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『僕らは奇跡でできている』高橋一生は主役ではなく“鏡”の存在? 一風変わった作風の意図を読む

リアルサウンド

18/11/20(火) 6:00

 高橋一生初主演の民放ゴールデン・プライム帯連続ドラマ『僕らは奇跡でできている』(火曜21時~/カンテレ・フジテレビ系)が、視聴率は芳しくないものの、一定層からの評価をジワジワと高めている。

【写真】高橋一生に変化を与えられる人々

 大きな出来事も起こらなければ、ドラマティックな展開も、派手な演出もない。山も谷も、緩急もない、淡々としつつも穏やかな物語には、退屈さを感じる人もいるだろう。恋愛モノ、法律&企業モノ、バディモノなど、定番ジャンルが揃う今秋ドラマにおいて、どこにも属さない不思議な味わいを持つ。

 脚本を担当しているのは、『僕の生きる道』シリーズ(カンテレ・フジテレビ系)などの橋部敦子。高橋演じる主人公・相河一輝は、動物行動学の大学講師であり、自分の興味のあることに没頭するあまり、空気が読めず、人との約束やルールを守れない人物として描かれている。

 強いこだわりの持ち方、他者との接し方など、一輝の言動はいわゆる「普通」や「常識」からは逸脱している。しかし、ドラマではその一輝の性格に関する背景などは特に説明されておらず、最初から「そういう人」として登場する。にもかかわらず、このファンタジーにも思える世界観が視聴者に受け入れられてきているのは、高橋が演じるからであり、起用法の巧みさがあるだろう。

 実は放送開始前の不安は、「主演・高橋一生」ということだった。もちろんキャリアにも演技力にも何の不安もない。しかし、高橋には『民王』(テレビ朝日系)で演じた有能で冷静なキレ者&童貞の総理大臣秘書・貝原茂平や、『カルテット』(TBS系)で演じた妙なこだわりを持つ「面倒くさい男」家森諭高をはじめとして、「自分が見つけた」感を視聴者に抱かせてくれる部分がある。

 感情の表出を抑えた独特のズレ感・不思議な「間」は、実は巧みに計算されたものなのだが、王道路線ではないだけに「主役よりも、脇で見たい」と考えるファンが多いからだ。

 しかし、その点、今作は絶妙だ。多くの視聴者が望む「高橋一生=変な人」像はきちんと押さえている。それよりも重要なのは、高橋演じる一輝は、主役であって、主役ではないという点だろう。

 もちろん終始出ずっぱりであり、一輝を中心に物語は描かれているのだが、各話のストーリー上の主役は別にいる。一輝は、小さなトラブルを起こしたり、周りをイラつかせたりしつつも、本人は一貫して何も変わらない。その都度、自分の興味に対して真っすぐ突き進み、答えを探るものの、「答え」を得ることによって特に変化・成長はしない。ずっと同じ場所にいるのだ。

 逆に、変化し、成長していくのは、一輝と接する周りの人たちのほう。それはたとえば、歯医者で出会う少年と母だったり、一輝に興味を持ち、惹かれていく女子学生だったり、最初は反発していた男子学生だったり、榮倉奈々演じる歯科医師・育実だったりする。

 一輝の投げかける素朴な疑問は、他の誰かに気づきを与えるが、その気づきは心地良いものばかりじゃない。ときには目を背けていた自身のコンプレックスや、醜い感情を自覚させ、痛い部分をえぐったりする。どんなことにも楽しみを見出す「楽しみ方の天才」一輝の存在によって、一生懸命努力し、真面目に生きてきた育実のようなタイプが、劣等感を抱いたりする。

 一輝の存在は、言ってみれば、各回の主役たちにとって、自身と向き合う鏡のようなものであり、「変化」を促す媒介でもある。第6話のラストでは、ずっと森の中の分断された向こう側にいかなかったリスが、とうとう一輝の作った細い橋を渡っていく。それを見て、様々な気づきを得ながらも、これまでの価値観や常識に縛られ、苦しみ続けてきた育実が、号泣する。

 育実もまた、変わることができるのか。いよいよストーリー上の最大の主役の物語が次回描かれる。

(田幸和歌子)

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