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VERBAL&☆Takuが語る、LDHのプラットフォーム構想 日本発コンテンツ海外展開に必要なPRとは

リアルサウンド

18/12/6(木) 19:00

 m-floのVERBALと☆Taku Takahashiが、戦略PR会社のブルーカレント・ジャパン社長・本田哲也をモデレーターに迎えて、日本初のPRの大規模カンファレンス『PR3.0 Conference』に登壇し、「m-floが考えるグローバルPR ー「カルチャー」でつながる新しいLDHのプラットフォーム構想」と題したセッションを行った。

参考:SHOKICHI、NESMITH、今市隆二、登坂広臣……EXILE TRIBE、ボーカリストの特性は?

 株式会社LDH JAPANに所属するVERBALは「執行役員 クリエイティブ・ストラテジー部 ディレクター」として、☆Takuは「OTAQUEST部 ゼネラルプロデューサー」として、それぞれビジネスパーソンの顔も持っている。本田哲也とVERBALは、今年6月に世界最大規模の広告祭カンヌライオンズに登壇し、LDHの世界戦略について語ったばかりだ。今回のカンファレンスでは、いかにして日本から世界に向けて情報発信をしていくか、「グローバルPR」をテーマに、世界展開を視野に入れてエンタテインメントを展開している二人ならではのPR論を明かした。

 クリエイティブユニット・PKCZ®のメンバーとして、スヌープ・ドッグやメソッド・マンといった海外の大物ラッパーとフィーチャリングした経験を持つVERBALは、現在の日本のコンテンツについて、「日本人が思っているより5,000倍くらい(笑)、世界中から注目されている。海外のファンの方が、自ら熱心に掘り下げている分、日本の方よりよほど熟知しているケースも珍しくない。ただ、日本の方はそれに気づくことができていないというか、自分たちがイケていると思って発信していることと、向こうの人々がクールだと考えているものの間にギャップがあって、うまく交差していない状況がある。とてももったいない」と説明。また、海外のアニメ・コンベンションにDJとして招かれることが多い☆Takuは、「日本人の多くは、ハリウッド映画などのコンテンツに触れて欧米のカルチャーをリスペクトしているが、同じ物差しで評価してしまうために、自国のコンテンツの真価を見失っていることがある。そのために機会損失をしているケースも多い」と付け加えた。

 実際に、二人は海外でどのような状況を目の当たりにしてきたのか。VERBALは、自身が90年代にボストンに留学していた際に、現地で出会ったアンダーグラウンド・ヒップホップ・アーティストとの交流について明かす。「学校でそういう音楽が流行っていたけれど、彼らは現地で大々的にライブをするほど有名なわけではなかった。でも、レコードを出したら5,000枚も売れたという。なぜかを尋ねてみたら、日本のレコード屋がすべて買い取ったのだそう。当時の日本では、アメリカのアンダーグラウンドのヒップホップが、現地のアーティストが思うよりずっと高く評価されていた」と、日本と海外の物差しの違いを具体的に解説した。逆に言うと、日本にはそれほど特殊で大規模なドメスティック・マーケットがあるということだ。VERBALは、自身も所属するLDHの三代目J Soul Brothersの例を出し、「彼らが48公演で240万人を動員したというと、海外のアーティストからは、『そんなことはジャスティン・ビーバーにだってできない』と言われる」と、改めてその特殊性を強調した。

 しかし、今なおCDが売れるような特殊なマーケットがあるとはいえ、若者人口が減少している日本は、遅からずK-POPのように海外のマーケットを目指す必要があると二人は指摘する。そのために必要なのが、日本と海外の物差しの違いーーつまり言語や文化、あるいはその国の発展度によって生まれるギャップを埋めるためのPR戦略だという。今回、そのモデルとして提案されたのが、「PRプラットフォーム」という考え方だ。

 「PRプラットフォーム」とは、発信者と受け手の間に、Webサイトやイベントなど、PRのためのプラットフォームを設けることで、お互いの持つコンテクストやパッションを、インタラクティブに接続するという発想であり、そこではコンテンツをベースとしたコミュニケーションが重要であるという。☆Takuが運営するプロジェクト『OTAQUEST』は、まさに「PRプラットフォーム」の実践だ。7月に米ロサンゼルスにて行われた、北米最大規模を誇るアニメコンベンション『Anime Expo 2018』では、中田ヤスタカらとともに『m-flo presents “OTAQUEST LIVE” powered by LDH USA』と題した大規模な音楽ライブを催し、成功を収めたばかりである(メイン写真は『OTAQUEST LIVE』の模様)。12月12日には、Webサイト『OTAQUEST』の国内版も正式ローンチ予定。いずれは音楽だけではなく、アニメ、アート、ファッションなど、日本のあらゆるカルチャーを盛り込んだコンベンションに育て、LDHだけではなく、日本の様々な企業が海外マーケットを切り拓くためのプロジェクトにしたいとのことだ。

