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いま、最高の一本に出会える

「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『鈴木家の嘘』

リアルサウンド

18/11/16(金) 20:00

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、島田家の次男・島田が『鈴木家の嘘』をプッシュします。

『鈴木家の嘘』
  “作家主義”“俳優発掘”をテーマに、『恋人たち』『滝を見にいく』などの作品を生み出してきた松竹ブロードキャスティングオリジナル映画製作プロジェクト第6弾となる本作。ある日、突然自ら命を絶ってしまった鈴木家の長男・浩一(加瀬亮)。そのショックから記憶を失った母・悠子(原日出子)のために、遺された父・幸男(岸部一徳)と次女・富美(木竜麻生)は、とっさに「浩一はアルゼンチンで漁業をしている」と嘘をつき、その嘘を守り抜くために奮闘する。

 橋口亮輔監督、石井裕也監督、大森立嗣監督といった、名だたる監督の助監督を務めてきた野尻克己監督のデビュー作であり、実兄の自死が脚本執筆のきっかけと語る本作は、シリアスな題材ながらも常にユーモアを忘れない。

 兄が乗り移ったというイカサマ霊媒師や、岸部が古着屋でチェ・ゲバラのTシャツを探す様子は、必死だからこそ余計に笑えてしまう。悲しみを笑えるように描くことは、悲しみを悲しみとして描くことよりずっと難しい。監督自らの体験がモチーフならば、なおさらだ。キャスト陣の演技も素晴らしい。岸部一徳の冴えないながらも、必死に家族を守ろうとする姿は、本作を体現しているといっても過言ではないだろう。次女・富美役を務めた木竜も、いなくなってしまった兄への怒りと愛を見事に表現しており、今後の更なる成長から目が離せない。

 先日、身近な人を失ってしまう経験を個人的にしていたこともあって、観賞中は落涙を禁じ得なかった。死は時間の不可逆性を実感させる。取り返しがつかないことというのも、大人になればなるほど増えて、両肩にのしかかってくる。それでも人は前に進んでいかなければいけない。

 この映画は決して、人生を前向きに過ごすハウツーを教えてくれはしない。そんなハウツーは存在しないし、映画ひいては芸術はそんなハウツーを教えてくれるものではない。ただ、いつかは前を向けるようになると示してくれている。それだけで十分、この映画は多くの人を救ってくれるのではないだろうか (リアルサウンド編集部)

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