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『なつぞら』福地桃子が語る夕見子役への思い 「彼女が持つ強さと優しさを表現できたら」

リアルサウンド

19/5/31(金) 6:00

 ヒロイン・なつ(広瀬すず)が上京を果たし、アニメーターという夢に向かって歩み始めたNHK連続テレビ小説『なつぞら』。優しく健気な王道ヒロインなつがいる一方で、視聴者から「もう1人のヒロイン」として人気を得ているのが、福地桃子演じる柴田夕見子だ。

 戦災孤児となり、兄妹とも離れ離れになったなつを大人たちが優しく見守る一方で、夕見子は幼少時からなつに対して“遠慮”をすることなく、真正面から向き合ってきた。一見、ワガママに見られてしまう夕見子だが、実は誰よりも優しい心の持ち主でもある。

 視聴者から絶賛されている夕見子を、福地桃子はどんなアプローチで演じたのか。じっくりと話を聞いた。

●夕見子の持つ強さと優しさ

ーー福地さん演じる夕見子の登場は第3週からでした。第1~2週の『なつぞら』はどんな視点でご覧になっていたのですか。

福地桃子(以下、福地):第1~2週を視聴者として観ているとき、自然に荒川梨杏さんが演じる夕見子を追いかけている自分がいました。なつ(粟野咲莉/広瀬すず)が柴田家に来たことによって複雑な思いを抱える幼少期の夕見子の気持ちが痛いほど伝わってきて、同じように苦しくもなってしまって。それはドラマや映画を観ていて初めての感覚でした。それだけ、私の中で「夕見子」という存在、柴田家が大切になっているんだということを実感しました。

ーー幼少期の夕見子を演じた荒川さんとは話をされましたか。

福地:現場では一緒になることはなくて、しっかりお話はまだできていないんです。直接お会いできたのは本読みのときくらいで。なので、高校生3年生からの夕見子は、荒川梨杏ちゃんが演じられる夕見子が持っていた空気感を大切に引き継ぎたいなというのは心がけていました。後からびっくりしたのは、スタッフさんやメイクさんから、「普段の2人がすごく似ている」と言われたことです。夕見子が持っている雰囲気も、全然違う役なので、素の性格や雰囲気が似ているのは不思議だなと思いまいました(笑) 。

ーー確かにテレビで観ていた夕見子と、目の前にいる福地さんの雰囲気がまったく違っていて、私も驚きました(笑)。

福地:最初はどうしてこの役が自分なのかと考えることもありました。でも、今は夕見子の発する言葉に、愛着もあります。何より、私自身が夕見子のセリフに勇気づけらることが沢山あるので、今自分がこの役に出会えた意味を大事にしながら演じています。

ーー夕見子は、なつや末妹の明美(平尾菜々花)が家事を手伝う中、基本的には家のことは何もせず、ひたすら我が道を突き進んでいました。

福地:「なんで夕見子は手伝わないんだろう」と思う方がいたように、私もはじめはそう感じました。女性は家事や家のことを手伝うのが当たり前の時代、ましてや柴田家はみんな酪農をやっている。そんな環境の中でも夕見子が自由を追求し我が道を進むのは、なつが家族に対して気を使わずに自由に居場所を見つけてほしい気持ちがあったんじゃないかなと思います。不器用だけれどそれが夕見子なりの関わり方。優しさに感じるようになりました。すごくしっかりした芯を持っているからこそ、“当たり前”に固執せず、勉強をして自分の視野をどんどん広げていく。彼女が持つ強さと優しさを表現できたらいいなと思い、今は演じています。

ーーそんな夕見子の強さが視聴者からも人気を得ていますね。

福地:凄くうれしいです。柴田家の中にいると自然に夕見子になれる感覚があって。その度に家族の存在は偉大だなと思います。ひとりひとりの個性がでる食事のシーンでは、各々の意見が飛び交っている柴田家らしさが魅力だなと思います。家族とはちょっと違う視点から、俯瞰している夕見子だからこそ、夕見子が成立している気がします。

ーー第4週~5週では、夕見子がなつの背中を押す素敵なシーンが沢山ありました。夕見子にとって、なつはどんな存在なのでしょうか。

福地:一番生き生きしている瞬間は、なつのことを想っているときなのかなと演じていて感じます。一見、デリカシーがないだけなようにも見えますが、厳しい言葉、皆が思っていても言えない言葉を先頭に立って放っていく。相手に自分の意見をぶつけるのはすごくエネルギーのいることだと思います。後悔をしてほしくないからこそ、伝える。実は芯から熱い“優しい人”なんだなと感じています。なつと夕見子の関係性は素敵だなと思います。