 この発想の源となったのは、先述した海外のアニメ・コンベンションにおけるDJの経験だ。海外のアニメ・コンベンションになぜ自分が呼ばれたのか、当時、あまり理解していなかった☆Takuは、迷った末に自身が手がけてきたアニメの楽曲や、渋谷で普段かけているダンス・ミュージックを織り交ぜてプレイした。すると、まったく予想していなかったことに、フロアが大爆発した。思い思いのコスプレをした現地のアニメファン4,000人余りが、レイヴ・パーティーのように大歓声をあげて踊り始めたのだ。衝撃を受けた☆Takuは、なぜそんなことが起こったのかを調べた。m-floとしてコナミの音楽ゲーム『beatmania IIDX』シリーズに提供した楽曲が、現地のファンの間で大人気になっていたこと、向こうの“オタク”と呼ばれる人たちは、アニメだけではなく日本のカルチャー全般に興味を持つ、趣味もプライベートも充実したいわゆる“リア充”であること、数千人~数万人規模のアニメ・コンベンションが全米各地で週に一回ほどのハイペースで開催され、すでに巨大なマーケットが形成されていることが明らかになってきた。しかも、日本の企業はほとんどそのマーケットに進出することができていないというのだ。

 もちろん、これまで日本のアーティストなどが全米進出を目指したケースはある。宇多田ヒカルは2004年、アメリカのトッププロデューサーを集結させ、Utada名義で『EXODUS』をリリースし、待望の全米デビューを果たした。しかし、結果はビルボードチャート初登場160位と、決して芳しいとはいえないものだった。ところが、アメリカで宇多田ヒカルの人気がなかったかというと、そんなことはなく、☆Takuは「ローカライズの仕方が間違っていた」と推測している。「向こうの宇多田ヒカルさんのファンは、PS2用ゲームソフト『キングダム ハーツ』の主題歌だった『光』で、彼女の魅力に気づいている。日本語と英語が織り混ざった歌や、J-POP特有のサウンドにこそ惹かれていたわけで、向こうで主流となっている音楽性に合わせる必要はなかった」(☆Taku)。実際、宇多田ヒカルが2017年にリリースした配信曲「光 –Ray Of Hope MIX–」(REMIXED BY PUNPEE)は、全米のiTunes総合ページで日本人アーティスト最高位となる2位にランクインしている。

 このような現状を鑑みて、☆Takuは改めて、海外進出するためには「PRプラットフォーム」の発想が大切だと続けた。「昔はマスで同じメッセージを届ければ、みんなが振り向くという状況が日本にあったけれど、それは当時の人々の選択肢が少なかったから。今は趣味嗜好が多様化していて、今日だってあなたの知らないアーティストが武道館を満員にしているかもしれない。そういう状況だからこそ、みんなに無理に好きになってもらうのではなく、すでにそのコンテンツを好きな人々のファンベースを探して、彼らの持っているコンテクストやパッションを理解した上でPRするのが有効。その方法論は海外でも通用するはず。ファンベースの中には、必ずインフルエンサーもいるから、そこから広げていくこともできる」また、VERBALは、「今の日本はユーザーのリテラシーも上がっていて、人気のある有名人が着た洋服がそのまま売れるほど、単純なマーケットではなくなっている。でも、日本はいい意味で複雑だからこそ、次のチャンスがある」と述べた。日本の複雑なマーケットが生み出した多様なコンテンツの魅力を、海外のファンベースに対してうまく伝えることができれば、それはそのまま多様なビジネスチャンスに繋がっていくということだろう。

 ☆Takuは『OTAQUEST』について、「今はまだスタートしたばかりで、情報が少なく、しっかりとしたマーケティングができていない。音楽でいうと、この曲は鉄板だとか、この曲はこの層に響くとかがわかっていない状況。でも、これから先、各地でイベントを行って発展していけば、OTAQUEST自体が日本の他の企業にとってのマーケティングツールとなっていくかもしれない。基本的に日本のカルチャーであれば、OTAQUESTに集まる人々に受け入れられる可能性がある。実際に韓国では、K-POPと辛ラーメンを一緒にPRして、韓国カルチャーが好きな層に訴求することに成功している」と、今後の可能性を述べた。さらにVERBALは、「日本はまだ本気を出していないと思う。例えばアニメは日本独自のカルチャーとして人気が高い、大きな資産だけれど、複数の企業がコラボレーションして全米展開できているものはほとんどない。アニメは、音楽からファッションまで、様々なものを繋ぐことができる魔法のボンドのようなもの。みんなで力を合わせればチャンスはある」と続け、訪れたビジネスパーソンたちに、企業の壁を越えたコラボレーションの重要性を訴えた。

 m-floはかつて、ボーカルのLISAが脱退した後に、アメリカのプロデュースグループであるThe Neptunesからヒントを得て、毎回異なるボーカリストを迎えて楽曲をリリースする”m-flo loves Who?”という活動形式になり、日本の音楽シーンにフィーチャリングやコラボレーションという概念を浸透させることに成功している。そうした経験を持つ彼らの発想こそが、日本のコンテンツを世界に発信していくための大きなヒントとなるのかもしれない。(松田広宣)

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