6話にかけての前半戦で、様々な泥棒の手口と向き合い方を学び、徐々に13係の団結力を高めていき、そして第7話の「病院」というキーワードをフラグにして終盤は一気に煙鴉との攻防戦へともつれ込み、チームプレイで全ての謎を解き明かす。斑目と煙鴉の出会いを“起”として、6話までを“承”、7話のラスト以降が“転”、そしてすべてが明かされる最終話が“結”という作りになっていたが、大きく捉えれば前半を“起”で、後半を“承”としてみることもできる、まだまだ先があってもいいプロットだ。

 ラストシーンで斑目は煙鴉に「(刑期を終えて)出てきたらまた色々教えてください」と囁く。おそらく斑目自身は、煙鴉を逮捕したことでようやく一人前の“ドロ刑”になるためのスタートラインに立てたのだと感じているのだろう。原作の設定の一部だけをすくい上げてほぼオリジナルの展開で進行した本作は、虹の見える窓から煙鴉が忽然と姿を消したところで幕を閉じた。早くも続編を期待する声が上がっているのも充分頷ける、ここ最近の連続ドラマの中でもきわめてスマートな、実に魅力的な幕切れではないだろうか。(文=久保田和馬)