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BMTH、Fever 333、Papa Roach……話題作から「2019年のラウドシーンの在り方」を考察

リアルサウンド

19/1/28(月) 8:00

 2019年に入り最初のメタル/ラウド系新譜キュレーション連載となりますが、この1月には早くも今年のシーンの動向を予兆させるような新作が多数発表されています。

 まず最初に紹介するのは、アメリカ・イリノイ州出身のデスコア/プログレッシブメタルコアバンドBorn of Osirisのニューアルバム『The Simulation』。デビューEP『The New Reign』(2007年)のリメイク作品『The Eternal Reign』(2017年)を直近に発表している彼らですが、オリジナルアルバムとしては2015年の4thアルバム『Soul Sphere』以来3年3カ月ぶり。今作は全8曲、約26分と非常に短いものですが、これは年内にもう1枚のニューアルバム発売が控えていることも影響しているのでしょうか。あるいは、フィジカルよりもサブスクリプションサービスを重視した昨今の動向も反映されているのかもしれません。

 彼らはキーボードを含む5人編成で、先の説明のとおりデスコアやプログレッシブメタルコア、さらにはジェントと呼ばれるプログレッシブメタルの派生ジャンルに属するサウンドが特徴。デスコアと聞くと非常にブルータルで直情的な印象が強いですが、そこにシンセを多用したドラマチックなサウンドメイクと先行きの読めない複雑怪奇な曲展開/アレンジが加わることで、独特の世界を構築しています。こういったジャンルもすでに飽和状態にありますが、リメイク作『The Eternal Reign』で原点を見つめ直したあとのタイミングに発表する今作ではヘヴィメタルバンドとしての王道感が見え始めています。この1枚で彼らの今後の方向性を語るには少し情報が足りない気もしますが、このあとに控えているもう1枚の新作とあわせて聴くことで見えてくるものがあるのではないでしょうか。

BORN OF OSIRIS – Cycles Of Tragedy (Official Music Video)

 続いては、アメリカ・ルイジアナ州出身のメタルコアバンドCane Hillの最新EP『Kill The Sun』です。彼らは90年代後半から2000年代前半に流行したニューメタルやメタルコアを、現代にリバイバルさせようとするシーンから登場した4人組バンドで、昨年1月に2ndフルアルバム『Too Far Gone』を、同年9月には初のライブアルバム『Live From The Bible Belt』を立て続けに発表するなど、精力的な活動を続けています。

 オリジナル新作としては1年ぶりとなる今回のEP『Kill The Sun』ですが、本作はこれまでの本筋からちょっと外れた番外編的な1枚と言えるでしょう。フロントマンのElijah Witt(Vo)は本作の作風に対して「Alice In ChainsのEP『Jar Of Flies』(1994年)やグランジブーム期の『MTV Unplugged』から大きな影響を受けている」とインタビューで説明しており、実際アコースティックを主体とした、肩の力の抜けた緩やかな作品となっています。多くの先人たちがこのようなトライを経て自身の音楽性の幅を広げたのと同じように、Cane Hillもこの先の新作でさらなる変化を遂げることになるのか。そういった意味では今回の『Kill The Sun』はCane Hillが一介のメタルコアバンドで終わるか否か、ひとつの分岐点になる重要作品と言えるでしょう。

Cane Hill – 86d – No Escort (Official Music Video)

 3枚目は、昨年の『FUJI ROCK FESTIVAL ’18』で強烈なパフォーマンスを披露して大反響を読んだアメリカ・カリフォルニア州出身の3人組バンドFever 333の1stフルアルバム『Strength In Numb333rs』です。2019年最初の重要作品といえる本作は、昨年配信とLPのみで発表されたEP『Made An America』に続くオリジナル作品(同作は日本のみでCD化)。ジョン・フェルドマン(Goldfinger)&トラヴィス・パーカー(Blink-182)をプロデューサーに迎えて制作され、アグレッシブながらも全体的にバランスの整った1枚に仕上がっています。

 ボーカル、ギター、ドラムというトリオ編成ながらも非常に分厚さを感じさせる彼らのラップコアサウンドは、聴く人によっては「Rage Against The Machineの再来」と感じるかもしれません。筆者は前作の時点でTwenty One Pilotsなどとの共通点を指摘してきましたが、この新作を聴いて最初に思ったのはLinkin Parkなど2000年代初頭に登場したニューメタルやポストハードコアバンドでした。先に挙げたRage Against The Machineも含まれると思いますが、こういったルーツを現代的な手法(ここにTwenty One Pilotsとの共通点があるように感じる)でアップデートすることでオリジナリティを確立させようとしているのではないでしょうか。3月には単独来日公演も控えていますが、おそらく昨年のフジロック以上に熱の高いパフォーマンスを見せてくれる……この新曲群を聴いて、そう確信しました。

