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『絶対正義』でまたも主演に抜擢! 遅咲きの女優、山口紗弥加は“目”で演技する

リアルサウンド

19/2/16(土) 6:00

 「わたし、何か間違ったこと言ってる?」

 こちらを真っ直ぐに見つめる瞳は確かな自信に満ち、有無を言わせない迫力がある。東海テレビ・フジテレビ系〈オトナの土ドラ〉枠で放映中の『絶対正義』の一場面。主人公・高規範子の決めセリフのシーンである。

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 本作は“イヤミス”(イヤな読後感の残るミステリー小説の略称)の旗手として注目を集める秋吉理香子の同名原作のTVドラマ化。 ささいな間違いや過ちも許さず、法律やルールを守ることのみに執念を燃やすヒロインが、周囲の人々を翻弄し、彼らの運命をも狂わせていく姿を描くサイコサスペンスだ。正義とは何か。たとえ誰かを傷つけたとしても、正義は貫くべきなのか。観る者の倫理観や道徳観にも鋭く迫る物語は、“一億総クレーマー社会”とも言われる現代社会を反映していると取ることもでき、今後の展開がさまざまな波紋を呼びそうだ。

 そんな、見方によれば荒唐無稽とも思えるドラマを、圧倒的な存在感で成立させているのが、主人公・高規範子を演じる山口紗弥加だ。校則通りにきっちり切りそろえたおかっぱヘアに、清廉潔白を表したかのような全身白で統一したファッション。神出鬼没な登場といい、立ち居振る舞いにもどこか人間離れした凄みが感じられる。山口は昨年、キャリア24年目にして初主演を飾った『ブラックスキャンダル』(読売テレビ・日本テレビ系)に続き、早くも2作目の主演を射止めたかたちだ。

 14歳でCMデビュー、その後『若者のすべて』(フジテレビ系)で、女優としてスタートを切ってから数多くの作品に出演してきた山口。当初はバラエティに進出したり、歌手活動を始めたりと幅広いジャンルで活躍していたものの、自身の立ち位置に疑問を感じることも多かったそうだ。一時は芸能界から引退も考えるが、2003年に出演した野田秀樹演出の舞台『オイル』に出演した経験から再び女優の面白さに開眼。これを見た演出家の蜷川幸雄から舞台『エレクトラ』に誘われ、厳しい指導を受ける中で演技の道を続ける覚悟ができたという。近年は名バイプレイヤーとしての存在感に磨きがかかり、オファーが絶えない女優として作品に引っ張りだこ。キツめのキャリアウーマンから場末のホステス、優しい母親役までを演じ分け、脇役といえどインパクトのある演技は業界内部でも評価が高い。

 初主演となった『ブラックスキャンダル』で山口が演じたのは、身に覚えのない不倫スキャンダルによって芸能界から追放された元女優。顔と名前を変え、自分を陥れた芸能プロダクションに復讐していく姿を熱演し各方面から賞賛された。そんな彼女の演技に説得力を与えているもの、その最たるは冒頭でも述べた目力だ。たとえば『絶対正義』の範子も普段は穏やかな微笑みを浮かべているが、不正を発見すると一変。にこやかな目の奥に狂気が宿る。眉上で切りそろえた前髪も、彼女の目の演技を強調するための演出と言っていいだろう。また範子の登場シーンはほぼ直立不動で大きな動きもなければ、声をはりあげるような激しい芝居もない。だからこそ、わずかな表情で見せる演技に引き込まれる。範子は持って生まれた端正な顔立ちと印象的な目力を持つ彼女だからこそ、モノにできたキャラクターと言えるだろう。

 『絶対正義』は範子と彼女を取り巻く高校時代の同級生との物語だ。大人になり、それぞれに不倫やモラハラ夫などの問題を抱える彼女たちは、範子に“正される”立場に転じることもあり、彼女の正義に疑問を持つようになる。演じるのは、美村里江、田中みな実、片瀬那奈、桜井ユキら、山口と同世代のいずれ劣らぬ曲者女優陣。白熱する演技合戦にも注目したい。(渡部あきこ)

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