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いま、最高の一本に出会える

魔法少女になり隊が生み出す圧倒的カオス感 ジャンルレスに繋がれるエンターテインメントの真髄

リアルサウンド

18/11/13(火) 10:00

 RPG系ラウド/ポップバンド“ましょ隊”こと魔法少女になり隊。知る人ぞ知る存在から、今のライブシーン、バンドシーンのネクストブレイクの一角を担う存在となった彼ら。本稿ではあえて客観的に、ましょ隊のライブにおけるオリジナリティと戦略を再定義してみようと思う。

参考:魔法少女になり隊がファンと繰り広げた大冒険! 全国ツアーファイナル公演レポ

 今回のライブは、『ハロウィンに乗っかりな祭~ころもくんの逆襲~』と銘打たれたハロウィンパーティー仕様。会場の代官山UNITの周辺に突如、邦ロックフェスかアイドルイベントが開催されるのか? と思しきファンが集う。その様は着飾った週末の人々が溢れる代官山に違和感を醸し出していて、ある種痛快だ。バンドのTシャツはもちろん、PIZZA OF DEATHやピエール中野Tシャツ、そしてわずかにスーパーマリオなどゲームやアニメキャラのコスプレをしたファンもいて、入場前から不思議な一体感が生まれている。

 ステージ前には幕が張られ、定刻になるとファンにはおなじみ、明治(Gt)の手による脱力系キャラ「ころもくん」が登場し、「奪われたビーフジャーキーの逆襲をする」という筋書きでライブがスタート。白いTシャツで横並びに立つメンバーは、衣装がシンプルなぶん、さらにキャラクターが際立つ。

 魔女の呪いで喋れなくなった火寺バジル(Vo)。歌う際はオートチューンで絶妙に人間味を削いだメカっぽさとそれでも溢れ出るキュートさで、逆境に立ち向かう、前向きな歌詞に説得力を与えている。デスボイスでフロアを煽りつつ、PCで映像を操るせわしない男、gari(Vo)。この2トップ、一般的な男女ツインボーカルとは一線を画すが、パラパラ風の振り付けやダンスでバジルとデュオのように見えるあたりも異様にキャッチーだ。

 この日、最初のブロックは高速BPMでツーバスが鳴り響くような、ある種、全力の50メートル走をノンストップで数往復するようなナンバーが続いた。人力では困難な高速BPMやツーバス、ツインペダルを打ち込みで構築することで、“ダンスミュージックとして機能するメタル”という価値を彼らは自身の楽曲に見出しているのだと思う。メタル/ラウド系のアタックや音圧の強さを、フィジカルに働きかけるポップミュージックに換骨奪胎するセンスはかなり洗練されている。

 ただ、打ち込みはビートに限ったことで、メタルのカタルシスといえば超絶ギターソロ。ウイ・ビトン(Gt)のテクニカルな早弾きも、ましょ隊にとっては「キャッチー」の一部だ。加えて、クールな女性ギタリスト明治が確実なカッティングやリフを黙々と弾く様は、二次元キャラが現出したようなカタルシスを生む。しかもこの美女が脱力系キャラ・ころもくんの作画やこの日のライブ演出、しかも中間部に挟まれたアニメーションをgariと一緒に手がけているという意外性、そのギャップ萌えがまたすごい。よくもここまでバラバラな個性を持ちながらも、オタクやロックキッズの嗜好にハマるような人間が集まったもんだ、と感嘆してしまった。

 さて、冒頭の「ころもくんのビーフジャーキーの逆襲」アニメの続きが、前半の畳み掛けるブロックの後に展開されるのだが、各種名作アニメのキャラをさらっとメンバーに置き換えて描ける明治の画力が凄まじい。マンガ世界に閉じ込めたメンバーと和解し、現実世界へ解放しようとするころもくんの魔力が弱ってきたところで、エナジーチャージするためにファンの声援が必要になるというあたり、まさにRPG的な設定なのだが、バンド同様、ファンも人力、つまり大声で叫ぶほかないのがましょ隊らしい。パワーがチャージされた結果、ライブは続行。この脱力系アニメもちゃんとこの後の展開につながっていく。

 ましょ隊のレパートリーにはリスペクトするアニソンのカバーが多数ある。「おジャ魔女カーニバル!!」(『おジャ魔女どれみ』OP)、「ハレ晴レユカイ」(『涼宮ハルヒの憂鬱』ED)、「Believe」(『ONE PIECE』OP)、「ラムのラブソング」(『うる星やつら』主題歌)と、バジルのボーカリストとしての個性にもハマっており、ましょ隊のポップセンスが試されるアレンジ能力の高さも証明されていた。

 さらに背景に投影される映像もビット画風やスマホでよく使うスマイルマークなど、誰もが知っているアイテムが登場。ユルいようで精査されていることにも優しさを感じる。そう、ここでは誰も置いてけぼりにされないのである。お気に入りのカバー曲でリフトアップされ、切れ味鋭いヲタ芸を見せるファンも、「支える下の人数が足りないのでは?」と心配になるほどのリフトアップからクラウド・サーフィングを行う観客の多さも、ファン同士が支えあって成立している。

 それが成り立つのは、メタル、パラパラ、EDM、アニソン、Jポップ、各ジャンルのカタルシスや美味しいところのみを抽出した楽曲を、生身の人間が演奏するからこそだ。大げさかもしれないが、二次元が三次元になったような情景は、オタクにとっての夢が、眼前で繰り広げられているとも言える。

 一方、ライブキッズもJロックのヒット曲をDJで踊る、あのスピード感を生身のバンドで楽しんでいるような印象だ。アーティスト対ファンの構図ではなく、対等な関係でライブを楽しんでいる、そこに新しさを感じる。同日夜にはDJやファン参加型のゲームなどが繰り広げられるアフターパーティーも開催し、そこでもおそらくファン同士の交流が深められたと想像するが、ましょ隊を中心に広がる「繋がれるエンターテインメント」の可能性、そしてバンドそのものの次なる一手がものすごく気になる。まずは1月23日にリリースされる新作を待ちたい。(石角友香)

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