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ヴィジュアル系シーンの“閉塞感”をどう打開する? ライター4名による2018年振り返り座談会

リアルサウンド

18/12/29(土) 10:00

 YOSHIKI feat. HYDE、X JAPANの無観客ライブ、2度目の『LUNATIC FEST.』……2018年も様々なトピックがあったヴィジュアル系シーン。ゴールデンボンバー以降新たに注目されるアーティストが少なく、“閉塞感”があると言われがちだが、実際はどうなのだろうか。今回リアルサウンドでは、音楽専門学校や事務所で新人発掘の経験を持つ冬将軍氏、8月に市川哲史氏との対談本『すべての道はV系へ通ず。』を上梓した藤谷千明氏、当サイトでヴィジュアル系を中心としたコラム、レポートを執筆しているオザキケイト氏、白乃神奈氏の4名のライターによる座談会を行なった。2018年の動きを振り返りつつ、近年のシーンの動向や注目の若手アーティストについてじっくりと語ってもらった。(編集部)

(関連:鬼龍院翔、単独公演で示した“歌”への思い バラード曲やMUCCカバー披露した『ひとりよがり6』

■『LUNATIC FEST.』、『バグサミ』などの大型イベント&サウンドの“原点回帰”
ーー今年は『LUNATIC FEST.2018』(以下、ルナフェス)がありましたね。

藤谷千明(以下、藤谷):そもそも『ルナフェス』をヴィジュアル系のイベントに括ってしまうことが果たして正解なのかという疑問が出てきますが……。

オザキケイト(以下、オザキ):呼んだアーティストも含めて前回とは全く別物になった印象はありましたね。

藤谷:前回はRYUICHIがステージ上で“ロックの地層”と表現したように、LUNA SEAが影響を受けたアーティストとLUNA SEAに影響を受けたアーティストという縦の繋がりでしたけど、今回は初日も二日目もLUNA SEAとなんらかの縁があるアーティスト、という横の繋がりを感じるラインナップでした。

オザキ:その中で今年明徳さんが復帰したlynch.は念願の『ルナフェス』出演。「SLAVE」をカバーしてSLAVE(=LUNA SEAファン)たちの心を掴んだ結果、ツアーファイナルのTDCホールを早々に売り切ったのはいいニュースでしたね。

白乃神奈(以下、白乃):ああいう事件で復活して成功するバンドって珍しいですよね。

冬将軍: BUCK-TICKの今井寿復活くらいですかね。

藤谷:それは四半世紀以上前の話じゃないですか。オザキさんや白乃さんはまだ二足歩行してない頃ですよ。その時とは時代が違う上、一度は脱退したメンバーを戻すこと自体異例ですし、インディーズではなくメジャーのまま復帰できたのはバンドはもちろんですが、周囲の努力や熱意も相当のものでは。

ーーバンド主宰のイベントとしてはBugLugが主宰した『バグサミ』も今年開催されました。

藤谷:昨年1月に行われ、今年はツアーも開催されたDEZERTの『This Is The “FACT”』などもそうですけど、バンドが主体となった大きなイベントは増えている傾向にありますね。自分たちの世代だけではなく、上の世代のバンド、『バグサミ』でしたら、BAROQUEやA9といった上の世代とザアザアや甘い暴力といった下の世代も巻き込んでいたのが印象に残っています。ここ数年開催されているR指定の『メンヘラの集い』は、アーバンギャルドやミオヤマザキなど、ジャンルを問わず“メンヘラ”感のあるアーティストが集まっていたりと、バンドのカラーが見えるのも面白いですね。

白乃:『バグサミ』に関しては先輩後輩に関わらず、BugLugとと何かしら関係があるなど、しっかり呼ばれる理由があるバンドを呼んでいた印象ですね。それに、フェス自体もバンド同士のバチバチした感じではなく、“みんなでヴィジュアル系シーンを盛り上げていこうぜ!”という雰囲気を感じました。

オザキ:去年の話にはなりますけど、DEZERT主宰の『This Is The “FACT”』の空気感は『バグサミ』とは真逆のバチバチした感じだったので藤谷さんの言うようにバンドによってカラーの違いはあると思います。