FEVER 333 – BURN IT [OFFICIAL VIDEO]

 4枚目は、もはや大御所感すらあるアメリカ・カリフォルニア州出身の4人組バンド、Papa Roachの10thアルバム『Who Do You Trust?』です。2000年のアルバム『Infest』でデビューし、「Last Resort」や「Scars」といったヒットシングル曲も多数生み出してきた彼ら。初期こそラップボーカルを軸としたニューメタルサウンドが支持されますが、作品を重ねるごとにオルタナティブロックやストレートなハードロックへとシフトチェンジしていきます。近作ではエレクトロの要素も強めつつありましたが、前作『Crooked Teeth』(2017年)ではラップメタル/ニューメタルへと最接近し、過去のキャリアを総括するミクスチャーサウンドで初期からのファンを喜ばせました。

 今回の新作『Who Do You Trust?』でもそのミクスチャーロックサウンドは健在で、バンド形態を無視した打ち込みでの表現やモダンなダンスチューン、ヒップホップを彷彿とさせるトラック、1分半に満たないハードコアナンバーなどバラエティに富んだ楽曲が次々に繰り出されます。ラップボーカルやスクリームなども目立つものの、要所要所で飛び出すキャッチーなメロディが本作をよりポップなものへと昇華させています。前作での表現はまだまだ甘かった、これこそがPapa Roachなんだ!との叫びが聞こえてきそうな、自信に満ちた楽曲群はまさに10枚目にして到達した彼らの真骨頂なのかもしれません。

Papa Roach – Who Do You Trust? (Official Music Video)

 最後は、つい数日前に海外でリリースされたばかりのBring Me The Horizon待望の新作『Amo』。イギリス・シェフィールド出身の彼らはデビュー当初こそブルータルなデスコアサウンドで注目を集めましたが、アルバムを重ねるごとにそのサウンドを変化/進化させてきました。特に、ジョーダン・フィッシュ(Key)が加入してシングルギター編成となったタイミングで発表された4thアルバム『Sempiternal』(2013年)ではエレクトロニコアの色合いを強め、続く5th『That’s The Spirit』(2015年)ではポップさの目立つニューメタル的スタイルへと移行。その結果、同作は全英&全米2位という大成功を収めています。

 その『That’s The Spirit』から約3年半ぶりの新作となる今回のアルバムでは、さらに劇的な変化を遂げています。オリヴァー・サイクス(Vo)はこのアルバムについて「今までやってきたようなサウンドではない」と事前に発言していましたが、「Mantra」など直近のスタイルに近い楽曲あれど、もはやメタルやハードコアからはかけ離れたトランシーなトラックや、モダンテキストのポップチューン、ラウドなギターが轟くもののその後ろでブラスセクションが鳴り響く楽曲など、多彩さは前作以上。確かにオリヴァーの言うとおり「今までやってきたようなサウンド」からはかけ離れたものが多く含まれています。しかし、どの曲からも前作、前々作から脈々と受け継がれる彼らの血や匂いがしっかり感じられる。だからなのか、筆者は特別違和感を得ることなく、するっと楽しめる1枚でもありました。

Bring Me The Horizon – MANTRA (Official Video)
Bring Me The Horizon – nihilist blues (Lyric Video) ft. Grimes

 ここ数年、エクストリームメタルが単に“激しさ”を“極限まで”追求するものではなく、“多様性”を“極限まで”追求するものへとシフトしつつあることがいろいろなバンドの新作から感じ取れましたが、Bring Me The HorizonやPapa Roachといったバンドがそれを見事に体現。Fever 333やCane Hillのように自身のルーツに正直なバンドも増え、Born Of Osirisは少ない曲数でアルバムを年に複数枚発表することに挑戦する……今回紹介した5枚を通して、このシーンが少しずつ多様化を見せはじめているのではないか?と感じたのは、筆者だけでしょうか。2月には国内からもONE OK ROCKが2年ぶりのアルバム『Eye of The Storm』をリリースしますし、今後もこういった傾向は続いていきそうです。こういった変化がどこまで受け入れられるのか、今年1年かけて見守っていきたいと思います。

■西廣智一(にしびろともかず) Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

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