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木村拓哉が平成最後に再び“ヒーロー”を演じる 「キムタク」の姿に私たちが託してきたもの

リアルサウンド

19/1/12(土) 6:00

 平成の終わりに、私たちは再び木村拓哉に夢を見る――。

 1月18日に公開となる映画『マスカレード・ホテル』のことだ。木村拓哉が演じるのは、予告された連続殺人事件を解決するため、ホテルに潜入捜査する刑事・新田浩介だ。社会のために誰かがやらなければならない、という正義感の強さ、刑事という仕事へのポリシーを持つ。その真っ直ぐすぎる性格で、上司からは「新田の好きにさせるなよ」と言われてしまう人間味あふれるキャラクターだ。

 『マスカレード・ホテル』は、2011年に発表された東野圭吾の小説を原作にしたもの。刊行と同時に映像化の話が次々と舞い込んだが、「よほどのことがない限り、GOサインは出さない」と東野は決めていたという。だが、そんな東野の心を動かしたのは、企画書に書かれた「新田浩介=木村拓哉」の文字だった。

「小説の連載中、新田を描く際に漠然と思い浮かべていたのが、まさに木村さんだったからです」

 その言葉通り完成した映像を見ると、主演・木村拓哉ありきで描かれた作品なのではないかと思えるほど、そのイメージはピタリと重なる。

 “大義と正義の間で苦悩しながらも、自分の良心を信じ、行動できる人”。それこそ木村拓哉が一貫して演じてきた、平成のヒーロー像だ。大きな流れに屈することなく、自らの足で動ける人でありたい。怒涛の平成時代に私たちが願った“こうありたい“を一心に背負ってきたのが、木村拓哉が演じてきたヒーローたちだった。

 「何を演じてもキムタク」と言われるのは、私たちがそれだけ木村拓哉という人に、ヒーローを期待してきた証でもある。「キムタクならば、長いものには巻かれない」「キムタクならば、決して倒れるはずがない」「キムタクならば、必ず立ち上がる」……厳密に言えば「木村拓哉が演じる役柄」なのだが、どこかで私たちは木村拓哉という人そのものにもヒーローであってほしいと願ってきた。

 そして木村自身も、その期待に応えるべく前だけを向き、走り抜けてきてくれた。先述した「何を演じてもキムタク」に代表されるような言葉の刃に切りつけられても、日に日に膨らんでいく期待やプレッシャーに押しつぶされそうになっても、木村の口から痛みや苦しみが語られることはほとんどなかった。いつしか“木村拓哉は傷つかない”と錯覚してしまうほどに、彼はヒーローがよく似合ってしまったのだ。

 だが2018年、木村は映画『検察側の罪人』で、闇に堕ちるヒーローに挑む。それも、みんなに愛された『HERO』で演じた、検事という役で。エリート検事・最上毅は、嵐の二宮和也演じる沖野啓一郎が尊敬してやまない、まさに私たちがこれまで見てきたヒーロー像だった。だが物語が進むにつれて、自分の正義を貫こうとするあまり、罪を犯してしまう。「こんな木村拓哉見たことない」と思わず口をつくほど、まさに新境地だった。

 だが、それと同時になぜか見ているこちらが傷ついたような、最後の砦を崩されたような、そんな悲しみを覚えたのを記憶している。屈しないヒーローであり続けた木村拓哉だからこそ、最上の転落が意味することの大きさ、沖野が抱く絶望と葛藤、そして正義の限界の絶望が描かれたのだろう。

 私たちは、平成の30年間でいくつもの悲しみを見てきた。大きな災害から、良心を疑う事件も次々と起きた。それは、最上の罪を目の前にした沖野のように、この先何を信じたら良いのかという絶望に近いものだった。だが、もうすぐ新しい時代が来る。

 絶望の先を生きる。『マスカレード・ホテル』で見せてくれた木村拓哉演じる新たなヒーローは、ひとりでは戦わない。長澤まさみ演じるホテルマンの山岸尚美とバディを組み、小日向文世扮する元相棒の能勢刑事に助けを仰ぐ。孤軍奮闘から、味方を信じて手を取り合うヒーローへ。もちろん、そこには小さな裏切りがあるかもしれない。だがそれでも、もう一度信じてみようという気持ちが、次の一手となる。新たな時代の幕開け前に、また私たちは“木村拓哉のようにありたい”と、襟を正すのだ。(佐藤結衣)

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