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いま、最高の一本に出会える

ユアネスが示したライブの核と真骨頂 ワンマンツアー東京公演を見て

リアルサウンド

19/1/18(金) 19:00

 ユアネスが1月13日、渋谷WWWでワンマンツアー『Shift Tour 2019』の東京公演を開催した。昨年11月にリリースされた1st EP『Shift』に伴う今回のツアーでユアネスは、物語性に溢れた歌詞、豊かな叙情性を帯びたメロディ、ポストロック~マスロックなどを反映したアレンジを含め、バンドの個性と可能性をたっぷりと示してみせた。

(関連:ユアネスが語る、バンドとして変わらず大切にしていること「真ん中にあるのは歌」

 1stミニアルバム『Ctrl+Z』(2018年3月リリース)、1st EP『Shift』を“2作品でひとつの作品”と位置付けているユアネス。“Ctrl+Z”(元に戻す)と“(Ctrl+Z+)Shift”(元にもどしたものを再びやり直す)をつなげることでひとつのストーリーを描いているのだが、この日のライブでも彼らは、まるで演劇か映画を観ているような感覚になれる、“一大叙事詩”と呼びたくなるようなステージを繰り広げた。セットリストの中心はもちろん、2作の収録曲。楽曲の並び方によって、音源とは違った表情が感じられることが、まず印象に残った。メインソングライターの古閑翔平(Gt)は『Shift』のインタビューで「全体的なテーマだったり、伝えたいことの核だったりがはっきりしていたほうがやりやすいんです。それをもとにして、歌詞やメロディを選べるので」(引用:ユアネスが語る、バンドとして変わらず大切にしていること「真ん中にあるのは歌」)とコメントしていたが、ライブを観ると、その発言の意味がはっきりとわかる。それぞれの楽曲に刻まれた言葉やメロディがつながっていき、大きくて豊かな物語が生み出されるーーそれこそが、ユアネスのライブの核なのだ。

 その中心にあるのは言うまでもなく、黒川侑司のボーカルだ。一つひとつの言葉を丁寧に紡ぎ出しながら(仮に『Ctrl+Z』『Shift』を聴いてなかったとしても、すべての歌詞を完全に聴き取れたと思う)、楽曲に込められたストーリーと感情を映し出すような彼の歌は、ライブという場所でさらにエモーショナルの度合いを高めていた。MCのなかで黒川は「一つひとつ物語性のある楽曲作りをしているので、感情に任せてやることが多少難しいところがある」と話していたが、その言葉からは「自分たちの感情よりも、楽曲の世界観を伝えることに集中したい」という意志を感じ取ることができた。ユアネスにとっては、その場だけの一時的な盛り上がりを求めるのではなく、曲をしっかりと伝え、観客一人ひとりの心のなかに刻み込むことが大事なのだと思う。メンバーが演奏する楽曲をまっすぐに受け止め、静かに口ずさんだり、ゆっくり体を揺らしたり、サビに合わせて手を上げたり、それぞれのやり方で楽しんでいる観客の姿も心に残った。

 ライブは基本的に“じっくりと聴く”スタイルで進められたが、緻密に組み立てられたアンサンブル、メンバー個々のプレイヤビリティを存分に活かした演奏もきわめて魅力的である。それがもっとも強く表れていたのが、「少年少女をやめてから」。このバンドのルーツのひとつである2000年代のマスロックの影響を反映させた楽曲なのだが、トリッキーな構成をポップに響かせる演奏は、すでにかなりのクオリティに達している。速弾きを交えたフレーズを正確に描く古閑のギター、楽曲のボトムを骨太のラインで支える田中雄大のベース、そして、腕を大きく振り、スティックを回しながら高難度のフレーズを叩きまくる小野貴寛のドラム(彼の叩き方、めちゃカッコいいです)。そう、ユアネスの音楽世界を支えているのは、楽器隊3人のプレイヤーとしての優れたセンスと技術なのだと思う。

 個人的にもっともグッと来たのは、ライブ後半で演奏された「夜中に」だった。“あなた”との日々を想起しながら、どうしもようなく切なく、出口のない思いに浸っている“僕”を主人公にしたバラードナンバーだが、あえて“弾かない”ことで楽曲に込められた風景を浮き彫りにする演奏、ストーリーテラーとしての役割を果たしながら、物語に強い感情を与えるボーカルは、まさにユアネスの真骨頂と言っていいだろう。

 そのほか、ピアノのトラックと歌という編成で披露された新曲(この曲に関して古閑は、「黒川が勝てる曲、ボーカルを活かした曲にしたい」と言ったのだとか)、「みなさんが歌っているこの曲が大好きです」(黒川)という言葉によってシンガロングが起きた「pop」、楽曲の世界観を増幅させるような照明、そして「メンバーと一緒に曲を作って、それをみなさんに聴いてもらえたことで、どんどん音楽が好きになれた。音楽で恩返ししたいと思いますので、よろしくお願いします」という黒川のMCなど、印象的なシーンが数多くあったこの日のライブ。楽曲を介した純粋なコミュニケーションをたっぷりと体感できる、濃密なステージだったと思う。

 この日、同ツアーの追加公演を3月23日に北海道・札幌COLONYで開催することを発表したユアネス。リスナーが増え、バンドが大きくなるにつれて、彼らが描き出す物語のスケールもさらに深みを増していくはずだ。

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。