ーーともすれば相手を傷つけてしまう言葉を夕見子は放ちますが、そこには揺るぎない芯があるから嫌味にはなっていません。

福地:自分の意思を信じているからこそ、嫌われることも恐れていません。十勝で育った経験を活かし、故郷から飛び出すことで新しい時代を改革しようと考えました。それは、じいちゃん(泰樹/草刈正雄)譲りの開拓者精神が小さい頃からあったのだと思います。

●日々成長を感じる濃密な現場

ーー北海道・十勝編が終わり、夕見子は大学へ進学。今後、現在の福地さん自身の年齢(21歳)よりどんどん上の年齢になっていく夕見子を演じると思いますが、そのあたりはいかがですか。

福地:30代より上の年齢を演じることは本作が初めての経験になるので、未知なことが沢山あります。ただ、「何かこうしよう」という自分の中のプランを決めない方がいい、というのはこの半年で学んだなと思います。現場に行ってみて、共演者の方々との空気感を感じながら、一緒に作るというのが、もの凄く大事なことなんだと学びました。年齢を重ねれば、なつや夕見子も見た目は変わっていくと思うのですが、2人でいるときの雰囲気は昔から変わらないものでありたいと思っています。

ーークランクインが昨年6月、間もなく1年が経ちますが、ご自身も夕見子に似てきたなと感じることはありますか。

福地:夕見子でいるときと、自分でいるときと混ざるときがあります(笑)。夕見子としていることが多い時間もあるので。役の気持ちでいると、自然と気持ちが前向きになるので、ポジティブなパワーをいつももらっています。

ーー夕見子を演じること、朝ドラへ出演することは、福地さんにとって大きな転機になっていると。

福地:ご一緒している先輩方から「1人の人生を長い時間をかけて演じることは本当に貴重」と撮影が始まる前に聞いていたのですが、その時に自分が思っていた以上に、濃密な時間を過ごしているなと感じます。1年前に撮ったシーンを今やっていたら、いろんな意味で全然違うお芝居になるんだろうなと思います。分かりやすく、どきどきもしていましたしその時の自分が肌で感じたこと、緊張感も含めて表現していたと思います。それぐらい得ているものが日々大きいんです。夕見子の成長とともに、自分自身の成長も重ね合わせていきたいです。「もっとこうしたい」という欲が出てくる感覚も初めてに近いものがありますし、向上心を常に持ち続けたい。あたたかい先輩方が沢山いる『なつぞら』の現場は、本当にいろんなものを学ばせていただいています。

ーー柴田家の皆さんを中心に錚々たる役者たちと共演されていますが、特に印象に残っている方はいますか。

福地:やっぱり柴田家の大黒柱・泰樹を演じる草刈さん。じいちゃんは、なつ、照男兄ちゃん(清原翔)、そして夕見子にとっても憧れの存在なんです。そんなじいちゃんへの尊敬と同時に、草刈さんへも同様の尊敬の念を抱いています。普段はとても優しくてまっすぐな表現で現場を和ませてくだいます。現場に入るとひとりひとりに、言葉をかけてくださるんです。じいちゃんと夕見子の大事なシーンの時には「自分のやりたいようにやれば大丈夫」と言っていただいたり。草刈さんが現場にいてくれるだけで安心感があるんです。『なつぞら』における泰樹さんの存在感と共通しているなと思います。

ーー夕見子のことを雪次郎(山田裕貴)は好きと公言していますが、2人の恋路がどうなるかも楽しみです。

福地:どうなるんでしょうか(笑)。雪次郎がいるシーンは、基本的に明るくてすごく好きなシーンばかりです。雪次郎は少年らしさがのこる可愛らしい部分がたくさん詰まっていますよね。演じる山田さんも、雪次郎のように、真っ直ぐで優しくて熱い男性で、本当にぴったりだと思います。現場でも周りを楽しませてくださるムードメーカー。『なつぞら』に欠かせない存在です。

ーー雪次郎を中心に、とよばあちゃん(高畑淳子)ら小畑家の面々は強力ですが、そこに夕見子も加わったらすごそうですね。

福地:それはすごそう……(笑)。もし夕見子が小畑家に入ったら、また違う一面が出てくるかもしれませんね。夕見子は常に新しいものを求めて、自由を開拓していくので、そんな姿を今後も見守っていただければうれしいです。

(取材・文=石井達也)

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