ーー近年ヴィジュアル系シーンで話題の中心にいたDEZERTは、今年雰囲気が変わったと傍から見て思ったのですが。

オザキ:元々DEZERTというバンドは曲の良さと、キャッチーさを持ち合わせているバンドで、そこをグロテスクな表現や破天荒な行動でデフォルメしていたバンドだと思っていたので、個人的には変わったというよりはそういったものを取り払って元の姿が顔を見せた、という印象ですね。ただ、一部からは“変わった”とか“ポップになった”という印象を持たれているとは思います。

藤谷:“ポップとは何か”という話ですよね。それこそゴールデンボンバーが「暴れ曲」というタイトルでパロディをするくらいヴィジュアル系バンドが全体的にラウドやメタルをベースにした身体性をもった激しさに振れていっている中で、ポップと言われることをやっているDEZERTの方が尖った表現だという見方もできます。

オザキ:DEZERTというバンドが近年の若手ヴィジュアル系のトレンドになったというのは大きくて、そこから元祖が一抜けしたような感覚というか。

藤谷:そういう意味で “ヴィジュアル系は音楽ジャンルじゃない”と言われる中で、現代のヴィジュアル系バンドのサウンドの代表として挙げられるようなthe GazettE、lynch.らが今年リリースしたアルバムにも変化があったように思うんです。

ーーというと?

藤谷:言語化が非常に難しいのですが“ヴィジュアル系っぽさ”があるというか。美しいメロディ、男性のセクシーさ、なおかつ彼らが過去に聴いていた90年代のヴィジュアル系をパロディではない形で昇華してるという風に捉えました。

冬将軍:バンドって長年活動していくと一周周って原点回帰というか、いろいろやっていく中で自分たちに見合ったもの、求められているものがわかってくる。特にthe GazettEに関してはやり尽くした感もあるんだと思います。今回のツアー、ホールもライブハウスも見ましたけど、“これぞヴィジュアル系”という美学があって、めちゃめちゃ良かったですよ。

藤谷:『NINTH』はここにきて初期衝動を感じさせるようなアルバムになっていますし。

冬将軍:音としてのヴィジュアル系のカッコよさが、きちんとthe GazettEのカラーになっている作品ですよね。このバンドは常に“俺ら最高!”という自信に溢れていることが圧倒的な強さだと思っていて。ロックバンドってそれが全てだし、特にヴィジュアル系はそうあってほしい。でもやっぱり世間的に見れば偏見や誤解もあるし、どこか肩身の狭さを感じる場合も少なくはない。だけど、彼らはどこ行っても、ちゃんとヴィジュアル系であることの誇りを持ってる。私はダークヒーローって例えるんだけど、そういう魅せ方がうまいんですよね。主人公よりもヒールに憧れる少年心ってあるじゃないですか。ロックに目覚める瞬間ってそういうものだと思うから。the GazettEのライブを初めて観た中学生男子が「俺、明日鼻布巻いて学校行くわ!」みたいな(笑)。

藤谷:冬将軍さんがブログで指摘していましたけど、2000年代、DIR EN GREYを筆頭に海外のヘヴィロックシーンからの国内のヴィジュアル系の接続みたいな流れがあったじゃないですか。それがヴィジュアル系の海外評価にも大きな影響を与えましたよね。2010年代に入ると、the GazettEやMUCCがいち早くダブステップを取り入れていましたし。それが、ここに来てある意味90年代ヴィジュアル系回帰ともとれる作品を出しているのが今年気になった点ですね。

オザキ:原点回帰に関しては、単純にそれなりのキャリアが積み上がって、当時自分たちが好きだったものを今表現したら、ちゃんと自分たちの音になる自信があるからこそ、このタイミングだったのかなとは思います。彼らがこのまま回帰を続けるとも思えないので、この次にどう出るのか気になります。

藤谷:今、若手バンドの取材などでルーツを聞くと、ヴィジュアル系バンド以外ですと、ONE OK ROCKやUVERworldを挙げることが多いんです。この2組は時代と同期するようにヒップホップに振れている。その一方で、ヒップホップを取り入れるヴィジュアル系はあまりいないし、むしろヴィジュアル系のサウンドを引っ張っているといえるバンドらが原点回帰している。

