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いま、最高の一本に出会える

『ファンタビ』やMCUからあのキャラもランクイン 2018年、“最悪に最高だった”ヴィランTOP5

リアルサウンド

18/12/31(月) 10:00

 また一年が終わりを迎える。2018年、映画・ドラマシーンで印象的だったのは“ヴィラン(悪者)”の在り方だった。そもそも、ヴィランって何だろう。考えた時に真っ先に思い浮かぶのが、『アンパンマン』のばいきんまんだ。ばいきんまんは、わかりやすく悪者としていつも登場する。しかし、「ばいきんまんは時にはいいこともする。悪に徹しきれないところがある」と、作者のやなせたかしは『それいけ!アンパンマン にんきものだいしゅうごう!キャラクターベスト15』(2002)でコメントしている。

 近年における映画・ドラマシーンにおいて、より現代的に変貌を遂げてきたヴィランたち。これからご紹介する2018年に活躍した最高のヴィランは、皆ある共通点を持っている。それは、私たちが「ヴィランのロジックやモチベーションが理解できる」ことである。そして、ばいきんまんのように善と悪の境目がグレーであることを気づかせてくれるのだ。

 以下、悪に染まる動機の切なさや、作品のヒット具合に基づいて、2018年最高のヴィランをランキング形式で讃えていきたい。

5位:ゴースト(『アントマン&ワスプ』)

 前作『アントマン』ではハンク・ピム博士が開発したイエロージャケットを盗んで、技術を軍事利用しようと企んでいたダレン・クロスというヴィランがいた。しかし、今回登場するのはゴースト(エイヴァ・スター)という女性ヴィランだ。彼女はピム博士のラボを奪い、ピム博士の妻・ジャネットの力を利用しようとする。

 しかし、ゴーストの悪事の背景には悲しい過去と辛い現実があったのだ。ピム博士も関わる研究所の事故によって両親を失い、自分は体の細胞がくっついたり千切れたりを繰り返す体質になり、まともに実態を保つことができなくなってしまった。そんな自分の能力をシールドに利用され、生活を奪われ、そして想像を絶する痛みと常に向き合ってきたのだ。

 彼女はただ、この痛みを取り除きたかっただけなのである。痛みから逃れたい、普通の人間になりたいと願う気持ちは悪なのだろうか。ビルの忠告を聞き入れ、スコットの娘に手を出さなかった点や、ジャネットを目の前にして素直に助けを求めた点も、彼女が他人をむやみやたらに傷つけたいヴィランでないことを証明している。

4位:ニーガン(『ウォーキング・デッド』)
 
 人気海外ドラマ『ウォーキング・デッド』のこの人、ニーガンもまたヴィランについて深く考えさせられた存在だ。私はもう彼が大好きで仕方ない。だからつい、彼の立場から物語を見進めていくのだが、するとどうやら彼がただの悪い奴ではないことがわかってくる。

 もともと、主人公リックの仲間2人を、愛用するバットで殴り殺した男だ。第一印象は最悪で、サイコパスのようにも思えた。しかし、徐々に彼が「反抗的で危険因子となり得るグループには見せしめで一人殺す」、「人々は資源」というモットーを掲げていることが理解できる。ニーガンは、無駄な殺しや抗争を好まない。そして彼からすれば、リックたちが“やばい奴ら”なのだ。

 ニーガンからすれば、得体の知れない新グループが自分の仲間の寝込みを襲って虐殺してきたのだ。そんなことをされれば自分のグループに所属する女子どもの安全を考えて、一人ぐらい見せしめで殺そうと算段するのもうなずける(2人になったのは、どこかの誰かさんが暴れたから)。

 我々はリックの背中をシーズン1から追って、彼と共に旅を続けてきた。しかし、主人公がニーガンだったら? 彼もまた、リックと同じようにリーダーとして自分のグループの統率をとり、民を守っているだけで、ニーガンなりの正義があるのだ。

 シーズン8では、ニーガンは「弾と労力の無駄」と思っていた全面戦争をついにリックが始める。この戦いを通して、リックとニーガン両者の善のバランスがうまく交錯し、戦争下において悪の所在が明確ではないことを教えてくれる。

3位:グリンデルバルド (『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』)

 もしかすると、「ハリポタ」界で一番恐ろしいヴィランはヴォルデモートではなく、グリンデルバルドなのかもしれない。なぜなら、力づくで人々を従えさせるヴォルデモートと違い、グリンデルバルドは巧みな話術を用いて“相手から来させる”のだから。

 そんなカリスマ性を持つ彼は、本作で魔法族がマグル(ノーマジ)から隠れて生活しなければいけないことに疑問を抱く。自分の種族が劣っていると思いたくない、堂々と生きていたい、人間が支配した世界は戦争が起こる……など、あらゆる動機から(これも彼の巧みな話術の一つかもしれないが)彼は、魔法族の進出を望む。

 これもまた、ヴィランなりの正義と言えるのではないだろうか。そして、自分の種族に誇りを持ちたいというヴィランは、彼以外にも少なくない。

2位:キルモンガー(『ブラックパンサー』)

 キルモンガーは、2018年に登場したヴィランの中で一番ストーリーが深くて泣ける。彼は作品全体を通して、アメリカ系アフリカ人(ハーフ)である自分の真のルーツに手を伸ばし、アイデンティティを確かめようとする。そして、父親の無念を晴らそうとするのだ。ワカンダ人として。

