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いま、最高の一本に出会える

『映画刀剣乱舞』は良質な国産ファンタジー “ネオ時代劇”的シナリオが広く支持される要因に?

リアルサウンド

19/1/23(水) 6:00

 『映画刀剣乱舞』が公開中だ。本作は、刀剣育成シミュレーションゲーム「刀剣乱舞-ONLINE-」が原作。すでにアニメ化、舞台化、ミュージカル化と多彩なメディアミックスを展開しており、昨年末、ミュージカル版のキャストが『第69回NHK紅白歌合戦』に出場。大晦日のお茶の間を華やかに賑わせたことでも話題をとった。ある程度、世の中のトレンドに詳しい人なら、ゲームをプレイしたことはなくても、『刀剣乱舞』という名前自体はどこかで聞いたことがあるかもしれない。

 この『刀剣乱舞』とは何か。改めて原作の世界観を説明すると、簡単に言えばタイムパトロールものだ。舞台は、西暦2205年。歴史の改変を目論む歴史修正主義者が、あらゆる時代に時間遡行軍を送り込み、過去への攻撃を開始していた。その侵略を阻止し、正しい歴史を守るために戦うのが“刀剣男士”たち。彼らは、時の政府により歴史の守護役を命じられた審神者(“さにわ”と読む。ゲーム上ではこの審神者がプレイヤーにあたる)の力で戦士へと姿を変えた、刀剣に宿る付喪神。

 つまり、人の形をしているのが、彼らは刀だ。それも織田信長や坂本龍馬など歴史上の偉人たちが実際に愛用した数々の名刀が登場し、様々な時代にタイムトラベルしては時間遡行軍と合戦を繰り広げる。

 ゲームをプレイしたことのない層からすれば、今回の映画は少し縁遠く感じるかもしれない。だが、たとえゲームに精通していなくても十分に楽しめる要素が本作にはぎっしりとつまっている。なので、今回は初めて『刀剣乱舞』にふれる読者に向けて、映画を楽しむポイントを紹介したい。

■和風衣装が似合う有名なスター俳優が集結

 まずひとつ目は、美麗なキャラクターの魅力だ。和をベースにしながらも大胆なアレンジを凝らした衣装。短刀なら愛らしい少年風、槍なら屈強な大男風と、刀の種類に合わせたキャラクターデザイン。と、刀剣男士はビジュアルから個性豊か。和風ファンタジー好きのツボをがっつりと押さえているので、まずはお気に入りのキャラクターを見つけるところから始めてみるのも、ひとつの手。

 そして、それを演じる俳優たちの魅力も大きなポイントだ。鈴木拡樹、荒牧慶彦、北村諒らキャスト陣は、普段映像作品しかふれる機会のない方からすると、あまりピンと来ないかもしれない。だが、彼らは舞台の世界では有名なスター俳優たち。出演が決まるだけでチケットが売れる人気の持ち主だ。

 ファンタジー性の強い華やかな衣装は、着る人を選ぶ。イラストなら自然なコスチュームやヘアスタイルも、生身の人間、それも日本人に合わせるとどうしても下手なコスプレ感が前に出てしまい、チープに見えかねないからだ。

 だが、彼らは違う。目鼻立ちの整ったビジュアルの良さを武器に、ゲーム上の衣装を違和感なく着こなし、さらに長年の舞台経験で鍛えられた殺陣とお芝居はスクリーンでもまったく見劣りしない。むしろ初めて『刀剣乱舞』にふれる方なら、俳優本人の素の部分がちらつかない分、自然と作品世界に入っていけるはずだ。

■耶雲哉治×小林靖子による無駄のない仕上がり

 ふたつ目は、歴史エンターテインメントとしての面白さだ。鈴木ら刀剣男士の多くは、舞台版でも同役を演じている。こうした作品群のことを、演劇の世界では「漫画やアニメ、ゲームといった2次元の世界を3次元の人間が演じる」ことから2.5次元舞台と呼んでいる。

 ただ、それはあくまで舞台の話。予備知識として知っておく程度で、本作についてはあまり変な色眼鏡をかけずに観てほしい。なぜなら、『仮面ライダー電王』など多くの特撮作品やアニメ作品を手がける小林靖子の脚本は、2.5次元うんぬんというより、単純に時代劇として非常に趣向を凝らした内容となっているからだ。

 どちらかと言えば、「ネオ時代劇」的色彩の方が濃い。日本の史実で最も有名な事件のひとつである「本能寺の変」を題材に、「織田信長暗殺」という年表の一行の裏に秘められたドラマを再構築。もしかしたらこういう歴史があったかもしれないと想像が膨らむ、気合いの入ったシナリオだ。小林自身が時代劇のファンでもあるので、『刀剣乱舞』を知らなくても、歴史好きなら十分楽しめると思う。

 耶雲哉治がメガホンをとる映像にもファンタジーとしての華やかさだけでなく、時代劇らしい重厚感が通奏低音として横たわっており、よく磨かれた刀のように鋭く、無駄のない仕上がり。ファンタジー映画やアクション映画と言えば、どうしてもハリウッドを中心とした洋画の勢力が強いが、日本でもこんな作品が撮れるんだとアピールできる良質な国産ファンタジーとなっている。

■「主」の命を守る、忠義の心

 そしてみっつ目は、『刀剣乱舞』の世界観を活かしたシナリオの妙味だ。前述した通り、彼らは刀。つまり、あくまでモノでしかない。だが、そんな刀であることが「織田信長暗殺」という日本史上最大のミステリ-の謎を解く鍵になっている構造が面白い。

 また、それだけでなく、モノであるからこそ、自らの任務にストイックなまでに忠実。そんな刀剣男士の武士道精神が映画でも克明に描写されていた。

 刀である彼らにとって、持ち主は「主」そのもの。「主」の命を守るため、時に多くの敵を斬り、そのたび血にまみれてきた。人の形を与えられた今も、その忠義の心は何も変わらない。不器用なまでに、己に与えられた使命を貫き通そうとする。そこに、現代の日本ではなかなか語られにくい美学が感じ取れるから、つい心を動かされてしまうのだ。

 特に注目は三日月宗近(鈴木拡樹)。正しい歴史を守るため、彼は裏切り者のような行動を取りはじめる。その真意が見えたときに、刀としての潔さと強さが浮き彫りになってくる。これが、普通の人間同士の話なら、まったく別の感慨になっていたと思うので、改めて「名だたる刀剣が戦士の姿となった」刀剣男士という設定の面白さを再発見したような気持ちだ。

 本作をご覧になって興味を持った方は、ぜひ舞台版やミュージカル版の『刀剣乱舞』も観てほしい。日本発、世界で愛される『刀剣乱舞』の魅力はまだまだ果てしなく広がっている。(文=横川良明)

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