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KOHH、ANARCHY、SALU……異彩を放つ“ネームドロップ”がもたらす効果を解説

リアルサウンド

19/3/14(木) 7:00

 2月1日にサプライズリリースされたKOHHの約2年半ぶりとなるニューアルバム『UNTITLED』。このアルバムのリード曲「I Want a Billion feat. Taka」は、世界のロックシーンで活躍するONE OK ROCKのTakaとの共演や、渋谷109での「MX4D®モーションシート」による体感型アトラクションイベントにより大きな話題となった。そしてこの楽曲は、ダイナミックなロックサウンドに乗せてラップするKOHHのリリックにも注目が集まった。

(関連:JP THE WAVYからKOHH、SKY-HI、SALUまで 日韓ラッパーのコラボが活発化

〈俺はエスコバルよりもピカソ/Tじゃない方のパブロ/年齢重ねて子供になるよ/考えないで感じれば楽勝〉

 今まであまり日本のラッパーのネームドロップをしてこなかったKOHHだが、コロンビアの麻薬王・エスコバルと天才画家・ピカソのファーストネームのパブロにかけて、「Tじゃない方のパブロ」という独特の言い回しでBAD HOPのT-Pablowをネームドロップしている。

 この強烈なパンチラインのネームドロップがリスナーから多くの反響を呼び、『フリースタイルダンジョン』の審査員でおなじみのERONE(韻踏合組合)も「Tじゃない方のパブロの対義語選手権」をTwitter上で開催。「光一じゃない方の堂本」など100以上のリプライが集まっている。

 ここでラップにおけるネームドロップの意義を簡単に説明すると、リリックの中にいろいろな人の名前を出して、その人を批判すればディスになり、リスペクトの意を示せば友好の証となる。自分が認める若手の名前を出せばフックアップになり、誰もが知っている有名人の名前を出せばその人のイメージを想起させる比喩表現となる。今回の「I Want a Billion feat. Taka」のT-Pablowのネームドロップは、KOHHが今注目しているラッパーとしてリスペクトを示すために用いられていると言えるだろう。

 そこで本稿では、近年話題となった特徴的なネームドロップの楽曲を紹介していきたい。

■ANARCHYによる日本語ラップ賛歌「LOYALTY」

 3月13日に発売された約2年半ぶりのANARCHYのニューアルバム『The KING』は、「13」をテーマに13人のラッパーで構成された13曲を収録。数量限定生産で13,000円(税込)という異例の価格設定でも話題を呼んでいる。

 そんな彼の2013年のアルバム『DGKA』は、今回のアルバムとは逆にフリーダウンロードという形で発表され、当時画期的な作品だった。そしてそのアルバムの収録曲「LOYALTY」は、ANARCHYが今まで影響を受けてきた20組の日本のラッパーやグループがリリックの中にネームドロップされている。

〈みんなの気持ちをラップで歌う/Zeebraは今でも渋く振舞う/AKは昔からマイメン/D.Oずっと変わらないぜ/媚び売るつもりはない/俺はそんなタイプじゃない/もっとラップが巧くなりたい/NORIKIYOやMEGA-Gみたいに/漢はどれ聴いてもカッコイイ/一緒に遊ぶのも楽しい/歌舞伎町でハメを外す/いつも飲み代は漢が出す/MACCHOのライブは涙が出る/今でもどの時代の曲も/心動かすモンが本物/良い曲が流れたら踊ろう〉

 NYを代表する人気プロデューサー・STATIK SELEKTAH(スタティック・セレクター)が手掛けたソウルフルなトラック上で、日本を代表するラッパーの一人となったANARCHYが〈今でも憧れはラッパーたち〉と歌い、〈妄走族、NITRO/俺たちの声を聞いてくれよ/どんな金持ちよりもカッコイイ/ライブをもう一度見せてほしい〉とヒップホップヘッズの立場で、妄走族とNITRO MICROPHONE UNDERGROUNDへの思いを吐露している。

 ヒップホップに対するANARCHYの愛情が詰まった“日本語ラップ賛歌”だ。

■SALUの多様なネームドロップが炸裂「Shell Shocked(Remix) feat. Aico」

 2015年に公開され大ヒットした映画『ミュータント・タートルズ』。ジューシー・J、ウィズ・カリファ、タイ・ダラー・サインによる本作の英語版テーマソング「Shell Shocked feat. Kill The Noise & Madsonik」をビートジャックしたSALUの「Shell Shocked(Remix) feat. Aico」もネームドロップが多用されている。

 この楽曲はKOHHやAKLO、リアーナといったヒップホップリスナーにはおなじみの名前も登場するが、きゃりーぱみゅぱみゅや渡辺直美、水原希子、ローラ、ONE OK ROCK、サカナクションといった芸能界やロックシーンのビッグネームもドロップされていることが特徴だ。

〈まず不可能を可能に/世界に飛び出すまるで渡辺直美/リアーナか希子水原/ワンオクかサカナ〉

 このように一般的なリスナーにも知名度のある有名人やアーティストをネームドロップすることで、リリックのイメージが広がり楽曲の展開がオープンになる。これはステレオタイプのラッパーではないSALUだからこそ表現できるネームドロップであると言えるかもしれない。

 ちなみに『ミュータント・タートルズ』の日本語版テーマソングはRIP SLYMEが手掛けた「ナイショデオネガイシマス」。「ミュータント・タートルズ」を彷彿とさせるワードが散りばめられたユニークな楽曲なので、そちらも合わせて聴いてみると面白い。

 このように、ラップにおけるネームドロップは、ラッパーのキャラクターを表したり、リリックの表現の幅を広げるための重要なテクニックのひとつである。他にもネームドロップが出てくる楽曲は数多くあるので、ぜひチェックしてみてほしい。(橋本洋平)

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