 まず、彼の登場シーンが非常に印象的だった。彼はロンドンの大英美術館の南アフリカコーナーを訪れ、キュレーターに工芸品について質問をする。19世紀のガーナのもの、ベニン王国のものと答える彼女に対して、キルモンガーはワカンダのものだと指摘する。

 自分のもう一つの故郷、ワカンダはアフリカの架空国家だ。現実の史実でイギリスがアフリカを領土にしたという関係性がある中、彼はそれらが“盗品”だとハッキリ言う。この時点で、彼がワカンダに対して強い思いを抱いていることが伺える。

 私はハーフなので、このキルモンガーの気持ちが痛いほどわかった。2つのルーツをもつ人間は、時にどちらにも所属しきれない。しかし、祖国に国民として認められたい。

 そして、彼はワカンダ王国の国王の座を奪おうとするが、これは当時国王であった兄に殺された父の無念を晴らし、世界中にいる黒人たちにこの技術(武器)を共有したいという動機があった。そして、美しい母国の夕日を拝みたい、という気持ちも。

 アメリカの情勢を描いたとも言える本作で、キルモンガーというキャラクターは今最も我々が必要としていたヴィランだったといっても過言ではないほど、その存在そのものが意味深いのだ。

1位:サノス(『アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー』)

 圧倒的な破壊力があるのに実は非常にエモい。そして映画の爆発的ヒットという背景を踏まえ、堂々の1位を獲得したのはサノスだ。彼は単なる紫色のスペース・ゴリラではない。映画では描かれなかったが、サノスの父と母はエターナルズという種族で、彼らはもともと美しい姿をしているのに対し、サノスは醜くく生まれたアヒルの子のような存在だった。

 そのため生みの母親に殺されそうになるなど、とにかく可哀想な幼少期の記憶がある。そんな彼が行き着いた先が虚無主義であり、それが宇宙の生命を半分にする動機に繋がってくる。これが、『インフィニティ・ウォー』では宇宙の均衡を保ちたいという動機に変わっている。

 彼の言い分はこうだ。

「小さな犠牲で大勢を救う。簡単な計算だ。宇宙も資源も限りがある。命に歯止めをかけなければいずれ滅びる。修正が必要だ」。

 このサノス政策は、実はかなり理にかなっている。命を半分にせずとも、資源を確保する方法はあるかもしれない。しかし、彼は何事もバランスが重要であり、それを保つことが宇宙平和に繋がると示唆しているのだ。まさに究極の世直しマンと捉えることができる。

 それに、何よりサノスにも失い難い愛する者(ガモーラ)がいるという事実が、より彼の人間味を引き立てる(人間……ではないけれど)。

 2018年登場ヴィランの中で、彼以上に悪の動機を理解するだけでなく、どこかで「正しさ」を感じてしまうキャラクターはいないだろう。

 ヒーローに正義があれば、ヴィランにも彼らなりの正義があり、それに基づいて行動をしている。

 ただ、2018年公開映画の中には理解できるヴィランたちとは一線を画した、完全悪も存在する。そんな、容赦ない最悪なヴィランたちも簡単に紹介したいと思う。

 まずは、『バーフバリ』シリーズのバラーラデーヴァだ。彼はただ、観客が思う「このキャラ殴りたい」ゲージを上げに上げまくる最高のヴィランだ。ただの“悪い奴”が徹底されていて素晴らしい。

 そして『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』のカルト集団もまた、イカれ狂っていて理解不能なヴィランっぷりを披露してくれた。もっとも、そいつらを片っ端から片付けにいくニコラス・ケイジの方が怖いのだが。

 ただ、時にヴィランは人間とは限らない。

 『クワイエット・プレイス』の謎のクリーチャー……ではなく、主人公の足裏を思いっきりさした釘こそ最恐のヴィランだと思う。あれを踏んで音を出すな、という方が無理に決まっている。クリーチャーより無慈悲な存在だ。

 そして何より、今年のヴィラン中のヴィランは『ヘレディタリー/継承』のペイモン様だ。もう怖すぎて、敬語を使ってしまう。あの一家に対して、そして男の子に対して容赦がなさすぎる。女の子に生まれてよかった。

 また、共通点が多かったと感じる『来る』のぼぎわんと、Netflixオリジナル作品『バード・ボックス』のクリーチャーも称えたい。標的が最も恐怖を掻き立てる対象に姿形を変え、知り合いの声色を使って言葉巧みに命を狙ってくる。見えないけど、“いる”という存在感が何より恐ろしいと思う。

 そして来たる2019年にも早速、最高のヴィランが誕生しそうな作品が公開される。M.ナイト・シャマラン監督の『ミスター・ガラス』だ。不死身のダン、体がガラスのように脆い非凡なIQの持ち主ミスター・ガラス、そして24の人格を持つケヴィンの3人が一堂に会する。特に本作のタイトルともなっているミスター・ガラスは『アンブレイカブル』で、“スーパーヒーローを生み出すために誕生した悪”という、これまでにないヴィラン像を誕生させた。『スプリット』で描かれたケヴィンも、人にとっては善悪つけ難いキャラクターとも言える。本作はヒーローとヴィラン、正義と悪の在り方を我々に問いかけてくれることは確実だろう。 (文=アナイス<ANAIS>)

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