オザキ:彼らがロックに目覚めた時に聴いていた当時の音楽性をなぞっているからじゃないですかね。だからちょっと時差があるというか。なので今この瞬間にロックに目覚めた子はヒップホップを取り入れるんじゃないか、と。

藤谷:Leetspeak monstersはゴスとヒップホップを組み合わせてキャラクターとして成立させていますね。彼らはもともとは畑ちがいで、数年前にヴィジュアル系のフィールドに”参入”してきたタイプのバンドゆえの面白さがありますね。

■シーン全体の“閉塞感”を打破するバンド
ーーサウンドの原点回帰含め、側から見るとやはりシーン全体に閉塞感があるという印象なのですが、何が原因なのでしょうか。

冬将軍:ジャンルではないと言いつつ、ジャンルが確立されてしまった、というのは大きいでしょうね。DIR EN GREYの海外での成功がシーンにもたらした影響力は計り知れないものがあるわけだけど。いわば“脱ヴィジュアル系”をしながら海外進出した彼らが、ヴィジュアル系へ回帰するような動きを見せていることがいろんなことを物語っている気がします。何が海外でウケているのか? 日本語詞、節回し、サウンド……そして、その世界観を強調するためのメイク。それが“日本人にしか出来ない日本人が生み出したロック”として世界に認められたわけだけど、同時にそれは様式美が出来上がってしまったことなのかもしれません。

藤谷:世間的なヴィジュアル系のイメージがあった上で、新規を引き込むようなスター性のある存在がゴールデンボンバー以降現れていないですよね。ブレイクから、かれこれ5年以上経ってますけど、そこに代わる存在が出て来ていないし、メディアは発見できていませんし、シーンも育てられてないというのが現状です。

冬将軍:ヴィジュアル系は真っ当な音楽的評価を受けづらい背景もありますよね。海外では“日本独自のロック”として認識されているのに、国内だと“アニメ人気”、“2.5次元”で片付けられてしまう。振り返ると90年代も00年代も、そうした風潮に抗うような“脱ヴィジュアル系”勢力がブームの起爆剤になってるんですよ。だから今の時代に“俺らはヴィジュアル系じゃない”って言えるヴィジュアル系バンドが出てくれば面白くなるんじゃないかな。自分が昔担当していたバンドは“ヴィジュアル系バンド”という言葉がNGで、そう書かれた取材原稿を全部“ヴィジュアル系ロックバンド”に替えるんです。そういうこだわりって大事だと思います。同様の理由で“ガールズバンド”と呼ばれることを嫌う女性バンドや、“アイドル”と言われることを嫌うガールズグループもいますよね。それこそアイドルには、“楽曲派”なんていう言葉もあるけど。

藤谷:冬将軍さんは最近アイドルを追われていますよね。

冬将軍:ここ何年か、新宿LOFTや目黒鹿鳴館に行くのはアイドルのライブばかりですね(笑)。かつてのバンドの聖地が今、アイドルの聖地になってるんです。そんな“ライブアイドル”とも呼ばれる、インディペンデントのアイドルシーンは今いちばんいろんな音楽ジャンルが集まっている場所ですね。「同じ音楽をやるならバンドがやるよりアイドルがやったほうが面白いのでは?」と考える人たちが、演る側にも聴く側にもたくさん集まっていて、アイドルというフォーマットを使った音楽表現の可能性をみんなで探っている。じゃあ、ヴィジュアル系というフォーマットは? と考えたとき、今面白い音楽をやろうと思ったらヴィジュアル系である必要はないのかもしれない。

藤谷:例えば15年くらい前だったら“ヴィジュアル系なら何をやってもいい”という理由でこのシーンに来た人もいた。やっている音楽が歌謡曲でもモダンヘヴィネスでも”ヴィジュアル系”とされていて、それこそゴールデンボンバーもその”自由さ”からこのシーンに現れた。”面白い音楽”はヴィジュアル系にあった。そういう“何でも出来る場所”故の楽しさを、今は冬将軍さん的にはアイドルに見出しているってことですよね。

冬将軍:アイドルプロデュースにまわったバンド出身の人たちが多いことも、そうした“自由さ”を求めてのことだと思います。ヴィジュアル系シーンを作ってきたフリーウィルが、今やアイドルを手掛けているくらいですから。イベントやコラボなど、アイドルとバンドが絡むことは珍しくない昨今ですけど、老舗ヴィジュアル系事務所が女子アイドルをマネジメント&プロデュースするなんて、ものすごい時代になったことをあらためて実感させられますね。ホラーメイクのDIR EN GREYと、キラキラした女の子たち 2o Love to Sweet Bulletのアー写が並んでいる所属事務所のウェブサイトは強烈なインパクトを放ってますし。

オザキ:やっぱりジャンルのイメージが確立されて、ヴィジュアル系でやるならこういう音楽というものが固まってしまったのはあると思いますね。

冬将軍:今、リスナーが求めているところもイメージ通りのヴィジュアル系のような気がする。ただ、いろんな音楽をやったほうが偉いわけではないので、それは悪いことじゃないと思います。それぞれに見合った音楽があるわけだし。

藤谷:これは個人的な印象になってしまうんですが、“聴いた人をバンギャル(ヴィジュアル系のファン)にするバンド”ではなく、“今いるバンギャルに向けたバンド”が強いのかな? と思ってしまうんです。リスナーを自らの世界観に引き込むのではなく、リスナーの世界観に寄せていく感じ。リスナーの需要よりも “俺はこの世界観が好きでこの音楽をやるんだ!”という気持ちが先走っているバンドはあまり目立ってない気がします。

白乃:去年からベル、Chanty、Develop One’s Faculties(DOF)の頭文字をとって“BCD”と呼ばれる3バンドがスリーマンツアーを周ったりしているんですけど、彼らは今のヴィジュアル系のメインストリームからは少し外れた音楽をやっていると思います。

ーー“BCD”の魅力はどういうところでしょう?

白乃:DOFのruiさんはたまに“ヴィジュアル系をやってる人は他と違うことをやりたくてやっていたはずなのに、最近は似たようなバンドばっかり。自分たちは他にはない音楽をやっている”と言っています。実際今のシーンのトレンドとは少し違ったギターロックを軸に、キャッチーなメロディに複雑な変拍子を交えるような、いわゆる“わざわざヴィジュアル系でやろうとは思わないような音楽”をやっているところですかね。

藤谷:今年Chantyは周年のO-WEST公演が5年目にしてソールドしましたもんね。浮き沈みの激しいシーンの中で、地道にやってきた結果だと思います。

白乃:そうですね。Chantyは昨年メンバーの脱退や活動休止といった事態に見舞われましたから、それを乗り越えた結果だとは思いますが、“BCD”の結束による相乗効果もかなり大きかったと思っています。

オザキ:最近“BCD”のような少数バンドによるツアーが増えましたよね。今現在若手有望株にあげられるRAZOR、DADAROMA、ザアザア、GRIMOIREによる『火炎瓶』ツアーも記憶に新しいですし、ボーカルが東北出身という共通点を持つD、GOTCHAROCKA、DIAURAによる『MICHINOKU THREE KINGDOMS』ではお互いのバンドの楽曲をカバーした音源を出すのが恒例になっていてバンド側も楽しんでやってるなぁと思わされます。

藤谷:それこそR指定、己龍、BugLug、vistlipによる『均整を乱す抗うは四拍子』(2015年)くらいから帯になって盛り上げていく流れは感じますね。今年はMUCC、Psycho le Cému、Waiveの『MUD FRIENDS』もありましたし、バンド同士でタッグを組む方が文脈が作りやすいというのもあるかもしれませんね。

ーー閉塞感を打破するようなイベントや良いバンドはもちろんいる、と。

オザキ:セールスや動員という実数を抜きにすれば面白いバンドは少なからずいますよね。“BCD”の流れから挙げると、その3バンドと一緒に数年前にツアーを周って仲がいいアンフィルは、空間系のエフェクターを使った洒落たギターが特徴の歌モノバンドで、浮遊感とちょっとした毒々しさをもっていて面白いですね。

藤谷:私はAIOLINに注目しています。より王道でメロディアスですけど、バイオリンとラウドサウンドの融合も目新しいですし、ボーカルのヒカリトさんはバイオリン以外にもピアノやギターも担当する多才なフロントマンです。楽曲のクオリティも高いと思います。

オザキ:ヒカリトさんは芸大卒なので知識と技術に裏打ちされたものを感じますね。

藤谷:AIOLINとは違った意味での王道ですが、Rides In ReVellionも面白いですね。“調和する時間の矛盾”がコンセプトで、古き良き時代のヴィジュアル系と現代的なものを融合させていて、この世代だから出来る王道をやってると思います。

オザキ:ギターがめちゃくちゃクサいのがいいですよね。

藤谷:いまシーン全体を見ると変化球的なバンドの方が注目されがちなんですよね。今年ZeppTOKYOでワンマンを行った0.1gの誤算は、楽器を置いて踊ったり、ゴムボードでフロアにダイブしたりとギミック満載のライブを行っています。他にも今年Tik Tokで「ちゅーしたい」という楽曲がバズった甘い暴力や、「お邪魔します」がバズったまみれたも、フロアでブレイクダンスを踊ったり……ギミック多めなんですよね。もちろんそれはそれで面白いし魅力的なんですけど、その中で王道をやっているバンドもいることは発信していきたいですね。

オザキ:そのトレンド寄りのバンドではあるんですけど、僕は今年DIMLIMの「vanitas」には度胆を抜かれましたね。ゴリゴリなメタルというパブリックイメージを壊すようなクリーントーンのギターで構成された楽曲で、意外性があったし、こういうバンドがやることで幅と奥行きが出たな、と。

藤谷:まだ結成間もないですけど、タソガレニ鳴ク。が面白いです。色んな音楽の要素を表面張力いっぱいに突っ込んでる感じがして、さっき言ったような「こういう音楽がやりたい」という勢いが伝わってくるというか。

オザキ:あと今年はDuelJewelの祐弥さんがユウヤヤバセとしてソロデビューしたり、摩天楼オペラの苑さんがソロプロジェクト・運命交差点を始動したりしていました。mitsuさん(ex.ν[NEU])やSHINさん(ex.ViViD)等、近年増えたヴィジュアル系ソロアーティストの出現がより加速した感じがあります。

藤谷:ユナイトの椎名未緒さんもソロ活動を始めましたしね。

オザキ:そういう意味で元SuGの武瑠さんがsleepyheadとして出した2枚の音源はどちらも素晴らしかった。色々なジャンルを取り入れて昇華して、映像やファッションにまでこだわるのはトータルアートとしてクオリティが高いですし、武瑠さんのセンスはhideさんに通ずるものがあるな、と感じます。

藤谷:音楽と映像表現とファッションが連動するというのは、むしろすごくヴィジュアル系だなと思いますね。

オザキ:あとはBAROQUEですね。どうしても“昔すごかったバンド”と思われがちですけど、その枠に収まるには勿体ないくらい良い音楽をやっている。二人になって打ち出した、壮大な『PLANETARY SECRET』(2015年)の路線から、kenさん(L’Arc~en~Ciel)がプロデュースで関わった『G I R L』(2016年)でポップさを吸収して、今年絶妙なバランスになったと思います。

■YOSHIKI feat. HYDE、X JAPAN無観客ライブ…2019年への期待は?
藤谷:今年というより近年の話にはなりますけど、kenさんが中堅バンドをプロデュースすることが増えましたよね。

白乃:BAROQUEもですし、今年はDaizyStripperやA9もプロデュースされていました。

冬将軍:“ギタリストのプロデュース”って感じですよね。プロデューサーにベーシストが多いのは全体のバランスを見れるというところにあるんだけど、「ギターヒーロー不在」と言われる時代に良い意味でギタリストらしいエゴを感じました。BAROQUE然り、ギターが面白いバンドなので合っていると思います。

藤谷:L’Arc~en~Ciel繋がりだと今年HYDEさんのソロが再開されましたが、VAMPSの進化系と言えるような、ヘヴィロック路線でした。そこにHYDEさんの強い意志が見えるなと思うのですが。今年活動休止したSADSもやはりヘヴィロックへのこだわりが見える。

冬将軍:サウンドとして好きなんだと思いますよ。L’Arc~en~Cielの初期はMinistryをSEとして使ってたくらいなので、原点的なものはそこにあるだろうし。インダストリアルからのミクスチャーロックという、90年代のあの時代を生きてきたからこそ出せる音。今のラウドロックシーンは開放的で洗練されてますよね。でも、あの頃ってもっと内に秘めたギラギラ感があったと思うんです。SADSはその辺りが顕著で、“ヘヴィ”ではなくなってきているシーンへのアンチテーゼを感じました。

ーーHYDEさんといえば、今年はYOSHIKI feat. HYDEというコラボがありました。

冬将軍:楽曲以前にYOSHIKIとHYDEがついに繋がった、という点が大きいトピックだったと思いますね。

ーー待望のコラボだった、と。

オザキ:待望というよりは、“こんなこと起こるんだ!”っていう印象が強いですね。それくらい想像もしなかった出来事だったので。

冬将軍:HYDE本人も“90年代じゃありえなかった”って言ってますしね。

ーーX JAPANの無観客ライブというトピックに関してはいかがですか。

白乃:私はX JAPANの幕張メッセの初日に行ったんですけど、あんなにX JAPANのライブにお客さんがいるのに若手ヴィジュアル系バンドには人がいないのかと感じてしまって、そこでもシーンの閉塞感を実感しました。

オザキ:そういう意味で『VISUAL JAPAN SUMMIT』(2016年)は大きかったですよね。

冬将軍:未だに“X JAPAN帝国”になってしまっているのが閉塞感に繋がっている気もしますけどね。なので、X JAPANを引きずりおろすようなバンドがいれば、シーンも盛り上がるのかなとも思います。

ーーそれでは最後に来年に向けて期待していることを教えてください。

白乃:来年はDEZERTがMUCCとツーマンツアーをやりますし、こういう若手が上の世代とやりあえるような、世代を越えたイベントが増えれば面白くなるかなと思います。年明けにフリーウィルが初めて『Free-Will SLUM』というフェスを開催するので、それが大きなお祭りになればと思います。DIR EN GREYの出演も追加で発表されたので、当日どうなるかますます期待ですね。

藤谷:シドの動きが気になりますね。今年は15周年ということでファンとより近い距離で行うライブハウスツアーがメインでした。来年は横浜アリーナが控えていますし、その次の展開も気になっています。ラーメン以外での話題を期待しています。

冬将軍:私は武道館までいったような中堅層のバンドの、さらなる世間的な跳ねに期待してます。もちろん頑張っているけど、もっといけると思うので。あとはやっぱり、“ヴィジュアル系なんてクソくらえ!”って言う面倒くさい若手ヴィジュアル系が出てくればいいなぁ。

藤谷:そうやって毒づくのを周りが期待するのは無責任だとは思うけど、面白い存在が出て来たときにそれをフックアップする勇気は持ちたいですね。

オザキ:そういう意味でDEZERTは、トレンドから一抜けして<MAVERICK>という大きい事務所レーベルに属したことによって、より多くの人に知られるきっかけを持てるようになった。千秋さんが望むような形で真っ直ぐにのびのびやらせてくれる環境を周囲が作ってくれるといいなと思うし、そうすれば彼は“面白い存在”になり得るなと思ってます。

藤谷:言動や飛び道具的な面白さで終わるバンドではないので、来年以降の動き、作品に注目したいですね。

オザキ:近年のヴィジュアル系で勢いがあるのはDEZERTとNOCTURNAL BLOODLUST(ノクブラ)とアルルカンで、それ以降のバンドが停滞していると言われている。でもDEZERTは音楽性を変えて、ノクブラはメンバーが脱退するので、その見方が一旦落ち着くと思います。一度切れたその流れのあとにシーンがどう動いていくのかは楽しみでもありますね。

白乃:DELUHIの限定復活やDuelJewelの復活という明るいニュースもありますしね。

藤谷:ヴィジュアル系というジャンル自体、期待値が低いというか、大御所以外は光の当たりづらい場所になりつつあるように思うんですよ。「概念としては知られているけど、今はどうなっているのかわからない」という人がほとんどなのでは。だからこそ、ライターも色んな場所で自分の言葉で語っていきたいし、現在進行系のヴィジュアル系を発信していきたいと思っているんですよ。

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